本館 14室
2015年7月7日(火) ~ 2015年10月4日(日)
能の面は、基本的なものだけで60種類ほどあります。その中でも女面(おんなめん)は、能面と聞くとまず思い出されるほどポピュラーで、種類も豊富です。女面はどれも瓜実顔(うりざねがお)に起伏の少ない顔立ちで同じように見えるかもしれませんが、実は年齢や性格などの違いを、繊細な方法で表現しています。例えば、若い女性を表す面でも「小面(こおもて)」は純粋無垢な美しさ、「増女(ぞうおんな)」は神々しいような気品の高さ、「孫次郎(まごじろう)」は落ち着いたやさしさ、「万媚(まんび)」は愛嬌(あいきょう)のあるつややかさを感じさせます。
その違いは能舞台で活かされています。実は、どの役にどの面を使うのか、厳密に決められているわけではありません。例えば、『羽衣(はごろも)』の天女の役を演じる時には「小面」「増女」「若女(わかおんな)」のどれかを能楽師自身が選びます。そしてその面の表情にふさわしい表現で演じるため、使う面によって演目中の人物の雰囲気が変わることになります。能面がどんなに重要なものか、お分かりいただけるでしょう。
今回は能狂言のさまざまな女面と、女性の怨霊を表した面を展示しました。女面の造形に込められた細やかな表現をご覧ください。