書を楽しむ 第18回「こうやぎれ」
書を見るのは楽しいです。
より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第18回です。
高野切(こうやぎれ)。
このことば、覚えてください。
Q:「仮名(かな)といえば?」
A:「こうやぎれ!」
です。
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重要文化財 古今和歌集巻第十九断簡(高野切本) 伝紀貫之筆 平安時代・11世紀 森田竹華氏寄贈
(特集陳列「秋の特別公開 贈られた名品」2012年9月15日(土)~ 9月30日(日)にて展示)
拡大画像の右の方に見える「の」や、「ゆ」の字、 真ん中あたりの「は」の字、などなど 平仮名のお手本のように見えませんか? 高野切、とは 現存する最古の『古今和歌集』で、 平安時代の“みやび”の感性のもとで完成した仮名で、 最高水準の、美の極致とされています。 3人が分担して書いた寄合書(よりあいがき)になっていて、 その3人の書風を、第一種から第三種と呼び分けています。 上の画像は、第三種書風です。 第二種書風の筆者が、 宇治の平等院鳳凰堂(天喜元年(1053)建立)の色紙形(しきしがた)を書いた 源兼行(みなもとのかねゆき、生没年不詳)とわかりましたので、 高野切もその頃に書写されたことになります。 その第二種書風の高野切を、エンピツで写しました。 手鑑毫戦より高野切
(本館3室「宮廷の美術」 2012年7月18日(火)~8月26日(日)にて展示 ) エンピツで写した高野切 前の画像の第三種書風と比べて、個性的と思いませんか。 同じ仮名でもいろんな書風があります。 私が写した第二種書風の高野切、どうでしょうか? 特徴を上手くはつかんでいないかもしれませんが、 書いてみると、鑑賞がより深まります。 第二種書風の筆者・源兼行は、ほかに、「桂本万葉集」(御物)など、 第一種書風の筆者は、「大字和漢朗詠集」(本館3室にて展示中)など、 第三種書風の筆者は、「粘葉本和漢朗詠集」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)や 「法輪寺切」(本館3室にて展示中)などの同筆の作品があります。 3人とも、能書(書の上手な人)として活躍していたことがわかります。 総合文化展本館3室「宮廷の美術」では、7月18日(火)から8月26日(日)まで この第一種、第二種、第三種書風の作品をそろって御覧いただけます。 こうやぎれ、 巻九の巻頭が、高野山(こうやさん)に伝来したことから この名前で呼ばれています。 ぜひ覚えて、字も真似してみてください。
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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2012年07月22日 (日)