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北斎の宝船で縁起のよい初夢を!

今年は、師走に入り急に寒い日が続くようになりました。最近は、天候が不順な年が多いようですが、本来日本は、四季のはっきりした気候を特徴としていました。
暦をめくるように、季節ごとに様々な行事が行われ、自然と人事の流れを感じたものでした。

12月といえば歳末。新しい年の準備におわれる時期でもあったはずですが、近年は新しい年を迎えるよりも前に、年に一度の大イベント「クリスマス」があります。街はイルミネーションで飾られ一年で一番華やかな様相を見せています。江戸時代にはクリスマスなどなく、新年を迎える気分と、年の瀬のあわただしさがあったことでしょう。25日までのイルミネーションが片付けられると、急ぎ足で新年の準備になります。

江戸時代の絵画では、毎月の行事を描いた月次絵には、新年を迎える準備が歳末行事として描かれています。
正月になると初夢で一年を占いました。元日の夜(あるいは2日の夜)に見るのが初夢とされ、良い夢を見るために、宝船売りが縁起のよい宝船の絵を売り歩きました。これを枕の下に入れて、吉夢を呼び込むのです。

今回、葛飾北斎が「勝川春朗」と名乗っていた30歳前後の時期に描かれた「宝船図」を展示します(2014年1月2日(木)~26日(日)、本館10室)。七福神が龍頭の船に乗っています。恵比須が鯛を釣り上げ、千年長寿の鶴が飛び、万年長寿の蓑亀が船に乗り込もうとしています。

宝船図
宝船の七福神  葛飾北斎筆  江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵


枕に敷く宝船図には、回文が添えられていたそうです。この図にも「なかきよの とをのねふりの ミなめさめ なミのりふねの をとのよきかな(長き夜の 遠の眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良きかな)」とあります。
一年を占ういかにも縁起のよい夢が見られそうな作品です。

最近は、宝船売りの姿は見られなくなりましたが、今年は12月27日(金)の読売新聞夕刊、12月28日(土)の朝日新聞、毎日新聞夕刊広告にこの宝船の図が切り抜き用で掲載される予定です。
これを敷いてよい一年を占ったら、本物も見たくなるはず。
商売繁盛で、景気も上向き! といきますでしょうか? 

 

カテゴリ:研究員のイチオシnews博物館に初もうで

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posted by 田沢裕賀(絵画・彫刻室長) at 2013年12月27日 (金)