こんにちは。デザイン室の神辺です。
皆さま、「博物館でアジアの旅」でジャランジャランしてますか?
※ジャランジャラン? 何?っていう人、早くジャランジャランの青い字押して!
「博物館でアジアの旅」は関連イベントも充実しています。
前半戦は 研究員のコスプレが定着しそうでしない「研究員によるスペシャルツアー」や、インドネシアの影絵芝居「ワヤン・クリ」の上演があり大盛況でした。
後半戦も、楽して健康になりたいし仏像も見たいという欲張り屋さんのための企画「気軽に椅子ヨガ in 東洋館」や月例講演会「世界無形文化遺産 バティックの世界を訪ねる」があります。
ボランティアさんのガイドツアーもアジアの旅特別バージョンになっていて必聴です。
さて、わたくし今回の「海の道 ジャランジャラン」にて展示・グラフィックを担当したのですが、展示に携わる者は現地を知っておくべきということで、先駆けてインドネシアへ取材に行ってまいりました。
わたくしにも家庭やらなんやらあるため、2泊4日(機内泊二日)の弾丸出張です。
羽田発ジャカルタ経由ジョグジャカルタ着で8時間の飛行。
ジョグジャカルタは空港の段階ですでに南国の穏やかでゆったりとした雰囲気が漂っていました。
しかもオーストラリアからの偏西風のおかげで意外に涼しかったです。
最初に訪れたのはクリス工房。
皇室へ献上するクリス制作を任されている由緒正しい工房です。
お話を伺ったモモさん。亡くなったお父様(後方額縁)は人間国宝。
制作の実演。40歳にならないと一人前の刀匠と認めてもらえないとのこと。モモさん現在37歳。
大切なクリスを作るときは身を清め、好きなものを断ったり願掛けをしたりするのだそうです。そしてベストな精神状態の時のみ制作に入ります。
インドネシアの男性の正装にも用いるクリス。クリスがインドネシアの人にとって特別な存在であることを改めて知りました。
続いてはワヤン工房。
おじいちゃんの作業場は軒下の机。
インドネシアの人は鳥好き。多くのお宅に鳥かごがかけてありました。
太陽の光のもと、使い慣れた道具で水牛の皮に細かい模様をひとつひとつ彫っていきます。ときおり鳥がさえずり、風が吹き抜けていきます。
少し離れたところでは娘さんたちがワヤンの絵付けをしています。おしゃべりに花が咲くと笑い声も聞こえます。
ドアのない隣の小部屋には天井からゆりかごが吊ってあって、赤ちゃんが寝ています。
美術品の制作地、素材、制作工程など一通りの知識を得て、その美術品のことをわかったような気がしていたけれど、美術品の奥に作り手の顔が見えると、美術品が今までとは全く別のものに見えるなぁ、などと考えたインドネシアの昼下がり。
その後、ワヤン・クリの上演、バティックの工房やダナルハティ・バティック博物館、プランバナンの遺跡も訪問しました。詳しくは猪熊、小山の1089ブログで。
取材の最後に、道中を共にした運転手さんが地元の人が夕焼けを見に来るというヒンドゥー教の遺跡に連れて行ってくれました。
日の入りが近づくとぞろぞろと着の身着のままの人たちがいずこから集まってきて、石垣に一列に座って足をぶらんぶらんさせながら夕焼けを見ています。
人びとの顔も遺跡もそこにある全てがオレンジ色に染まっています。
夕焼けを見るための時間と場所を持つ人たち・・・。そんな日常があるインドネシアの人たちがうらやましくなりました。
そして、インドネシアの伝統工芸が持つ繊細さとおおらかさが混在する不思議な美術が、この地で生まれた理由がほんの少しわかった気がしました。
展示を通して、そんなインドネシアの美術品の魅力を堪能いただけたら幸いです。
展示室では取材で撮影した映像も流しています。作品鑑賞の合間にぜひご覧くださいませ。
東洋館エントランスと展示室に設置した「海の道 ジャランジャラン」のディスプレイ。
ワヤンとバティックをモチーフに秋らしい落ち着いた赤色で統一されています。
インドネシアの国旗は「半分、赤い。」ですが、アジアの旅は「全部、赤い。」です。
| 記事URL |
posted by 神辺知加(デザイン室主任研究員) at 2018年09月20日 (木)