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書を楽しむ 第25回 「うたあわせ」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第25回です。

本館3室(宮廷の美術)で国宝「寛平御時后宮歌合」が展示中です(2012年11月18日(日) まで) 。

国宝 寛平御時后宮歌合(十巻本歌合)(部分) 伝宗尊親王筆 平安時代・11世紀
国宝 寛平御時后宮歌合(十巻本歌合)(部分) 伝宗尊親王筆 平安時代・11世紀

国宝なのにずいぶん地味な作品だな~、
なんて、思いませんでしたか?
これが、よく見ると、
やっぱり仮名が美しいです!

(左)拡大、(右)筆者のエンピツ写し
(左)拡大、(右)恵美がエンピツで写しました。

エンピツで、「ゆきの」と「やまの」だけ
写してみました。
「ゆ」や「の」がゆったりと丸くて、
やわらかい、優しい気持ちになる字です。

エンピツで写しつづけて、
形は似るようになりましたが、
エンピツと筆とは大きな違いがあります。
それは、筆の弾力です。
筆の弾力で、
リズムや筆力が生まれて、
美しい線が表現されます。



この「寛平御時后宮歌合」は、
「十巻本歌合」(じっかんぼんうたあわせ)の一部です。

「十巻本歌合」とは、
平安時代、関白の藤原頼通(よりみち、992~1074)が編纂させたものですが、
これは草稿なので、
朱や墨の加筆や訂正があります。

以前、「書を楽しむ」第18回でお伝えした、仮名の王様「高野切」(こうやぎれ)。
覚えていますか?
「十巻本歌合」は、「高野切」と近い時期に書写されたので、
中に、「高野切」と同じ筆者の字もあります。

ところで、
「歌合」とは、なんでしょう。

画像に「右」や「左」と書いてあるのが見えますよね。
右の歌と、左の歌で、競い合う催しです。
一番古い記録では、仁和年間(885~89)の歌合があります。

今回展示している場面は、
冬の歌の歌合の部分ですから、
「ゆき」、「しらゆき」の字がたくさん見えます。

ゆったりと優雅な「ゆき」を探して、
真っ白い雪景色を想像してみませんか?

 

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2012年11月07日 (水)