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壁画以外にもみどころがたくさん!特別展「キトラ古墳壁画」

特別展「キトラ古墳壁画」(2014年5月18日(日)まで、本館特別5室)は、おかげさまで初日以来、多くのお客様にお出でいただいております。どうもありがとうございます。
今回はこの展示の壁画以外のみどころや周辺のみどころをご紹介いたします。

キトラ古墳というと、どうしても壁画ばかりが注目されますが、副葬品や棺関係資料等の出土品にもみるべきものがあります。例えば、鉄地銀張金象嵌帯執金具(てつじぎんばりきんぞうがんおびとりかなぐ)。難しい名称ですが、大刀(たち)を腰に下げるための金具と考えられています。金線による連続したS字状の象嵌は、所々微妙に太さを違え、変化のある繊細な出来ばえです。

 
出土品や推定復元された黒漆塗銀装大刀の展示


本展覧会では、壁画・出土品の実物資料にくわえて、壁画の取り外し作業で用いた道具、複製陶板、高松塚古墳壁画の模写等が展示されています。いずれも文化財の保存や記録に関わるもので、本展覧会ではこの側面も皆さまにご覧いただきたいと思っています。


壁画の取り外し作業で用いた道具

複製陶板は、壁画取り外し前の高精細デジタル画像(フォトマップ)等の画像データ等にもとづくもので、漆喰の質感や、剥落しかけて浮き上がった漆喰の表現、下書きの際についた刻線等図像の細かな表現や色調が、実物さながらにうつされたものです。


壁画複製陶板

高松塚古墳の模写は、1972年の壁画発見から間もなく国により実施されたもので、前田青邨画伯監修の元、当時、第一線で活躍していた日本画家7名(平山郁夫、守屋多々志、月岡栄貴、近藤千尋、今井珠泉、蓮尾辰雄、若林卓の各氏)が分担し、制作されたものです。

また、本展覧会に関連して、館内の2か所で高精細デジタル画像等を利用したコンテンツをご紹介しています。東洋館地下のVRシアターでは、高精細デジタル画像やVR(ヴァーチャルリアリティ)を用いたVR作品「キトラ古墳」が上映されています。表慶館では、「飛鳥-キトラ2016-」が行われており、キトラ古墳に限らず飛鳥地域の歴史・文化の魅力等が分かりやすく紹介されています。「2016」とは、キトラ古墳周辺地区が国営公園として開園する予定の年度を指しています。この中の「キトラに触れる!」コーナーでは、肉眼ではみられない壁画の世界をサイエンスでみる工夫が凝らされています。

現在、皆さまに長い待ち時間をいただいている本展覧会ですが、私が思う理想的な見学の順序は、(1)VR作品「キトラ古墳」 → (2)特別展「キトラ古墳壁画」 → (3)「飛鳥-キトラ2016-」です。館内各所で繰り広げられる、様々な角度からのキトラ古墳・壁画の魅力を、ぜひご堪能ください!

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by 建石 徹(文化庁古墳壁画対策調査官) at 2014年05月01日 (木)