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やちむん―沖縄のやきもの

6月25日(火)より、本館14室にて特集「やちむんー沖縄のやきもの」が始まりました。
この特集は、明治18年(1885)に沖縄県から購入した壺屋焼を中心に、約20件の収蔵品を紹介するものです。

いまから○△年前、卒論のテーマ探しに追われた学生の私は、図書館で「運命の本」と出会いました。
濱田庄司の『沖縄の陶器』です。

いわゆる「民藝運動」や、やきものの歴史も知らなかった20歳の私のまっさらな眼に飛び込んできたのが、沖縄県那覇市壺屋で焼かれた「壺屋焼」でした。
その力強さとのびやかさにすっかり魅了され、自分なりに考えて「なぜ壺屋で白いやきものが焼かれたのか」という疑問を得たことが、陶磁器研究の出発点となりました。

その後、東京国立博物館に着任して、初めて寄贈を受けたのもじつは壺屋焼でした。


ジシガーミ(厨子甕) 沖縄本島 壺屋焼 第2尚氏時代・18~19世紀 堤里志氏寄贈

こんなご縁がありながら、厖大(ぼうだい)で難解な中国や日本の陶磁器に日々立ち向かうなかで、壺屋焼について考える時間も機会も失っていました。

一方、トーハクは2010年代に入ると本館の展示体系に変化がありました。
その一つが「アイヌと琉球」の展示です。
平成26年度(2014)から単発の特集ではなく、リニューアルした本館16室において常設展示が始まったのです。


本館16室の風景

この流れのなか、考古担当の研究員を中心に琉球資料の見直しが行われ、長く展示に活用されることがなかった作品も日の目を見ることになりました。

収蔵庫に眠っていた壺屋焼のなかには、収蔵時からと推測される古いキズや割れがあるものがありました。
また、壺屋焼と認識されてきた作品に中国清朝の磁器が含まれていたことも新たに判明しました。


蓋マカイ(粉彩鹿鶴文蓋付碗・五彩吉祥文字文蓋付碗) 中国 景徳鎮窯 清時代・19世紀
「道光年製」「咸豊年製」銘が施された貴重な作例。直接中国と交流のあった琉球王朝ならではの伝世品です。
詳細はMUSEUM680号をご参照ください。


今回の特集は、修理を経て、トーハクの壺屋焼をまとまって紹介する初の展観となります。

あらためて作品を見てみると、新しい疑問が湧いてきます。
他の壺屋焼にはあまりみられない素地(化粧をしていない真っ白い胎)であったり、珍しい装飾が施されていたりするのです。


チューカー(色絵梅竹文水注) 沖縄本島 壺屋焼 第2尚氏時代・18世紀末~19世紀


マカイ(緑釉蓮葉文鉢) 沖縄本島 壺屋焼 第2尚氏時代・18世紀末~19世紀

明治18年に購入され、当館に収められた壺屋焼は、いったいいつどのような背景で焼かれたものなのか、残念ながら詳細は今のところわかっていません。

しかし作行きをみる限り、世に伝わる壺屋焼や首里城から出土した資料と比べても、きわめて特殊な一群であることは確かなようです。そして、戦争という悲劇を免れて今日に残る貴重な一群でもあります。

かつて私が学生なりに考えた「なぜ白いやきものが焼かれたのか?」という問題然り、壺屋焼の展開にはまだわからないことが多く残されています。

中国や東南アジアのやきもの、さらに薩摩焼や伊万里焼など日本のやきものの影響を受けて、独自に花ひらいた沖縄の壺屋焼。トーハクの作品に光を当て、研究の一助となるようにこれからも努めたいと思います。

 


本館14室 特集展示の様子
特集「 やちむん―沖縄のやきもの」
本館14室 2019年6月25日(火)~9月16日(月・祝)

 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 三笠景子(特別展室) at 2019年06月25日 (火)

 

本館11室はみほとけの世界

上野公園は紫陽花が咲き始め、この時期ならではの季節を感じることができます。
そんな上野公園の噴水付近からトーハクを見ていると・・・
本館にとても目立つバナーが!近づいてみましょう。
 


圧倒的な存在感を放つこのバナーを掲げている本館にて、
6月18日より特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」が開幕しました。

この展覧会は特別展の会場ではなく、本館1階11室(本館入ってすぐ右)です。
通常この11室は彫刻の展示室ですが、9月23日まで奈良県に所在する、
岡寺(おかでら)、室生寺(むろうじ)、長谷寺(はせでら)、安倍文殊院(あべもんじゅいん)の名品を展示しています。

全作品15件のうち、国宝4件、重要文化財9件と豪華なラインナップに驚かれること間違いなしです。

開幕初日の6月18日に行った浅見研究員によるギャラリートークでは展示室が人、人、人!!
11室がこんなに多くの人で埋め尽くすのは初めて見ました。


重要文化財 難陀龍王立像 舜慶作 鎌倉時代・正和5年(1316)奈良・長谷寺蔵
難陀龍王立像の前でギャラリートークを行う様子。

それでは各寺の作品を紹介します。

岡寺の義淵僧正坐像(ぎえんそうじょうざぞう)は、
顔に刻まれた深い皺や浮き出たあばらなど日本古代肖像彫刻の名作の一つです。


国宝 義淵僧正坐像 奈良時代・8世紀 奈良・岡寺蔵


室生寺の釈迦如来坐像(しゃかにょらいざぞう)は何といっても衣文(えもん)に心奪われること間違いなし!
するどい切れ味の彫り口とこの大きさで一木彫像であることに驚かれると思います。


国宝 釈迦如来坐像 平安時代・9世紀 奈良・室生寺蔵

長谷寺の十一面観音菩薩立像(じゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう)は中世でめずらしい銅造。
光背は別鋳製となっており本体と接合しています。
このお像は独立ケースに入っていますので後ろからも細かい細工がよく見えます。


重要文化財 十一面観音菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 奈良・長谷寺蔵

安倍文殊院の文殊菩薩像像内納入品 仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等(もんじゅぼさつぞうぞうないのうにゅうひん ぶっちょうそんしょうだらに・もんじゅしんごんとう)です。
快慶作文殊菩薩像の像内から発見された経巻です。


国宝 文殊菩薩像像内納入品 仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等 鎌倉時代・承久2年(1220)奈良・安倍文殊院蔵

展示風景の写真を載せていないのはぜひ皆様の目でじっくり見ていただきたいからです。
ぜひ会場に足をお運びいただきお楽しみください。

本企画は総合文化展料金で見ることができるとてもお得な展覧会です。

7月9日より特別展「三国志」も開幕します。
もちろんそのチケットでもご覧いただけます。

どの作品が心に残るでしょうか。
心を動かす1点に巡り合えますように。

また、11室入口左には特設ショップが出ています。
図録や様々な商品が出ていますのでぜひお立ち寄りください。

*会場内は撮影不可です。

特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」

本館 11室
2019年6月18日(火)~ 2019年9月23日(月)

 

カテゴリ:特別企画

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posted by 江原 香(広報室) at 2019年06月21日 (金)

 

松方コレクションの浮世絵版画

本館10室では、6月4日(火)から「松方コレクションの浮世絵版画」と題した展示を行っています。

川崎造船所の初代社長である松方幸次郎は、実業家としてだけでなく、数多くの美術品を収集した美術コレクターとしても知られています。中でも彼が集めた浮世絵版画は、宮内省を経て、現在当館に収蔵されています。

この度、国立西洋美術館で開催される「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」(6月11日~9月23日)との連携企画として、6月~9月の間、4期にわたり、本館10室を松方コレクションの浮世絵のみで構成しています。

それでは、各期のおすすめ作品を少しだけご紹介しましょう。

第一期:6月4日(火)~6月30日(日)

冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏(ふがくさんじゅうろっけい・かながわおきなみうら)
葛飾北斎筆 江戸時代・19世紀


「この作品知ってる!」と思われた方も多いのではないでしょうか?
北斎の「冨嶽三十六景」シリーズの中でも、「グレート・ウェーブ」と称され、世界で最も知られる日本絵画のひとつです。新千円札の裏面への起用も発表された話題の一作を、この機会にぜひお見逃しなく!



第二期:7月2日(火)~7月28日(日)

高名美人六家撰・辰巳路考(こうめいびじんろっかせん・たつみろこう)
喜多川歌麿筆 江戸時代・18世紀


江戸の6人の美人を描いたシリーズのうちの1枚です。この作品では、描かれた美人の名前を「判じ絵」にして画面上部に記しています。「判じ絵」とは、絵を見て答えを読み解く、江戸時代の庶民に親しまれたなぞなぞのこと。ぜひ展示室でこのなぞなぞを解いてみてください。



第三期:7月30日(火)~8月25日(日)

讃岐院眷属(さぬきいんけんぞく)をして為朝(ためとも)をすくふ図
歌川国芳筆 江戸時代・19世紀


武者絵やユーモアあふれる戯画を描いた人気絵師、歌川国芳の代表作のひとつです。
当時のベストセラー、滝沢馬琴(たきざわばきん)の『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』の1シーンを描いています。3枚の画面を効果的に用いたダイナミックな構図がみどころです。



第四期:8月27日(火)~9月23日(月・祝)

重要文化財 大谷徳次の奴袖助
東洲斎写楽筆 江戸時代・寛政6年(1794)


寛政6年(1794)5月からわずか10ヵ月で忽然と姿を消した謎の絵師、写楽。この作品は、彼の作品の中でも最も評価の高い役者大首絵28種のうちの1枚です。口を一文字に結び、片肌を脱ごうとする姿がコミカルに描かれています。


各期の作品を1点ずつご紹介してきましたが、展示室では、各期30点以上の作品が並びます。
松方コレクションは、浮世絵版画の歴史を辿ることのできる充実したコレクションです。墨一色の版画から色彩を増し、錦絵へと展開していく浮世絵版画の流れを、国立西洋美術館で公開される西洋美術の優品とあわせ、この機会にぜひお楽しみ下さい。

 

カテゴリ:絵画

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posted by 大橋美織(絵画・彫刻室) at 2019年06月08日 (土)

 

トーハクくんがゆく! 「群馬古墳フェスタ2019」に行ってきたほ!

ほほーい! ぼくトーハクくん!

みんな、6月2日(日)に閉幕した東寺展と美を紡ぐ展には来てくれたほ?
ぼくは東寺展と美を紡ぐ展最終日の6月2日(日)、群馬県前橋市の日本キャンパック大室公園で開催された「群馬古墳フェスタ2019」に行ってきたほ!

去年も行ってきた「群馬古墳フェスタ」は今年も大盛況! なんと、約28,000人のお客様が来たみたいだほ!

それでは思い出をプレイバックするほ!


今年は去年よりもイベント会場がパワーアップしていて、
たくさんのお友達に会えたほ!


身動きとれなかったほ・・・


まりこふんさんと記念撮影!


今年も天平のお姉さんに会えたほ!


どこかミステリアス、大阪府堺市のハニワ課長!


左から、ぐんまちゃん、武人ちゃん、ぼく、はにぽん


大きさにびっくり! 前橋市のころとん


群馬のご当地アイドルAKAGIDAN! ぼく、モテモテだったほ!


お友達と遊ぶだけでなく、
もちろんトーハクのこともしっかりPRしてきたほ!

 
チラシとミュージアムショップのグッズでアピール

6月18日から始まる特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」
7月9日から始まる特別展「三国志」を楽しみにしているお友達がたくさんいたほ!
はにわグッズも沢山売れたんだほ!


ステージイベントに2回も出たほ!


キレキレのダンスを披露したほ!


古墳クイズイベントにも出たほ!
もちろん全問正解したほ!



今年もたくさんのお客様にトーハクとぼくのことを知ってもらえて、
とっても充実したイベントだったほ。
これからももっと頑張って、トーハクのことをPRしていくほ!

おまけ

トーハク所蔵の「国宝 埴輪 挂甲の武人」のパネルでお別れだほ!

カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん

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posted by トーハクくん at 2019年06月07日 (金)

 

日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」報道発表会実施

2020年1月15日(水)~3月8日(日)、当館平成館にて
日本書紀成立1300年   特別展「出雲と大和」を開催いたします。

6月4日(火)に本展の報道発表会を行いました。



はじめに、主催者である当館副館長の井上洋一、島根県知事の丸山達也、奈良県知事の荒井正吾よりご挨拶いたしました。


当館副館長 井上洋一


島根県知事 丸山達也


奈良県知事 荒井正吾

令和2年(2020)は、我が国最古の正史『日本書紀』が編纂された養老4年(720)から1300年という
記念すべき年です。『日本書紀』の冒頭に記された国譲り神話によると、出雲大社に鎮座する
オオクニヌシは「幽(ゆう)」、すなわち人間の能力を超えた世界、いわば神々や祭祀の世界を司ると
されています。
一方で、天皇は大和の地において「顕(けん)」、すなわち目に見える現実世界、政治の世界を司ると
されています。つまり、古代において出雲と大和はそれぞれ「幽」と「顕」を象徴する場所として、
重要な役割を担っていたのです。


重要文化財 日本書紀 巻第二(部分)
南北朝時代・永和1~3年(1375~1377)愛知・熱田神宮蔵

展示期間:2月11日(火・祝)~3月8日(日)

「幽」と「顕」を象徴する地、島根県と奈良県が当館と共同で展覧会を開催し、出雲と大和の名品を
一堂に集めて、古代日本の成立やその特質に迫ります。

本展の見どころについて担当研究員の品川欣也より解説いたしました。

【みどころ1】
出雲大社のご神宝、東京へ

出雲大社に古くから伝わる手箱や甲冑などのご神宝をはじめ、社殿を飾っていた絵画、
境内から出土した巨大柱など、出雲大社の歴史を物語る作品を一堂にご覧いただけます。


重要文化財 宇豆柱
島根県出雲市 出雲大社境内遺跡出土
鎌倉時代・宝治2年(1248)島根・出雲大社蔵

【みどころ2】
大量の出土青銅器

国宝・荒神谷遺跡出土青銅器(銅剣・銅鐸・銅矛)から計189点、
国宝・加茂岩倉遺跡出土銅鐸のうち30個を展示します。
これだけの数が東京でまとまって出品されるのは、およそ20年ぶりです。


国宝 銅剣・銅鐸・銅矛(部分) 
島根県出雲市 荒神谷遺跡出土 弥生時代・前2~前1世紀
文化庁蔵(島根県立古代出雲歴史博物館保管) 

【みどころ3】
出土数最多の三角縁神獣鏡

黒塚古墳の被葬者を護り鎮めた33面の三角縁神獣鏡は、
1つの古墳から出土した数としては全国最多です。
その全点を出品します。


重要文化財 画文体神獣鏡・三角縁神獣鏡(部分)
奈良県天理市 黒塚古墳出土 古墳時代・3世紀
文化庁蔵(奈良県立橿原考古学研究所保管)


【みどころ4】
門外不出の仏像、初公開

1300年の間、大和の地でひっそりと守り伝えられた最古級の石仏が寺外初公開されます。
鋭い彫り口や、わずかに残る彩色などの細部にも要注目です。


重要文化財 浮彫伝薬師三尊像 
飛鳥~奈良時代・7~8世紀 奈良・石位寺蔵

その他、風化せず美しい姿のまま残された勾玉や高さ約2.5メートルの世界最大の円筒埴輪なども見られる
貴重な機会です。
2020年の幕開けを飾る、特別展「出雲と大和」、ご期待ください!

【おまけ】
期間限定早割チケット(税込1,200円)を10月5日(土)から11月4日(月・休)まで販売します。
1枚1,200円(税込)とお得です!

詳しくは本展公式サイトをご覧ください。

 

カテゴリ:2019年度の特別展

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posted by 長谷川 悠(広報室) at 2019年06月06日 (木)