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1089ブログ

上海博物館との競演―中国染織 その技と美―

この秋、トーハクに上海博物館(上博:シャンポー)所蔵の中国の刺繡や緙絲(こくし、綴織(つづれおり))が17件展示されています。上海博物館を訪れたとしても、上海博物館で見ることができる染織は中国少数民族の衣装が中心で、清時代までの宮廷や高官の邸宅を飾っていた染織美術が展示されることはほとんどありません。あなたの目で確かめなければ信じがたい、その技の美を、10月23日(日)までトーハクで見ることができます。

まずは、東洋館5室の中国美術の部屋にお越しください。大きな平たいケースの中に広げられるのは、元時代末から明時代初期に、寺院の壁を飾るために制作されたと考えられる壁掛です。上海博物館でも展示したことのない、初公開作品です。写真で見ると小さく感じられますが、縦194cm、横335cmもあり、文様は全て刺繡によるものです。
中央には五爪の金龍。肉太の金糸で刺繡されています。

刺繡龍八宝唐草文様壁掛
刺繡龍八宝唐草文様壁掛 中国 元~明時代・14世紀 上海博物館蔵

刺繡龍八宝唐草文様壁掛 部分図
同上 部分拡大


金龍の周囲には、仏教の教えの中に現れる「八宝」が美しい色で染められた絹糸で丁寧に刺繍されています。約800年も前の刺繡がこんなに色鮮やかに残っていることに驚きです。会場ではパネルで「八宝」の解説もしていますので、そのご利益を確かめてみてください。あなたにも、幸運が訪れるかもしれません。


5室を出ましたら、今度は中国絵画が展示されている8室まで上がってください。
中国には、絵画を刺繡や織物で表現するというちょっと想像しがたい手仕事が宋時代から行われてきました。私はそれを「染織絵画」と呼んでいます。8室では、素晴らしい中国絵画を、絵画的図様を卓越した緙絲の技で写した染織絵画とともにご覧いただきます。
この2つの作品、こうしてみると、絵画のようでしょう?

緙絲仙人図壁掛と緙絲花鳥図壁掛 緙絲仙人図壁掛と緙絲花鳥図壁掛
左:緙絲仙人図壁掛 中国 明時代・16~17世紀 上海博物館蔵
右:緙絲花鳥図壁掛 中国 清時代・18世紀 上海博物館蔵


でも近寄ってみると、いずれも織物です。日本でいう「綴織」です。
部分図 部分図
左:緙絲仙人図壁掛 部分拡大、右:緙絲花鳥図壁掛 部分拡大

清時代の皇帝・乾隆帝も今展示されている「緙絲仙人図壁掛」を鑑賞していたのですよ。さすが、見る目あるな、と感心してしまう、明時代の名品です!
三希堂精鑑璽
乾隆帝が特に優れた書画に捺した「三希堂精鑑璽」印が「緙絲仙人図壁掛」にも捺されています。


8室からエレベーターで降り地下1階の13室に行くと、このような「染織絵画」がずらりと並んでいます。「顧繡(こしゅう)」と呼ばれる明時代以降の伝統的な技法で刺繡された作品や、美しい色彩で織り出された緙絲の花鳥画などが見られますので、ぜひ、会場でガラスケースに額をくっつけて「えっ?本当に描いてないの?」と確かめてみていただければと思います。

東洋館13室 展示風景
東洋館13室 展示風景

このような「染織絵画」は、宋時代から行われてきたと考えられます。実際、台北故宮博物院には宋時代の山水画を写した途方もなく細密な緙絲が残されています。このような「染織絵画」は宋元時代に確立したものでしょう。明時代から清時代にかけても、以前として制作されてはきましたが、宋元時代の吉祥に関わる画題が中心となっています。明時代以降、画家たちはある意味「俗」である吉祥絵画を染織の工人の手に譲り、自分たちは高邁を気取って山水画や文人画に専念したのかしら、という印象も受けます。「裕福」「子孫繁栄」「立身出世」「長寿」と、素直な人間の願いを「吉祥」に託した染織絵画。その思いを身近に感じるとともに、会場で見なければわからない中国染織の技の美に触れていただきたいです。


展示情報
特集「 上海博物館との競演―中国染織 その技と美―」(2016年7月26日(火)~10月23日(日)、東洋館5室、13室)
特集「上海博物館との競演 ―中国書画精華・調度― (書画精華)」(2016年8月30日(火)~10月23日(日)、東洋館8室)

関連事業
スペシャルツアー 中国美術をめぐる旅―添乗員はトーハク研究員―「アジアをリードした中国の染織技術
2016年9月28日(水)11:00~12:00 東洋館
 
 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開博物館でアジアの旅

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posted by 小山弓弦葉(工芸室長) at 2016年09月20日 (火)

 

「平安の秘仏」展、開幕!

特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」が、9月13日(火)、待望の開幕を迎えました。



今回の主役は、滋賀県にある櫟野寺(らくやじ)の仏像たち。
このお寺には、重要文化財に指定される平安時代の仏像が20体も伝わります。
その20体すべてが寺外で揃う初めての機会、それが本展覧会なのです!



これだけでも大興奮ですが、まだまだすごいポイントが目白押し。
本展の最大の見どころである櫟野寺の本尊は、重要文化財の十一面観音菩薩坐像では日本最大です!
像高3.12m、台座・光背もあわせると約5.3mという大きさ。
お客様の小さな驚きの声が、展示室のそこかしこから聞こえてきます。


重要文化財 十一面観音菩薩坐像
平安時代・10世紀
滋賀・櫟野寺蔵



開幕前の展示室。人と比べると大きさがわかります

この像は、頭と胴体が1本の木から彫り出されているというのですから、元となった木の大きさを想像して2度びっくりです。

この大観音、これだけの大きさですからお寺から出るのは今回が初めて!
平安時代・10世紀につくられた像なので、1000年以上の時を経て、初めての旅にお出ましです。
旅の様子は、後日1089ブログでご紹介します。

本尊のまわりには19体の仏像が展示されています。
ぜひ、それぞれの顔をじっくりじっくりご覧ください。
何となく似通った特徴をもちながらも、非常に個性的な顔立ちの仏像ばかりで、お気に入りの1体を見つけるのも、本展の楽しみ方のひとつです。

  
左から:観音菩薩立像(5)、観音菩薩立像(6)、観音菩薩立像(7)

 
左から:観音菩薩立像(12)、十一面観音菩薩立像(17)

※すべて重要文化財、滋賀・櫟野寺蔵
※( )内は展示番号


10月3日(月)~31日(月)には、「個性派ぞろい 櫟野寺のみほとけたち」と題して当館ウェブサイトで投票企画を行います(9月30日(金)までは「博物館でアジアの旅 上海博物館の名品」の投票受付中)。
まずは展示室で実物をご覧いただき、皆様の心をとらえた仏像に、ぜひ愛の1票を!

ここまで、本展の見どころを紹介してきましたが、そもそも「櫟野寺…? 知らないし、読めないんだほ」と、トーハクくんと同じことを思った方、ご安心ください。
そんな皆様のため、仏像ファンでお馴染みのあの二人、みうらじゅんさん、いとうせいこうさんが立ち上がりました!
名づけて『「櫟(ラク)」普及委員会』
みうらじゅんさん、いとうせいこうさんのお二人が会長を務め、「ルビをふらなくても、誰もが「らくやじ」って読めるようにしよう」と、いうコンセプトのもと、櫟野寺の魅力を発信するのが委員会のミッション。
お二人には、展覧会オフィシャルグッズの制作のほか、音声ガイドでもご協力をいただきました。
こちらもぜひチェックしてください。


開幕の前日に行われた開会式には、櫟野寺のご住職、みうらじゅんさん、いとうせいこうさんも出席されました

1人でも多くのお客様が櫟野寺の仏像に会いにきてくださるよう、そして櫟野寺=らくやじと読めるよう、今後も1089ブログで本展の魅力を紹介していきます。
どうぞお楽しみに!

カテゴリ:news2016年度の特別展

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posted by 高桑那々美(広報室) at 2016年09月16日 (金)

 

トーハクで建築探訪~東洋館~

トーハクの正門を入って右手にある、シンプルですっきりとしたモダニズム建築。
現在「博物館でアジアの旅」を開催中の東洋館です。
東洋古美術の所蔵品を展示する施設として建設が計画され、1968(昭和43)年に開館しました。
前回紹介した法隆寺宝物館を設計した谷口吉生の父で、東京国立博物館評議員でもあった谷口吉郎の設計によります。

東洋館外観


外観は奈良の正倉院をイメージし、緩やかな勾配の切妻屋根、正面の列柱、周囲にめぐらせた庇を兼ねる大きな広縁など、伝統的な日本建築の要素が盛り込まれています。


広縁(テラス)は休憩スペースになっており、構内を一望できるスポットです。
広縁(テラス)


地下1階VRシアター入口への階段を降りると、そこはサンクンガーデンになっています。
サンクンガーデン


内部は、地下1階、地上5階を半階ずつ上がっていくスキップフロア構造が特徴的です。
2013(平成25)年1月のリニューアルオープン時より、「東洋美術をめぐる旅」をコンセプトにした展示構成となりました。


1室に入ると、巨大な中国の石仏とともに、5階まで吹き抜けの天井に目を奪われます。
(遠景の赤いちょうちんは現在開催中の「博物館でアジアの旅」の装飾です)
東洋館1室


3室はエジプトの神殿をイメージ。中央にはミイラが眠ります。
3室

大きく弧を描く青銅器の展示ケースが圧巻の5室。
5室


リニューアルの際には、建築家への敬意を忘れず、壁のタイルや、壁や柱に付けられた照明器具についてもその意匠を継承しています。

タイル
よく見ると、横に3本のスジが入っているタイル。既存のものと色や形が合うものを新たに製作するのはなかなか困難でした。
その製作の様子は「生まれ変わった東洋館!~タイル編~ (2012年6月の記事)」をご覧ください。


照明
壁や柱の照明器具も建築当時のものをそのまま使用。内部をクリーニングし、光源をLED化しました。



外観に派手さはありませんが、一歩、足を踏み入れると崇高な建築空間が広がります。
ゆったりと旅行気分で、アジアの悠久の美に思いをめぐらせてみてはいかがでしょうか。
 

 吹き抜け
最上階から眺めると、神殿のようにも見えてきます

 

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2016年09月09日 (金)

 

青銅器にほら夏の君―上海博物館との競演より―

8月が終わり、町は少しずつ秋支度。夏好きの僕にとって、9月というのは夏への未練が残るつらい時期でもあるのです。

夏の主役はなんといっても蝉でしょう。彼らの鳴き声は夏の扉を開き、彼らが町からいなくなるとき、僕の夏も終わりを告げるのです。夏、夏、夏。行かないで夏。そんな思いが通じて、というわけでは絶対ありませんが、このたび上海博物館から蝉がやってきました。

いま、東洋館では上海博物館との競演を各部屋で実施しています。質量ともに世界屈指の呼び声高い、青銅器コレクションもお目見えです。今回お借りしたのは10件。そのなかのひとつ、こちらの扁足鼎(へんそくてい、図1)に蝉がいたのです。胴部を拡大してみましょう(図2)。横向きに連なっている虫がそれです。
 
扁足鼎
図1.扁足鼎 西周時代・前11~前10世紀     上海博物館蔵
   

扁足鼎の胴部
図2.扁足鼎の胴部


「おいおい、これのどこが蝉なんだい?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。僕自身も蝉と断言してよいものか迷います。なにより羽がありません。これは致命的です。

しかし、全体的な体のつくりはたしかに蝉です。くびれ部分のひし形もようは胸背の隆起か模様を表し 大きな2つの丸印は複眼を思わせます。先端のハート形は頭と口吻でしょうか。また羽がないことを考えると、羽化直前の蝉とも解釈できます。

青銅器の文様には、さまざまな生き物が登場します。それらは大きく2つの系統にわけて考えることができます。ひとつは様々な生き物の要素が混在した創造性の高い生き物。もうひとつは、意匠化しているとはいえ、他の生き物の要素が乏しいかまったくないものです。
今日ご紹介している蝉は後者です。古代の人々は、蝉の生態そのものにある種の特別な意味を見出していたのでしょう。だからこそ、その意匠は他の生き物と混在することがなかったのかもしれません。

青銅器の鑑賞は、知らない土地へ旅行する楽しみに似ています。そこにはまったく知らない世界がひろがっているので不安も少々。そんなとき、一人でも知り合いがいると旅に安心感が生まれるものです。悠久の器物に宿る蝉は、まさにそうした存在。未知の世界で僕たちを出迎えてくれる、よき友人ともいえるでしょう。


展示情報・関連イベント

特集「上海博物館との競演-中国青銅器-」
2016年8月30日(火) ~ 2017年2月26日(日) 東洋館 5室
スペシャルツアー 中国美術をめぐる旅―添乗員はトーハク研究員― 「悠久の青銅器と神獣ウォッチング」
2016年9月29日(木)11:00 ~ 12:00 (11:00に東洋館1階エントランスホールに集合)

 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開博物館でアジアの旅

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posted by 市元 塁(特別展室主任研究員) at 2016年09月06日 (火)

 

トーハクくん、特別展「古代ギリシャ」特設ショップに行く!

ほほーい!ぼく、トーハクくん。



今日は特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」のグッズを紹介しにきたほ。
どんなものがあるのか楽しみだほー。

まずは特別展に来たらこれを買わなければ。


特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」公式図録 2,800円(税込)
2016年発行、404ページ、A4変形判、図版ページカラー
全出品作品325件のカラー写真を掲載。各作品の解説も充実。


おー、とっても分厚いほ!さすがに404ページだと重さもなかなかだほ…。こういうときは定番のトートバッグも買うんだほ!持ち手も長くって肩からもかけられるので図録と一緒に買うのがお薦めだほ。


トートバッグ 2,500円(税込)

お次はこちらも定番のミニ付箋。


ミニ付箋 400円(税込)

作品の顔にふきだしがあるんだほ。



なになに…、「ぼくたちが、しゃべってるみたいに書いてね」。なるほー、書く内容によって使い分けるのも面白そうだほ。

さて、ほかに変わったものはないかな…。
お、これは!


湯かげんエーゲー 380円

これは入浴剤だほ。しかも商品名がダジャレになっているほ…。
ダジャレマスターのぼくがこのダジャレを採点……、60点だほ!その理由は、「えーげー」と「えーでー」の、「で」と「げ」が合ってないのでちょっと分かりづらい、と思って少し辛めに採点したほ。でもパッケージはかわいいし、中身はエーゲ海のきれいなブルーをイメージしたひんやりクールタイプということで心惹かれるほ。ただぼくは諸事情あってお風呂は苦手なんだほ…、でもキレイ好きのユリノキちゃんはきっと喜ぶほ!

お次はキーリング。なんだか「目玉のおやじ」みたいだほ?


キーリング(栓抜き付き) 750円(税込)

これは「イーブルアイ」といって古代ギリシャを起源とする目玉のモチーフなんだほ。邪視や災難をはね返す「魔除け」として現在のギリシャでも広く信じられているんだほ。なのでお守り代わりに使うのも良さげだほ。
さらにこのキーリング、アイデア商品で裏側が栓抜きになっているんだほ。



これがあれば銭湯に行ったとき、風呂あがりに瓶のコーラをマイ栓抜き(キーリング)をでポンっと開けられるときっと銭湯通~って思われるほ(諸事情あってぼくはお風呂は苦手なんだほ)。


さて、今回はオリジナルグッズ以外にもギリシャの名産品も販売しているんだほ。まずはこちら。1979年ギリシャにて創業のスキンケア・ボディケア・ヘアケアブランド、アピヴィーダの品々。


アピヴィーダ ハンドクリーム 1,620円(税込)

ぼく、こう見えて実はとっても乾燥肌なのでこれからの季節に備えて買っておくんだほ。ユリノキちゃんも欲しがるかな…?

お次はギリシャワイン。ギリシャでは古代からワインが作られていて、今も国際的コンクールでの受賞も多く世界的に注目されているんだほ。


ギリシャワイン 赤・白 各2種類 1,458円~2,376円(税込)

このワインに合わせるのは同じくギリシャ直輸輸入のラスクにオリーブをトッピングしたものなんていかがだほ?ぼくは5歳なので実際には試せなかったけどきっと合うような気がするほ。


ギリシャ直輸入のオリーブ・ラスク 各種あり

ん!?これは!!




オリジナルクッキー「古代ギリシャの神々」 780円(税込)

クッキーだほ!
ぼくの大好物のはにわクッキーに似ているほ!これは買わなければ!大量にストックしておくほ!


あー、とっても充実した品揃えで満足満足だほ。
みんなも特別展を見た後は是非グッズショップへ行ってほしいほ!きっとお気に入りの品が見つかるほ!

カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん2016年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2016年09月05日 (月)