このページの本文へ移動

1089ブログ

博物館でお花見を(絵画の名品)

今年の春は遅く、4月になってもまだ梅が咲いています。
現代は、テレビによって全国共通の季節感が生み出されていますが、桜となると、人によって抱いているイメージにずれがあるかもしれません。
昔は、桜は入学式の花でしたが、最近では温暖化によって卒業式の花に変ってしまいました。今年の桜は、どんなイメージを記憶に残すのでしょうか。

私は、桜で有名な弘前に生まれました。
桜より一週間ほど早く梅が咲き、桃と桜が重なるように咲きだします。
北国は、春が一斉に訪れるのです。
それもゴールデンウイークに。
そのため、日本標準の季節感とは、ちょっとしたずれがあります。
2月に梅、3月に桜を季節の彩として展示作品の構成を考えるのですが、肌になじまない違和感がいつもあるのです。


桜は、人の気分を浮き立たせます。
江戸時代初期には浮世を描いた風俗画が流行しますが、どういうわけか、絵の中にはよく桜が咲いています。
祇園祭の描かれた舟木本「洛中洛外図屏風」でも、人々は、桜の枝を背にして踊っています。

 
重要文化財 洛中洛外図屏風(舟木本)(部分) 江戸時代・17世紀
(展示予定未定)


現在、本館10室で陳列中の「四条河原図屏風」(~2012年4月15日(日)展示)も、舟木本と同じく祇園社の周りには桜が咲き、人々が宴席を構えているのですが、同時に紅梅も咲いています。
由緒ある梅のようです。
この屏風は、細見美術館の「北野社頭遊楽図屏風」と本来は、一双をなしていました。
その屏風、北野社では、紅梅が咲き、満開の桜の下では、酒宴が催されています。
上品な梅。
親しみのある桜ということになるかもしれません。

出雲阿国が歌舞伎踊りをはじめたのは、慶長8年(1603)春、桜の頃でした。
歌舞伎おどりの流行が、「花下遊楽図」屏風」に取り入れられています。


国宝 花下遊楽図屏風(左隻) 狩野長信筆 江戸時代・17世紀
(~2012年4月15日(日)展示)


中国文化を背景とした中世の水墨画には梅がよく描かれ、夢の浮世を謳歌した安土桃山時代から江戸時代初期の絵画には桜が良く描かれています。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ博物館でお花見を

| 記事URL |

posted by 田沢裕賀(絵画・彫刻室長) at 2012年04月02日 (月)