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聖林寺 国宝 十一面観音菩薩像のCT調査

開催中の特別展「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」ブログ第3弾では国宝 十一面観音菩薩立像のCT調査についてご紹介します。

当館には、非破壊で文化財の内部を見ることができるⅩ線CT装置があります。
文化財の研究や保存には大変に有用な装置ですが、得られたデータの分析には専用のソフトウエアが必要です。このソフトウエアが大変に高額で、気軽に購入できるものではありませんが、さいわい、機能が限定された無償版が提供されています。
これまではそれを使用していましたが、今年度、研究費が認められソフトウエアを購入することができました。
専用のソフトウエアを利用するとCT画像は簡単に見ることができますが、そこには多くの情報が詰まっているので、詳しく分析するのは容易ではありません。
そのため、分析作業は先延ばしになりがちで、展覧会出品作品の場合、分析結果を作品で確認できずに困ることがあります。

聖林寺の十一面観音菩薩立像は、展覧会の開幕前にCT撮影をしました。


十一面観音菩薩立像をCT装置に入れたときの様子

新しいソフトウエアがうれしくて、さっそく分析にとりかかりました。

仏像のCT分析で、最も期待されるのは納入品でしょう。
聖林寺の十一面観音立像は従来のⅩ線撮影が済んでいて、内部に空洞があること、しかし、そこには何もないことがわかっています。
とはいえ、Ⅹ線ではわからないものがCTで見つかることがあります。心のどこかに期待があります。

結果は…

やはり、納入品はありません。
そんなものと思って分析を続け、画像の表示モードを変更すると!

とつぜん杖のようなものが現れました。

 
十一面観音菩薩立像中心部分に杖のような一筋の線が見えます。

大発見!?


しかし、どこか不自然です。CT画像にはノイズが現れることがしばしばあるのです。
保存科学を担当する同僚に館内メールで意見を求めましたが、すでに帰宅したのか返事がありません。

その日はオリンピックが始まる4連休の前日でした。かすかな期待を胸に連休を過ごしたのです。
連休が明けて出勤し、しばらくすると返事がきました。「ノイズである。」

日本彫刻史上の金メダルは夢に終わりました。

カテゴリ:2021年度の特別展

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posted by 丸山士郎(企画課長) at 2021年08月05日 (木)

 

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