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書を楽しむ 第7回「拡大写真のススメ」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第7回です。

今回は、デジタルカメラを持って展示室を回ります。

トーハクの総合文化展では、多くの作品のカメラ撮影ができます。
!!注意!!
フラッシュを使用した撮影はできません!また三脚も使用不可です。
社寺や個人の方からお預かりしている作品のうち、撮影不可のものには、
キャプションに撮影禁止のマークが入っていますので、
確認してから、撮影してみましょう!


まず、本館2階の3室「仏教の美術」の作品を、撮影しました。


大般若経巻第一百卅八 鎌倉時代・宝治元年 (1247)
(~2012年2月5日(日)展示)


ピントが合っていません…。
展示室が暗い上にフラッシュ撮影、三脚使用は禁止! なので、むずかしいです。
でも、虫食いの穴が迫力満点で写っていると思いませんか?

次は、同じく3室「禅と水墨画」で、撮影。


偈頌 一休宗純筆 室町時代・15世紀
(~2012年2月5日(日)展示)


小さい字、大きい字、墨の濃淡があります。
一部を切り取って撮影しても、おもしろい画面になります。

5室「武士の装い」では、小さい作品ですが、かなりズームにしてみました。


切符 豊臣秀吉筆 安土桃山時代・天正6年(1578) 松永安左エ門氏寄贈 B-2431
(~2012年2月12日(日)展示)


これも少しピントが合いませんでしたが、墨のかすれているところが魅力的です。

さらに進んで、8室「書画の展開」では、たくさん撮影しました。

 
詩巻 松花堂昭乗筆 江戸時代・17世紀 (右)(左)画像の拡大
(~2012年2月12日(日)展示)


この詩巻は、松花堂昭乗(しょうかどう しょうじょう)が隷書、楷書、草書と、いろいろな書体で書いていますが、
左画像の中央「寂」の字は、「大師流」の書風で書かれています。
「大師流」とは、弘法大師・空海の書風から生まれたもので、
さいごのハネの部分がうねるように書いてあることが多いです。
その「寂」をさらに拡大すると(右画像)、文様のように見えてきませんか。


書状巻 近衛信尹筆 安土桃山時代・17世紀
(~2012年2月12日(日)展示)


近衞信尹の「馬」の字が見えます。
墨がかすれていますが、勢いのある字です。
画像では、料紙の質感まで感じられます。

 
東行記 烏丸光広筆 江戸時代・17世紀 (右)(左)画像の拡大
(~2012年2月12日(日)展示)


烏丸光広の富士山です!
薄い色の墨で、富士山がさらりと書いてあります。
そのすそ野を拡大撮影すると(右画像)、字がにじんでいます。
下絵の富士山が乾かないうちに書いたのでしょう。
風景に書が溶け込んでいます。

 
(右)詩書屏風 三井親和筆 江戸時代・安永9年(1780) 小荒井智恵・小荒井蓉子氏寄贈
(左)龍虎二大字 後陽成天皇筆 江戸時代・17世紀 太田松子氏寄贈
(~2012年2月12日(日)展示)


左画像は屏風です。
もともと字が大きいので、拡大するとかなり大きく撮影できます。
右画像も、大きい字の「龍虎」の「虎」。
うねるようにハネあげているのが、「大師流」です。
墨のかすれ具合が、拡大写真でよく見えます。

拡大写真を撮ると、デザイン画のようにも見えてくるのが、楽しいです。
ハガキに印刷して、絵ハガキを作ってみました。

 
作成した絵ハガキ

私はこんな風に写真を活用しています。

!!注意!!
画像の利用は、個人利用に限ります。
商用利用や公開に際しては別途手続きが必要です。

詳しくは、「画像の利用について」のページをご覧ください。

拡大写真には、眼では見えないものが写ります。
書の楽しみ方のひとつとして、拡大写真、いかがでしょうか?
ただ逆に、眼で見えても写真に写らないものもあります。
やっぱり本物を見て欲しいです。

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2012年01月19日 (木)