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能の裏側体験!

トーハクは、多くの能面、能装束を収蔵しており、現在、本館14室では特集「能面 女面の表情」(10月4日(日)まで)を、本館9室では「能「紅葉狩」にみる面・装束」(11月3日(火・祝)まで)という展示を行っています。
600年以上、大切にその歴史を紡ぎ、伝えられてきた日本の文化であり、総合芸術と評される能。
でも能って、知っているようで知らない。よくわからない。
残念ながらそんな存在かもしれません。
能面や能装束に至っては、どれも同じにみえる、という声をよく耳にします。
もちろん、本当はいろいろな種類があって、それぞれの造形には個性が感じられます。

その魅力をお伝えし、トーハクの能面や能装束をもっと楽しんでもらいたいと思い、企画されたのが、その名もずばり、ワークショップ「能の裏側体験!」です。
能舞台のないトーハクでは本格的な能をご覧いただくことはできません。
でも能で使われる能面や能装束を間近で見られる博物館であることを活かし、客席からではわからない能の裏側の体験をし、楽しみ親しむ時間となりました。

ワークショップを開催した9月12日。東京は久しぶりの晴天でした。
講師は観世流シテ方能楽師 浅見慈一氏。
「能って何?」という質問に、わかりやすく答えてくださいました。
「600年前から続く、日本のミュージカル」
「能面をつけるのもおおきな特徴です」
「山や海などの背景はお客さんが想像しないといけない。みんなの想像力が必要な演劇ですね」

浅見氏インタビュー



展示室で室町時代や江戸時代につくられた能面を見ます。

展示見学

「よく見てごらん。何歳くらい?どんな性格?話せるとしたら何と言いそう?下から見たり、上から見たりしてごらん。」
こんなふうに声をかけるといろんな声が上がります。

「意地悪そう」「悲しそう」「お母さんと同じくらいの年!」「下から見ると顔変わった!」
見方によって表情が変わったように見えたり、性格を細やかに表現していたりします。
立体の彫刻である能面をじっくり見る楽しみを感じてもらえたかな。


さあ、それでは能面をかける体験、能の基本動作「ハコビ」の体験です。

お稽古

能楽師の浅見慈一さんと小早川泰輝さんが楽しく教えてくれ、真剣にお稽古スタートです。
好きな能面をかけて、立ち上がり、歩いてみます。
能面をかけると視野は通常の10パーセントになるといいます。だからこそ足を摺って足裏の感覚をたよりに歩くんだという浅見さんの言葉にみんな納得。

「ハコビ」のお稽古

小早川さんのわかりやすく楽しいお話を聞きながら扇を持って「ハコビ」のお稽古。
小早川さんの動きは軽やかに見えますが、私たちがやってみるとうまくはいきません。
その動きが実は大変な運動だと気づきました。能の舞台に立つって大変・・・
舞台ではさらに能面をかけるんですよね。あ、舞台では当然、重い衣裳も着けるんですよね。

どんなふうに着るのか、浅見さんがモデルとなって見せてくれました。
着付も大変そう・・・ 
みんなでお手伝いしました。
衣裳や鬘に触れるなんて、貴重な経験です。

着付



そして最後に、能「巴」の一場面を見せてくれることに。
博物館には能舞台がありませんのでワークショップ特別バージョン。
浅見さんがひとりで巴を演じ、小早川さんがひとりで謡をしながら後見までしてくれました。
印象的なストーリーと舞を見て、参加者はみんな引き込まれていきます。

能「巴」

能面は能に使う道具です。
これをかけると、自分ではない「役」に変身することが出来ます。
いろいろな便利な道具が出来ても変わらずに、いまもひとつひとつ木でつくられています。
無表情の代名詞に使われることがありますが、じつは能楽師の演技によって表情豊かに見せることができます。
それをねらっての造形ともいえるでしょう。
しかも能楽師にとって命よりも大切なものとして代々伝えられるそうです。
ひとつひとつの造形美を楽しむことも大切ですが、やはり能楽師にどう使われ、どう伝えられてきたかを知ることで、よりその造形を理解できるような気がします。
参加者のみなさんは、どう思われましたか?
浅見慈一さん、小早川泰輝さん、ありがとうございました。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ教育普及

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2015年09月17日 (木)