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特別展「栄西と建仁寺」開幕!

開山・栄西禅師 800年遠忌 特別展「栄西と建仁寺」が開幕しました!

3月24日には、 一般公開に先立って報道内覧会と開会式が行われ、
ご来賓の方々をはじめ1300人を超すお客様においでいただきました。



いよいよ開幕したこの春注目の展覧会。
せっかくの機会ですので、会場の中を少しだけご紹介しましょう。

まず展覧会入り口で、皆様をお出迎えしてくださるのは…


明庵栄西(みんなんようさい)坐像 鎌倉時代・13~14世紀 神奈川・寿福寺蔵

栄西さんの坐像です。
展覧会広報においては、"風神雷神"が大活躍していますが、本展は栄西禅師800年遠忌の展覧会。
展覧会前半では、まず栄西さんのひととなりに触れることができます。

さてこのお像、注目すべきは、大きく、四角く、てっぺんが平らという特徴的な頭。
厳しい修行の末、一度見たものは忘れない超記憶法(?)を修めていたといわれる栄西さん。
大きな頭はその象徴。きっと知恵がいっぱいに詰まっていたに違いありません。
あれこれ仕事に追い回されて、七転び八起きを繰り返す私なぞ、もう思わず拝んでしまいます。
本当に…本当に…あやかりたいものです。

そのまま第1室を進むと見えてくるのは、展示室の中に再現された建仁寺の方丈。


四頭茶会茶道具 中国 明時代・16~17世紀/江戸時代・17~18世紀 京都・建仁寺蔵

日本に喫茶法を広めた「茶祖」としても知られる栄西。
この展示は、その栄西の誕生を祝して毎年4月20日に建仁寺で行われる四頭茶会の様子を
道具や設えをそのまま使って再現した、本展の見どころのひとつです。


また、展覧会の事前調査で、像内部に納入物が見つかった「蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)坐像」も本展注目の作品。


蘭渓道隆坐像 康乗作 江戸時代・延宝4年(1676) 京都・西来院蔵

納入物の古い肖像彫刻の残欠は残念ながら取り出してみることはできませんが、パネルでの解説を行っています。
(本ブログでも、今回の新発見の内容をご紹介予定。乞うご期待!)


さらに進んで、展覧会後半には今回の目玉となる、


重文 雲龍図(左4福) 海北友松(かいほうゆうしょう)筆 安土桃山時代・慶長4年(1599)京都・建仁寺


国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 江戸時代・17世紀 京都・建仁寺蔵

などなど見どころが目白押しですが、私がオススメしたいのは、この小野篁立像。


小野篁・冥官・獄卒立像 院達作 江戸時代・17世紀 京都・六道珍皇寺蔵

両側に冥官と獄卒を従えた、2mを超える堂々としたお像です。
恐る恐る顔を下から見上げると、玉眼がギラリと光った気がして、なにやら背筋がピンとなりました。
昼は朝廷に仕えながら、夜は閻魔大王の副官をしていたとの逸話も残る篁。
ふと、「さて、何か篁さんに怒られるようなことはしていなかったかな」と、
ここ数日のわが身を振り返ったところ、
ギラリと光る上司の目が思い出されて、再度、なにやら背筋がピンとなりました。

さて、今回は広報室員の個人的な感想も含めた展覧会場のご案内でしたが、
今後、当ブログでは特別展「栄西と建仁寺」の見どころについて研究員がご紹介していく予定です。

皆様におかれましてはぜひ、実際の展示とあわせてお楽しみいただければ幸いです。

 

カテゴリ:news2014年度の特別展

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posted by 田村淳朗(広報室) at 2014年03月26日 (水)

 

人気見学ツアー「保存と修理の現場へ行こう」

ただいま平成館企画展示室では、
特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」(2014年3月4日(火)~3月30日(日))を開催中です。
関連イベントである見学ツアー「保存と修理の現場へ行こう」(2014年3月13日(木)、3月14日(金))は、
毎回、応募者殺到の人気ツアー。
今年も多くの方にご応募いただき、ありがとうございました。

今回、この人気ツアーに広報室が参加! ツアーのみどころをリポートします。


参加者集合の後、まずは保存修復課長の神庭よりご挨拶。
そして、保存と修理を知る最初のステップとして、
荒木研究員から文化財の調査・診断について説明がありました。
文化財を修理する前には、どんな状態なのかを知る必要があります。
病院で治療前に診察をするのと同じですね。
4月から世界最大級のCTが導入されるなど、当館には文化財の状態を調査・診断するための機器が揃っています。
ただし、大切なのは人間の目で見ることなのだとか。
ひとつの修理作品を、複数の人の目で丹念に見て、文化財の状態を把握しているそうです。


さて、文化財の病気の診断がついたら、いよいよ治療(修理)です。
参加者は4班に分かれて、修理の現場へ出発!
今回は、酒井研究員の班に参加しました。


まずは、特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」の展示室へ。
実際に修理を経た作品を見ながら、修理の方法や修理過程で判明した情報について解説してもらいます。
時には「これはもはや発明ですね」と、参加者がどよめくような、スゴイ修理技術も!


解説は酒井研究員。みんな熱心に聴いています


紙の繊維の水溶液に、破損した資料を漬けて
破損部に繊維を付着させる「リーフキャスティング」という
修理方法には参加者から感嘆の声があがりました

 

展示室を後に平成館小講堂へ。
ここでは、書画・歴史資料の修理について、実際の修理道具を見ながら説明を受けます。
修理で使う糊は「接着力はあるけれど剥がしやすい」のがポイントです。
なぜなら、もともとの作品の状態を後世に伝える必要があるから。
文化財修理では、修理を施す前の状態に戻せる「可逆性」が重要なのだそうです。

   
2種類の糊の                 左側の糊の方が剥がしやすい
剥がしやすさを比較



そしてツアーはいよいよクライマックスへ!
まずは、今回のツアーで最大の盛り上がりをみせた刀剣修理室へ向かいます。
普段は入れない、博物館のバックヤードを見学できちゃうのもこのツアーの魅力です。

刀剣をそのままにしておくと次第に錆びてきます。
サビを取るためには、定期的に研がなくてはいけません。
ただし、研げば研ぐほど刀剣は磨り減っていく一方で、
文化財修理でポイントとなる「可逆性」が、この場合は当てはまりません。
そこで、まずは錆びないようにすること、
そしてごく初期の段階でサビを見つけることが重要なんですね。


実際に刀を持ってみました。想像以上に重い!

最後に、なんと実際に刀剣を研ぐ様子を見学しました!
酒井研究員でもめったに見ることがないそうで、貴重な体験です。
「刀剣は、静かな空間で音に耳を澄ませながら研ぐ」という言葉が印象的でした。


音で刀剣の状態を確かめながら研ぐそうです


ツアーのラストは実験室。
部屋の名前は「実験室」ですが、ここは比較的小規模な修理のための部屋です。
入り口は二重扉、壁に調湿効果のあるボードを使用するなど、
修理室ならではのつくりにも注目です。


1年間でおよそ1000件もの修理が行われています


ツアー終了後は、質疑応答タイム。
参加者からは盛んに質問が飛び出します。
普段は見られない場面、なかなか聞く機会のないエピソード満載のツアーだけあって、
興味は尽きません。

特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」は3月30日(日)までです。
表舞台に出ることのない、文化財の修理について知ることのできる貴重な機会です。
皆様のご来館をお待ちしております。

カテゴリ:教育普及保存と修理

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posted by 高桑那々美(広報室) at 2014年03月25日 (火)

 

「保存と修理」展、あと10日!

第14回目を迎えた特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」も、展示に合わせて先週行われたバックヤード・ツアー(事前申込制。当選倍率3.5倍!)を終え、残すところあと10日ほどになってしまいました(3月30日(日)まで、平成館企画展示室)。

展示風景
特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」展示風景

前回のブログでも紹介いたしました「応急修理」と「本格修理」以外にも今回の展示には隠れたみどころがあります。
それは当館が日頃行っている「予防」「調査診断」「修理」の連携を展示からコンパクトに見る事が出来るという点です。


まずは「予防」。
展示室には建物備え付けの温湿度センサーがありますが、より細かく温湿度の様子を捉える為の測定機器(データロガー)が下の写真の作品付近に備え付けられています。
通常、平成館で行われる特別展示では約20個程度が作品の環境を陰から測定しており、本館、東洋館では約200個が常時設置されています。影ながら見守っていますので、ほとんど目に付く所にはありません。


和泉国図展示の様子。画像右下に測定機器(データロガー)があります。


次に「調査診断」。
今回の展示作品の中で、考古、絵画、磁器の3分野6作品でX線を用いた修理前調査が行われており、展示室にて展示パネル、リーフレット等でそのX線透過画像を見る事ができます。
鉄鉾と石突のX線透過画像は解説パネルでもご覧いただけますが、少々小さいので以下にちょっと見やすくしてみました。
スマートフォンやタブレット端末を片手に展示作品と照らし合わせて、診断をなさってみてください。


鉄鉾、石突
左:鉄鉾、右:石突のX線画像


そして「修理」。
これは、言うまでもなく全ての作品をご覧ください。
コレクションを守る「保存と修理」の事業は今後も長く続いてまいります。今後も皆様のご支持を得られるように日々努力してまいります。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ保存と修理

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posted by 荒木臣紀(保存修復課主任研究員) at 2014年03月21日 (金)

 

博物館からはじまる春!「博物館でお花見を」

この冬は予想外の大雪に見舞われ、トーハク庭園の桜も枝が折れるなど影響を受けました。
ようやく、3月中旬にさしかかったところで、春らしい気温に戻りつつあります。

春の庭園開放(2014年3月8日(土)~4月13日(日))はすでに開催中ですが、
今年の東京の桜の開花予想は3月25日、満開は4月2日頃とのこと。
庭園の桜も懸命につぼみを膨らませているところでしょう。


オオシマザクラのつぼみ
つぼみを膨らませたオオシマザクラ


恒例のさくらカフェもオープン。池のほとりのベンチでゆっくりおくつろぎいただけます。

さくらカフェ
左:さくらカフェではコーヒー、ココアなど飲み物のほか、パンケーキやクッキー、マフィンなどもご用意
右:自家焙煎ドリップコーヒー(350円)と、桜マドレーヌ(200円)




そして明日、3月18日(火)から、恒例の「博物館でお花見を」が始まります。
桜をモチーフにした作品の展示や、ワークショップ、コンサートなど、まさに春爛漫の企画となっています。

館内にて配布している「博物館でお花見を」パンフレット(A4二折)をご覧ください。

パンフレットとバッジ

こちらは、さくらスタンプラリーの台紙にもなっています。
展示室では、桜のマークを目印に、名品の中に咲く桜をご鑑賞いただけます。
そのうち、5つのポイントでスタンプをご用意しています。全部集めるとオリジナル缶バッジをプレゼント!
今年は、かわいらしい仏像のデザインとなっています。
モデルは本館11室に展示されている桜材でできた如意輪観音菩薩坐像(奈良・西大寺蔵)です。


そして、今年のメインビジュアルはこの作品。
ひときわ華やかに展示室を彩ります。
源氏物語絵合・胡蝶図
源氏物語絵合・胡蝶図屏風 狩野晴川院〈養信〉筆 江戸時代・19世紀(4月20日(日)まで本館8室にて展示)


また、本館10室(浮世絵)では、3月25日(火)から4月20日(日)まで、すべて桜が描かれた作品の展示となります。
江戸の美人たちがお花見を楽しむ姿をご覧ください。


そのほか、
東博句会「花見で一句」、桜コンサート「桜の街の音楽会」、桜ワークショップ、ギャラリートーク、
ボランティアによるガイドツアーなど当日参加いただけるイベントが盛りだくさん。
(イベント情報は「博物館でお花見を」ページの関連事業欄でご確認ください)


また、WEBサイトでは、桜の名品の人気投票を行っています。
展示室でお気に入りの作品をみつけたら、ぜひ一票を。


ひとあし早い満開の桜たちが、皆様のご来館をお待ちしております!

 

 

カテゴリ:news博物館でお花見を

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2014年03月17日 (月)

 

支倉常長像に描かれた刀剣

こんにちは。
支倉常長像と南蛮美術」展(3月23日(日)まで、本館7室)をご覧になりましたか。
今回、400年前の日本人を油絵で描いた作品を見ることは大変貴重な機会であり、日頃、金工・刀剣を研究している私にとっても勉強になっています。

今回は、支倉像の刀剣の外装について少し考えてみたいと思います。
支倉像には刃を上向きにして腰の帯に指す大小二本の刀がみられ、この場合は大きいほうは打刀(うちがたな)、小さいほうは合口(あいくち)とみられます(図1)。
どちらも金を多く使用しており大変豪華です。

支倉常長像
(図1)支倉常長像 アルキータ・リッチ作 17世紀 イタリア・個人蔵

大の打刀に注目してみましょう。
絵画作品からの推測を承知で言えば、柄は茶熏韋巻(ふすべがわまき)、縁頭(ふちがしら)と鐺(こじり)は金、鐔(つば)は金色を呈し、伊達家の家紋である九曜紋を透彫にし(図2)、鞘は鮫皮包黒漆塗研出(さめがわづつみくろうるしぬりとぎだし)だと思われます(図3)。
金の鐔はやや厚みがあって文様を透彫にしていますが、これと類似したものに埋忠派の作とされる「桜花透金無垢鐔(おうかすかしきんむくつば)」(安土桃山~江戸時代・17世紀 個人蔵 図4)があります。
同派は、安土桃山時代を代表する装剣金工一派で、鐔の素材に当時としては斬新であった真鍮や金を用いるなど、革新的で華やかな表現を特徴としています。
鞘の鮫皮包黒漆塗研出とは、鮫皮(実際にはエイの皮)を巻きつけ、上から黒漆を塗り、さらに研ぎ出すことで鮫皮の凸が斑紋となってあらわれる技法のことです。
近世初期の著名な作例には、細川三斎が創案し、「歌仙拵(かせんごしらえ)」と通称される「腰刻黒漆研出鮫打刀(こしきざみくろうるしとぎだしさめのうちがたな)」(江戸時代・17世紀 永青文庫蔵 図5)があります。

支倉常長像(拡大)   支倉常長像(拡大)
(図2)   (図3)

桜花透金無垢鐔 
(図4)桜花透金無垢鐔 埋忠作 安土桃山~江戸時代・17世紀 個人蔵(出典:雑誌『刀剣美術』531号 公益財団法人日本美術刀保存協会)

腰刻黒漆研出鮫打刀(歌仙拵)
(図5)腰刻黒漆研出鮫打刀(歌仙拵) 江戸時代・17世紀 永青文庫蔵


次に小の合口を見てみましょう。
この合口は仙台市博物館が所蔵する支倉常長像にもみられます。
柄は茶に塗ったと思われる鮫皮、頭は金、鞘は金圧出霰(きんへしだしあられ)とみられます(図6)。
金圧出とは凹凸をつけた文様の型の上に薄い金板を置き、上から叩くことで板にレリーフ状に文様をあらわす技法で、支倉像の場合は霰(小さな粒)の文様をあらわしています。
金圧出によって霰をあらわした作例は、やはり安土桃山時代の刀装にみられ、筑前・黒田家に伝来した「金霰鮫青漆打刀(きんあられさめあおうるしのうちがたな)」(重要文化財 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 福岡市博物館蔵 図7)では、鞘の腰元から先にみられます。


小の合口(拡大)
(図6)
重要文化財 金霰鮫青漆打刀
(図7) 重要文化財 金霰鮫青漆打刀 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 福岡市博物館蔵 

こうして支倉常長像の刀剣の外装をみると、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて流行した作品、しかも上層階級の武士が使用した作品と共通点がみられ、常長が、時代の最先端で、最高級品の刀装を身につけ、遠い異国の地へ赴いたことが指摘できます。

カテゴリ:研究員のイチオシ2013年度の特別展

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posted by 酒井元樹(保存修復室研究員) at 2014年03月14日 (金)