東京国立博物館では、毎年、この季節になりますと3月3日の桃の節句(上巳の節句)にちなんで、当館のコレクションの中から雛飾りを展示しています。
特集「おひなさまと日本の人形」(3月31日(日)まで)の展示風景
本館14室に入り向かって右側にある大きなケースには、毎年、恒例の三段飾りをしています。
この雛壇には、古来より宮廷貴族の間でもちいられてきた「天児(あまがつ、男の子)」、「這子(ほうこ、女の子)」といった原初的なスタイルの人形から、紙で胴体を形作った「立雛(たちびな)」、室町時代の宮廷風俗を模したとされる「室町雛(むろまちびな)」、上方で流行したまあるいお顔の「次郎左衛門雛(じろざえもんびな)」など、ひな人形の歴史をたどることができる展示をしています。
また、ミニチュアだからこそ日本の卓越した工芸の技を存分に発揮できる、雛道具の数々も見どころです。
この雛壇の展示作業を一日で行うのがとっても大変なのですが、この度、その様子を動画で紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
雛飾りばかりではなく、特に江戸時代に飛躍的に発展、成熟を遂げた、日本の伝統的な人形も、毎年テーマを変えて展示しております。
今年のテーマの1つは「嵯峨人形(さがにんぎょう)」。江戸時代前期に嵯峨在住の仏師(仏像を彫刻する職人)が、余技で始めたのがその始まりだと言われています。
木彫りした人形に胡粉(ごふん)といわれる白い塗料を塗り、黒紅(くろべに)と呼ばれた赤黒い色で着物の地色を塗り、その上に仏像に施されるような細密な金彩色を着物の模様として施す点が特徴です。
猿廻し、人形使(にんぎょうつか)い、遊女など、江戸時代のさまざまな職業の風俗を表しました。
嵯峨人形 人形使い(さがにんぎょう にんぎょうつかい)
江戸時代・17世紀~18世紀 野村重治氏寄贈
また、今回の注目は頭を後ろからつつくと首が前後に動き、舌がぺろっと出てくる子どもの姿を表した「嵯峨人形 首振り(さがにんぎょう くびふり)」です。江戸時代には人気の仕掛け人形だったようで、いくつもの例が遺されており、子だくさんを願う子犬を小脇に抱えています。展示されている人形は動きませんが、動いている様子を本館14室のモニターで見ることができます。
嵯峨人形 首ふり
江戸時代・17世紀
嵯峨人形は、着せ替えのできる「裸嵯峨(はだかさが)」と呼ばれる子どもの人形へと変化し、それが御所人形へと発展していったと言われています。
今となっては伝世品の少ない「裸嵯峨」や、愛らしい赤子姿の「御所人形(ごしょにんぎょう)」も本館14室でご覧いただけます。
御所人形笛吹き童子(ごしょにんぎょう ふえふきどうじ)
江戸時代・19世紀 尾竹越堂氏寄贈
特集「おひなさまと日本の人形」は本館14室にて3月31日(日)まで開催しています。
現代の生活では大きな雛壇の雛飾りが難しくなってきたこの頃、ぜひ、当館で華やかな伝統の雛祭りの様子をご体感ください。
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posted by 小山 弓弦葉(工芸室室長) at 2024年03月13日 (水)
まもなく閉幕を迎える特別展「本阿弥光悦の大宇宙」(3月10日(日)まで)は、3月5日(火)午前に来場者10万人を突破しました。
これを記念し、東京都八王子市からお越しの田中さんと神奈川県相模原市からお越しの澤井さんに、当館館長の藤原誠より記念品を贈呈いたしました。
記念品贈呈の様子。田中さん(左)と澤井さん(中央)、藤原館長(右)
田中さんと澤井さんは長年のご友人で、お二人とも美術やものづくりにご関心が深く、当館にもよくご来館くださっているそうです。
今回陶芸にも挑戦されている田中さんが、手芸がご趣味の澤井さんをお誘いになり、光悦の作品の数々をご鑑賞にお出かけくださったとのことでした。
「大宇宙」のごとく深淵な本阿弥光悦の世界を「観測」する特別展「本阿弥光悦の大宇宙」も会期残すところあと5日ばかり。
3月8日(金)、9日(土)は19時まで開館(最終入場は18時30分まで)します。
綺羅星のごとく輝く、革新的で傑出した優品の数々をこの機会にどうかお見逃しなく。
カテゴリ:「本阿弥光悦の大宇宙」
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posted by 中束達矢(広報室) at 2024年03月05日 (火)
創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」報道発表会
2024年7月17日(水)~9月8日(日)、当館平成館で創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」を開催します。
神護寺(じんごじ)といえば、「紅葉(もみじ)の名所」としてご存知の方もいらっしゃるでしょう。京都駅からバスと徒歩で1時間30分ほどの場所にある寺院です。
青紅葉も美しい神護寺の金堂
天長元年(824)、高雄山寺(たかおさんじ)と神願寺(じんがんじ)というふたつの寺院がひとつになり神護寺が誕生しました。今年は神護寺創建1200年、そして神護寺とゆかりの深い、空海生誕1250年の年にあたります。本展では、1200年を超える歴史の荒波を乗り越え伝わった、文化財の数々をご覧いただきます。
2月14日(水)には本展の報道発表会を行いました。
まずは、主催者の高野山真言宗遺跡本山高雄山神護寺 貫主 谷内弘照(たにうちこうしょう)氏と、当館副館長の浅見龍介がご挨拶しました。
高野山真言宗遺跡本山高雄山神護寺 貫主 谷内弘照氏
当館副館長 浅見龍介
続いて、本展の見どころについて、当館の古川攝一研究員が解説しました。
研究員 古川攝一
特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」は5章に分かれています。
ここでは、それぞれの章の概要と作品の一部をご紹介します。
【第1章 神護寺と高雄曼荼羅】
唐から帰国した空海が活動の拠点とした場所が高雄山寺です。「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」は、空海が中国から請来(しょうらい)した曼荼羅が破損したため、それを手本に制作されたものです。本章では約230年ぶりに修復された「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」や、院政期の神護寺に関連する作品をご覧いただきます。
現存最古の両界曼荼羅
国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)
平安時代・9世紀 京都・神護寺蔵 左の【金剛界】は後期展示(8月14日~9月8日)、右の【胎蔵界】は前期展示(7月17日~8月12日)
等身大の迫力 日本肖像画の傑作
国宝 伝源頼朝像
鎌倉時代・13世紀 京都・神護寺蔵 前期展示(7月17日~8月12日)
【第2章 神護寺経と釈迦如来像―平安貴族の祈りと美意識】
「神護寺経」は神護寺に伝わった「紺紙金字一切経(こんしきんじいっさいきょう)」の通称です。一方、「赤釈迦(あかしゃか)」の名で知られる「釈迦如来像」は、細く切った金箔による截金(きりかね)文様が美しい平安仏画を代表する作例です。平安貴族の美の世界をお楽しみいただきます。
鳥羽天皇発願 金泥で書かれた一切経
重要文化財 大般若経 巻第一(紺紙金字一切経のうち)(部分)
平安時代・12世紀 京都・神護寺蔵 通期展示
繊細優美な平安仏画の傑作
国宝 釈迦如来像
平安時代・12世紀 京都・神護寺蔵 後期展示(8月14日~9月8日)
【第3章 神護寺の隆盛】
僧である文覚(もんがく)による復興後、弟子によって伽藍(がらん)整備が進められ、神護寺はさらに発展していきます。本章では中世の神護寺の隆盛が伺える「神護寺絵図」や、密教空間を彩る美術工芸品の数々を展示します。
密教儀礼の場にしつらえられた屛風
国宝 山水屛風
鎌倉時代・13世紀 京都・神護寺蔵 後期展示(8月14日~9月8日)
【第4章 古典としての神護寺宝物】
幕末に活躍した絵師、冷泉為恭(れいぜいためちか)は数々の古画を模写しました。神護寺宝物では「山水屛風」や「伝源頼朝像」を写しています。また、「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」は、空海ゆかりの作例として、平安時代後半から曼荼羅の規範となり、仏の姿が写されました。神護寺の寺宝が古典として、江戸時代後半から明治時代に再び注目された様子をご紹介します。
国宝「山水屛風」を丁寧に写した摸本
山水屛風
冷泉為恭筆 江戸時代・19世紀 京都・神護寺蔵 後期展示(8月14日~9月8日)
【第5章 神護寺の彫刻】
「薬師如来立像」は、神護寺が誕生する以前につくられており密教像ではありませんが、空海は本尊として迎えました。深い奥行きや盛り上がった大腿部、左袖の重厚な衣文(えもん)表現は重量感にあふれており、日本彫刻史上の最高傑作といえます。本章では、5体が勢揃いした「五大虚空蔵菩薩坐像(ごだいこくうぞうぼさつざぞう)」や変化にとんだ姿の「十二神将立像」などをご覧いただきます。
寺外初公開 厳しい眼差しのご本尊
国宝 薬師如来立像
平安時代・8~9世紀 京都・神護寺蔵 通期展示
本展は、約半世紀ぶりに開催される神護寺展となります。
今後も展覧会公式サイトや当館サイトなどで最新情報をお伝えしていきます。ぜひご注目ください!
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posted by 宮尾美奈子(広報室) at 2024年02月29日 (木)
東京国立博物館(以下「東博」)の植松です。
カテゴリ:研究員のイチオシ、中国の絵画・書跡、「生誕180年記念 呉昌碩の世界—金石の交わり—」
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posted by 植松瑞希(絵画・彫刻室) at 2024年02月26日 (月)
今から20数年前の夏のこと、私は1ヶ月ほど、岩手県の平泉に滞在していました。
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posted by 猪熊兼樹(保存修復室長) at 2024年02月22日 (木)