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酒宴のうつわ

3月6日(火)から、本館14室において「酒宴のうつわ」と題し
当館所蔵の陶磁器の酒器を集めた特集陳列を行っています。(~5月13日(日))

酒器、とひとことで言っても、いくつかの種類があります。
今回は、お花見の季節に合わせて主に宴席で用いる徳利や銚子、酒呑、杯など
33件を集めて構成しました。
いずれの酒器も、用いられる場所や場面、席主や客の好みなどに応じて創意工夫がされ、
さまざまな意匠のものがあちこちの産地でつくられてきました。
ここでは、バラエティーに富んだ酒器から、いくつかをご紹介します。
(掲載の画像の作品は全て2012年5月13日(日)まで展示)


まずは、土(陶)の酒器
よく焼き締まった徳利は存在感があります。

(左)褐釉菊水文大徳利 志戸呂 江戸時代・万治3年(1660)
(中)黄瀬戸酒呑 美濃 安土桃山時代・16世紀 広田松繁氏寄贈
(右)自然釉徳利 備前 室町時代・16世紀 山梨謙蔵氏寄贈




次に、磁器の酒器から伊万里の染付のものなど4点。
伊万里焼の酒器は、コレクターのなかでも特に人気がありますが、
伊万里だけでも、これだけ多様な形があるのです(これはその一部にすぎません)
   
(左)黒地点斑文瓶 伊万里 江戸時代・17世紀 広田松繁氏寄贈
(中左)染付花卉図角徳利 伊万里 江戸時代・17世紀 横河民輔氏寄贈
(中右)瑠璃地金銀彩山水図徳利 伊万里 江戸時代・17世紀
(右)染付松竹梅文徳利 伊万里 江戸時代・17世紀



二つの銚子。
もとは漆や金属などでつくられた酒器を、やきもので表現しています。
 
(左)染付銹絵龍田川図銚子 京焼・御菩薩池 江戸時代・18世紀
(右)色絵花鳥文銚子 伊万里(古九谷五彩手) 江戸時代・17世紀



地方窯の徳利から、特にユニークな二つ。
讃窯の徳利は、別名「髭徳利」とも呼ばれ、ドイツに本歌があります。
鴨徳利は、囲炉裏の灰の中で燗をつけるために、通常の徳利が横に倒れたかたちをしています。
 
(左)褐釉人面貼付文徳利 讃窯 江戸時代・19世紀 小倉安之氏寄贈
(右)緑釉鴨徳利 小杉 江戸時代・19世紀



そして、中央のケースには、伊万里、景徳鎮、唐津を取り合わせてみました。
皆さんならどんな組み合わせの酒器を用いたいと思われるでしょうか?

(奥)色絵祥瑞文瓢形徳利 伊万里(祥瑞手) 江戸時代・17世紀
(点前左)古染付捻文杯 景徳鎮窯 中国 明時代・17世紀 広田松繁氏寄贈
(点前右)黄釉酒呑 唐津 江戸時代・17世紀 広田松繁氏寄贈



やきものは、日常生活と接した身近な美術工芸品です。
鑑賞者は、願わくば作品を手にとって、
掌中におさめたときの感じまでをも体験できることが望ましいのですが、
博物館ではそれは叶いません。


展示をするときは、やきものができるだけ生き生きとして見えるように、
いつも並べ方、置く位置などに工夫をするように心がけています。
今回も、先輩研究員のアドバイスを受けながら、自分なりに納得いくまで
何度も何度も何度も…置き直しました。
たとえば器は、向きを少しひねるだけでも、途端に表情が変わることがあります。
これはやきものという立体作品ならではの面白さ、奥深さだと思いますし、
何より「☆!(ピン!)」とくるポイントが見つかると、
実はこっそり小躍りしたくなるほど嬉しかったりします。


展示室でも、可能な限り(ほかの鑑賞者の方の妨げにならない限り)、
ぜひケースの横にもぐるっと回ってご覧になってみてください。
前から見ていただけでは見えなかった、思いがけない発見があるかも・・・しれません。


ゆるやかに描かれた鉄絵がユニークな朝鮮の瓶と杯

(左)鉄砂草花文瓶 朝鮮 朝鮮時代・17世紀
(右)絵刷毛目杯 朝鮮 朝鮮時代・15~16世紀 広田松繁氏寄贈



横から見てみると・・・

「☆!」 瓶の中の人が楽しく酒盛りしています♪

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 横山梓(特別展室) at 2012年03月15日 (木)