トーハクくんの「なるほー!人間国宝展」その1
ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は小山(おやま)研究員といっしょに「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」を見に行くほ。
研究員ならではの展覧会の見どころを教えてくださいだほー!
小山研究員(以下O):こんにちはトーハクくん!展覧会の見どころね。
この展覧会は、国宝や重要文化財といった古い名品と人間国宝の作品を隣り合わせて展示しているところがポイントなの。
(左)重要文化財 奈良三彩壺 奈良時代・8世紀 九州国立博物館蔵
(右)三彩花器「爽容」 加藤卓男作 平成8年(1996) 東京国立博物館蔵
ボクの勝手なイメージだけど、「古い名品!」って言われるちゃうと、やっぱりそっちのほうがなんとなくスゴイ感じがしちゃうんだけど。
O:そうですねー。
えっ!
(言い切っちゃったほ!)
O:だって昔の人は制作にかけた時間も素材も全然違うんだもの、仕方のないことでしょう。
ひとつの作品をつくるためだけに生き、色んな技法を試す。そういう時間と環境こそが良い作品を生んだのよね。
ほー!
(小山さんはかわいいお顔なのに、コメントに男気があるほ!)
O:昔の作品はやっぱりすごい。パワーがある。
昔の日本人、つまり私たちの祖先はこんなにすごいんだってことを見てほしいという気持ちもあるの。
そして現代の作家さんたちが、ここまでがんばって発展させてきたこと、これもまたすごいことね。
こういう作品から、たくさんエネルギーをもらってほしいわ。
しっかし、人間国宝かあ…。なんだか仙人みたいなイメージだほ。
小山さんは図録の執筆のために人間国宝さんにインタビューをしていたけど、実際にお話してみてどんなひとたちだったほ?
O:そうねえ、雲の上の人っていうイメージを持っている方も多いでしょうね。
でも実際はそうではないの。
どんなに偉いひとだって、皆最初はゼロからスタートするでしょ?
スタート地点があって、寄り道もして、歩む道を選択しながらやっとここまで来たの。
悩んで悩み抜いて試行錯誤して、到達した結果が人間国宝というだけの話。
今だって姿勢は変わらず、作品をつくるために日々悩んでいらっしゃるわ。
そうか、人間国宝も人間なんだね!当たり前のことだけど!ちょっとムネがアツくなったほ!
O:私もインタビューをしていてアツくなったわ。
作品制作も、伝統をどこまで引き継ぎ、どこまで自分の表現を出すのか、自分なりの道を見出さないといけない。その作業はとても大変なことよ。
それを粘り強く続けられたからこそ人間国宝になれるのね。
粘り強く続けられる。ひとはそれを才能と呼ぶのだほ。(キマッタほ!)
O:うふふ、でも才能だけでは人間国宝にはなれないのよ。
ぐはっ!(かっこわる!)
O:努力、運、人との出会いも大切ね。
でも逆にいうと、いま作品の制作に携わる全ての人たちにも、人間国宝になれる可能性があるってことよ。
私は、現代人が昔の人に劣っているとは決して思わないの。
昔の日本人が、こんなに素晴らしい作品を作っていたのだということを糧にして、現代の人にはそれ以上の作品をつくってもらいたいなと思います。
では究極の質問だほ!
もし小山さんが、世紀の美術泥棒・キャッツアイだったら何を盗みたいほ?
O:あらあらキャッツアイ?そうね…ひとつだけ選ぶのは難しいわね…
あのね、「いいもの」っていうのは古さを感じさせないものなの。
現代まで残っているのには理由があるのよ。(キラーン☆)
うわっ!いま小山さんの目が光ったほ!
O:そう!私は小さい頃からキラキラしたものが大好きだったの。
宝石の広告チラシを切り抜いて遊んだりしてたなあ。
ということで、私はコレを選びます!
截金彩色飾筥「花風有韻」(きりかねさいしきかざりばこ かふうゆういん)
江里佐代子作 平成3年(1991) 文化庁蔵
えっ?!小山さんは染織が専門なのに、お着物は選ばないんだほ?
O:悩んだんだけどね。
毎日同じ服を着る人っていないでしょ?だからお着物をどれかひとつって言われると困っちゃうの。
こういう作品だったら毎日手元に置いて眺めたり、中に自分の大切なものを入れたりして楽しめるじゃない?
にゃるほ。小山さんはこの作品のどういうところが好きなんだほ?
O:キラキラしていて本当に綺麗でしょう?
これは截金(きりかね)って言って、細く切った金箔を杉の箱に施しているの。
O:見て!光に当たって、まるで金糸みたいにきらめいて見えるでしょ?照明も工夫したのよ。
ほー、キラキラの線が折り重なってビューティほー!
O:もしキャッツアイだったら、暗闇の中で懐中電灯をつけて、パッとこのハコが目に映った時、きっとトキメクだろうなあ!
♪みーつめるキャッツアイ かーふうゆういん きーんいろにひかーるー
O:トーハクくん、古い歌知ってるのね。
えへへ。5歳だけどものしりだほ。
でもこうやってガラスケースに入っていると、「美術作品」として見てしまうけど、「どれが欲しいかな」とか「自分だったらどう使うかな」とか、そういう風に見てもいいんだほ?
O:もちろん!そういう風に見てもらいたいわ。
だって使う人あっての工芸だもの。作り手と使い手、双方が一緒に工芸を盛り立てて、お互いに成長していくの。
そのことを心に留めて展覧会を見ていただけたらいいなと思ってます。
そうか、使うひとがいないと、作るひともいなくなっちゃうもんね!
使うひとも大事な役割なんだってことが、とってもよくわかったほ!
小山さん、アツいお話をどうも有難うございました!
小山弓弦葉(おやまゆづるは)工芸室主任研究員。専門は染織です。
大好きな作品(友禅訪問着「羽衣」 森口華弘作 昭和59年(1984) 滋賀県立近代美術館蔵)の前で。
カテゴリ:研究員のイチオシ、news、2013年度の特別展
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posted by トーハクくん at 2014年01月22日 (水)