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見方がわかる、見方がかわる!「日本美術のつくり方」

夏休み恒例の「親と子のギャラリー」。これまでにも、「日本美術のつくり方」シリーズとして、伝統的な日本美術の制作技法をご紹介する、教育普及的な特集陳列を行ってきました。今年はその第3弾で、4つの技法をとりあげます。段階をおって順番に進んでいく工程見本を展示し、また解説パネルもふんだんに使っており、わかりやすい内容になっていると思います。
キャッチフレーズは、「つくり方を知れば、見方がわかる、見方がかわる!」

親と子のギャラリー「日本美術のつくり方III」
2012年7月24日(火)~9月2日(日) 本館2階 特別2室

今回取り上げるのは、「螺鈿」「甲冑」「象嵌」「押出仏」の4つですが、その中から、螺鈿(らでん)についてお話申し上げましょう。
螺鈿は貝がらの内側の、つるつるピカピカした部分を文様の形に切り取り、漆(うるし)のうつわや調度品の表面に貼り付ける、漆工芸の技法です。螺は「巻貝」、鈿は「飾る」という意味で、つまり螺鈿とは「貝を用いた装飾」ということ。
螺鈿はアジア各地で、古くから行われてきた技法ですが、小文字の“japan”は「漆」「漆器」と訳されるほど、漆工芸がさかんであった日本でも、たいへんポピュラーな装飾のかたちであったのです。正倉院宝物に、奈良時代8世紀の螺鈿の作品がたくさんあるのをご存じの方も多いと思います。


日本の螺鈿では、伝統的に夜光貝という貝が使われてきました。南方に産する、とっても大きな貝。煮沸したり、あるいは切り削りして、内側の部分を板状にしたものを作り、それを文様の形に切って、貼り付けます。漆黒に、貝のはなつ七色の光が照り映える。その妖しく魅惑的な効果をねらったのです。

螺鈿
夜光貝を切り削って板状にしたものに下絵を描き、糸のこなどで文様の形に切る

ところでこの夜光貝、今でも採れます。沖縄の公設市場で売っています。下でさばいてくれて、上で食べることができるんです。
記憶があいまいですが、たしか身も七色をしていたような…。

夜光貝
夜光貝の原貝(中身はありません)


 子どもから大人まで楽しんでいただける展示を心がけました。
「甲冑(かっちゅう)」「象嵌(ぞうがん)」「押出仏(おしだしぶつ)」については、ぜひ会場でご覧ください。
どうぞ皆様、お誘い合わせの上、お越しいただきたいと思っております。

 

関連事業

ギャラリートーク (会場はいずれも本館特別2室)
「日本美術のつくり方III・4つの技法」 
2012年8月2日(木) 14:00 ~ 14:30
2012年8月10日(金)   19:00 ~ 19:30
2012年8月21日(火)   14:00 ~ 14:30
「日本美術のつくり方III・押出仏のつくり方」
2012年8月31日(金)   19:00 ~ 19:30

 

カテゴリ:研究員のイチオシ教育普及

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posted by 伊藤信二(教育普及室長) at 2012年07月25日 (水)