6月16日(火)より平成館企画展示室にて、特別企画「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」がはじまりました。

ところでみなさんは「旧石器時代」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
周りの人に聞いてみると、「マンモス?」「ヤリとか??」「きゅう…せっき?」…なんとなくクエスチョンマークつきで答えてくれました。
縄文時代といえば土偶、古墳時代といえば埴輪でおなじみですが、「旧石器時代ってどんな時代?」と聞かれてイメージできる人は実はあまりいないのです。
旧石器時代とは、ヒトが石器を使って暮らした時代。世界最古の石器はケニアで発見された約330万年前のものとされています。気の遠くなるような昔からヒトは石器をつくり、日常の道具として使ってきました。
そして、日本列島にヒトが移り住んだのは今から約4万年前。それ以降縄文時代の始まる約1万3,000年前までが日本の旧石器時代にあたります。
昭和21年(1946)に旧石器時代が発見されてから今年で80年。縄文時代より前はどんな時代だったのか?本展はそんな素朴な疑問に答える展覧会です。
本展の一番のみどころとして、まずは会場入口に展示している作品にご注目ください。

登録有形文化財 岩宿遺跡採集石器 槍先形尖頭器
群馬県みどり市 岩宿遺跡採集(相澤忠洋資料) 後期旧石器時代・前2万3,000年 群馬・岩宿博物館蔵
「槍先形尖頭器」と呼ばれる槍の先端に装着した狩りの道具で、旧石器時代の人々がもっとも好んで使った「黒曜石」でつくられています。きらきらと光り輝く美しい石器に、つい見とれてしまいます。
今から80年前、昭和21年当時、「火山灰が降り積もった赤土(関東ローム層)には人間が住めるはずがない」ということが日本考古学の常識でした。相澤忠洋(あいざわただひろ)氏が岩宿(現群馬県みどり市)の崖から採集した石器は、まさにその赤土から発見されたもので、彼が書籍で学んだ旧石器時代の「細石器」によく似ていました。

登録有形文化財 岩宿遺跡採集石器 石刃
群馬県みどり市 岩宿遺跡採集(相澤忠洋資料) 後期旧石器時代・前3万5,000年~前1万6,000年 群馬・岩宿博物館蔵
以後、相澤氏は岩宿の崖に通うことになります。そしてついに昭和24年(1949)、槍先形尖頭器を発見するに至り、赤土の中から旧石器時代の石器が出土することを確信します。

相澤忠洋 群馬・岩宿博物館提供
行商のあいまに考古学に没頭し、岩宿遺跡を発見、その後も多くの遺跡の発見に尽力しました。

岩宿遺跡遠景 東京・明治大学博物館提供
「赤土の中から石器が出土する」。相澤氏が採集した石器を目にした明治大学の研究者・芹沢長介(せりざわちょうすけ)、杉原荘介(すぎはらそうすけ)は旧石器時代の存在を直観し、すぐさま岩宿の発掘を決断します。そのスピードたるや凄まじいもので、翌日には発掘の相談、その2日後には発掘調査の準備を済ませて、群馬県桐生市に乗り込んでいるということからも相当な意気込みが感じられます。そして発掘当日の昭和24年9月11日、ついに岩宿の地で赤土から石器が出土することを確認しました。

岩宿遺跡発掘の様子
昭和24年(1949)9月11日撮影 東京・明治大学博物館提供

重要文化財 岩宿遺跡出土石器(岩宿Ⅰ石器文化)
群馬県みどり市 岩宿遺跡出土 後期旧石器時代・前3万5,000年 東京・明治大学博物館蔵
あまりの感動に、明治大学の研究室宛てに「ハックツニセイコウ タダナミダノミ」という電報が打たれたことは、考古学の中では有名な話です。芹沢・杉原ともにまだ30代の若き研究者であり、当時の常識にとらわれず目の前の石器に向き合った結果が「旧石器時代」の証明につながったといえます。
今から80年前、一人の人間が岩宿で採集した小さな石器が、考古学史上に大きな足跡を残すきっかけとなりました。岩宿遺跡の発掘のあと、日本各地で次々と旧石器時代の遺跡が発見、発掘され、現在では1万箇所以上あることがわかっています。このブログを読んでいるみなさんの住んでいる近くにも、その場所で初めて人々が暮らし始めた旧石器時代の遺跡があるはずです。
また、旧石器時代は、縄文時代にはじまり現代に続く「定住生活(イエを立てて、ムラをつくり仲間とともに暮らす生活)」とは全く異なり、食料となる動物を追いかけ人々が移動しながら暮らしていました。本展では狩猟に使用されていたさまざまな石器などをご覧いただけます。

日本の旧石器時代の石器 展示の様子
展示の後半では、当館の所蔵する世界の旧石器時代の石器をご紹介します。
人類史の99パーセントを占める旧石器時代。世界各地から採集された石器がずらりと並び、その長い歴史の全体像を一望することができます。

世界の旧石器時代の石器 展示の様子
そのほか、旧石器時代の石器を復元したレプリカや景観を復元したジオラマなども展示しています。

狩猟具レプリカ、石器作りの道具
現代 群馬・岩宿博物館蔵
本展は、当館では初めて旧石器時代をテーマとした展示になります。書きたいことは山ほどあるのですが、まずはぜひこの機会に、展示室で実物をご覧ください。「縄文時代より前の時代ってどんな時代?」「旧石器時代って聞いたことあるかも」という旧石器時代ビギナーにうってつけの内容になっています。
旧石器時代にはじまる人類の長い歴史。人々がつくり続けた石器を実際に目にしていただくことで、少しでも「旧石器時代」が身近な存在になればと願っています。
本展は、8月23日(日)まで開催しています。
【東博でもっと楽しむ旧石器時代】
平成館1階考古展示室(本展向かい側の展示室)では日本の、東洋館地下1階12室(インド・東南アジアの考古)ではアジアの旧石器時代の石器を展示しています。本展とあわせてお楽しみください。
日本の旧石器時代の基本がわかる、以下の解説動画もぜひご覧ください。
(注)動画内の展示作品は展示替えのため、実際と異なる場合があります。
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posted by 飯田茂雄(文化財活用センター研究員) at 2026年06月25日 (木)
特集「古裂鑑賞のいろは―加賀藩前田家伝来 名物裂の世界―」のいろは
安土桃山時代に千利休が大成した「茶の湯」の文化の中で、特に貴重とされ、重んじられた茶道具を「名物」と呼びます。その後、江戸時代に入り、著名な寺院や位の高い僧侶、茶人などにゆかりを持つとされる裂(きれ)について、その由来にあわせた特別な名前をつけ、珍重する「名物裂(めいぶつぎれ)」の価値観が形成されました。






リーフレット
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posted by 沼沢ゆかり(文化財活用センター研究員) at 2026年06月11日 (木)








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posted by 鬼頭 智美(学芸企画部海外展室) at 2026年06月05日 (金)
現在、本館2階のD・E室(旧特別1室・2室)では特別企画「アイルランド チェスター・ビーティー・コレクション 絵巻と絵本のたからばこ」を開催しています(会期:~7月20日(月・祝)まで)。
アイルランドの首都ダブリンにあるチェスター・ビーティーが所蔵する、珠玉の絵巻・絵本コレクションを紹介するこの展示。みどころはたくさんありますが、今回はE室に展示している伊藤若冲「乗興舟(じょうきょうしゅう)」をご紹介します。








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posted by 村瀬 可奈(日本絵画) at 2026年05月27日 (水)
石板で肉を焼き、ガラス玉を想う 特集「フォルモサ(美しき島)の豊かな暮らし」その3






ガラス首飾 パイワン族 台湾南部 19世紀後半~20世紀初頭 藤江志津氏寄贈 東京国立博物館蔵
トンボ玉部分拡大
さて、こちらは特集「フォルモサ(美しき島)の豊かな暮らし」―台湾の原住民族の資料―で展示中のパイワン族の首飾。橙色のガラス玉を二重に連ね、間に白や青、緑の管玉を挟んで、中央に模様のある玉(日本で言うトンボ玉)を配しています。
本特集の担当研究員によるリレーブログ
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posted by 福島修(貸与特別観覧室長) at 2026年05月15日 (金)