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1089ブログ

春の恒例 トーハクの「新収品展」

こんにちは、平常展調整室の瀬谷です。
1089ブログ初登場です。よろしくお願いいたします。

さて、東博ではつねにいろいろな企画や展示が行われていますが、「春の恒例」といえばなんでしょうか?

「博物館でお花見を」・・・上野公園の開花にあわせた桜満載企画です。
「新指定展」・・・ゴールデンウィークに新しい国宝、重要文化財にいち早く会える、文化庁との共催企画です。

そして、初夏に移るころに・・・まさにいま「新収品展」(~6月26日(日))を開催中です!

この「新収品展」は、前年度新たに東博の所蔵となった文化財をお披露目する特集陳列です。
平成22年度は、購入品4件、寄贈品24件、あわせて28件の文化財が新しい仲間に加わりました。
会場では、このうちの26件をご紹介しています。

大階段
本館の正面大階段を上がっていきますと、右手に誘うようにサインがあります。


そして2階に上がりきったところで、今度は左においでくださいとばかりにサインが。
「T1」というのは、「特別1室」のことです。


特別1室に入りますと、


「新収品展」の会場です。
新収品の数が多いときは特別2室まで使うこともありますが、今年はこちらだけです。


一番奥に重要文化財が1件ありまして。


それがこちら!
「伝当麻」の刀剣です。

江戸時代中期の研師(とぎし)であった本阿弥光忠(ほんあみこうちゅう)が鎌倉時代の当麻派の作と鑑定したので、「伝当麻」と呼ばれています。
13世紀のものです。

当麻派というのは、鎌倉時代中期から大和国(現在の奈良県)の当麻寺周辺に住んだ刀工の一派です。
彼らが作った刀は、以下のような特徴があるそうです。
1.鎬(しのぎ=棟と刃のあいだの稜線)が高い。
2.沸(にえ=刃のなかにみられる粒子)や金筋(きんすじ=沸がつくる筋)が盛んにかかった激しい刃文をもつ。
なるほど、それで力強い印象を与えるんですね。

茎(なかご)には金象嵌で和歌があらわされています。
    ゆきふかき  山もかすみて  ほのぼのと  あけ行春の  たきまちのそら  一翁
明治時代、東京府知事となった大久保一翁(おおくぼいちおう)がこの刀剣を所持していたときに、自らの和歌を施したとのことです。


もうひとつの目玉は、とんち話で有名な「一休さん」のモデル、一休宗純(いっきゅうそうじゅん、1394~1481)の墨跡です。
なんと書かれているのでしょうか。
右から読んでみましょう。


峯・・・松・・・ ほうしょう。
かすれた墨で書かれたこの字がそのまま、緑色の松葉を茂らせてすっくと立つ松のようにもみえます。


これに続く七言絶句では、人里はなれた峯に育つ松を中心に、壮大な新春の自然を詠んでいます。
7字ごとに改行しなおしますと、
    萬年大樹摠無倫
    葉々枚々翠色新
    琴瑟不知誰氏曲
    雲和天外奏陽春
最後に、「一休子宗純老衲」と落款があります。
晩年に近いころに書かれたと考えられている、この一幅。
既存の権力を批判し、破戒(仏教の戒律を破ること)や奇行で知られた禅僧は、ここにどのような思いをこめたのでしょうか。


会場では、以上のほか、絵画2件、書跡3件、漆工3件、染織3件、東洋陶磁2件、東洋考古1件、インドネシアの影絵芝居ワヤン・クリの人形10件もあわせてご紹介しています。
新収品をとおして、博物館の大事な使命のひとつである「文化財の収集」について、ご理解を深めていただけましたら幸いです。
6月26日(日)までです。

カテゴリ:研究員のイチオシnews

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posted by 瀬谷愛(平常展調整室) at 2011年06月07日 (火)