謹んで新春のお喜びを申し上げます。
皆様にとって幸多い年となりますようお祈り申し上げます。
はじめに、令和6年能登半島地震及び奥能登豪雨により被災され、いまだ復興途中にある方々に、心よりお見舞い申し上げるとともに、被災地の復興支援にご尽力されている方々に深く敬意を表します。
また今年は、阪神・淡路大震災の発生から30年であり、この間、被災地の復興にご尽力されてこられたすべての方々にも、改めて敬意を表します。
2025年の東京国立博物館は明日1月2日より、お正月恒例の企画、「博物館に初もうで」からはじまります。
毎年の干支にちなんだ特集では、「巳年」のヘビをテーマに「博物館に初もうで―ヘビ~なパワ~を巳(み)たいの蛇(じゃ)!―」を開催します。作品にみる多種多様なヘビの姿から、人間がヘビに見出してきたパワーを感じ取っていただければ幸いです。
また、ご好評をいただいております国宝「松林図屛風」の新春特別公開をはじめ、展示室の随所で、東博コレクションの名品、吉祥作品を展示して新年を寿(ことほ)ぎます。
コロナ禍以降昨年復活した1月2日、3日の新春イベントでは、人気の和太鼓や獅子舞、いけ花に加え、今年は新たに吟剣詩舞も披露します。
ぜひ、東博で日本のお正月をお楽しみください。
2025年のはじめの特別展は、1月21日からの開創1150年記念 特別展「旧嵯峨御所 大覚寺―百花繚乱 御所ゆかりの絵画―」です。京都 大覚寺内部を飾る障壁画はじめ、歴代天皇の書や密教美術の名品など、優れた寺宝の数々を一挙にご紹介します。
新年度になり4月22日からは、特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を開催します。「婦女人相十品・ポッピンを吹く娘」喜多川歌麿、「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」東洲斎写楽といった世界的芸術家とみなされる浮世絵師を世に出した、蔦屋重三郎のコンテンツビジネスの活動を通して、これら浮世絵をはじめ江戸の多彩な文化をご覧いただきます。
少し遡った3月25日からは、8K映像を駆使した没入体験で日本美術の歴史を振り返る、「イマーシブシアター 新ジャポニズム~縄文から浮世絵、そしてアニメへ~」を、4月22日からは、現代アーティスト、デザイナー、クリエイターが制作した現代の浮世絵で、現代から未来へ続く伝統の可能性をお示しする「浮世絵現代」を開催します。
夏になり7月19日からの特別展「江戸☆大奥」では、将軍の妻である御台所や側室、そこに仕える御殿女中たちで構成される「大奥」の知られざる世界を紹介します。楊州周延筆の錦絵シリーズ「千代田の大奥」のほか、初公開を含む豪華絢爛な衣装や道具、歴史資料など多彩な作品が勢ぞろい。春日局をはじめ歴代の御台所や側室の生涯にも迫りながら、大奥250年の隠された歴史を明かしていきます。
9月9日からは特別展「運慶 祈りの空間-興福寺北円堂」を開催し、ここでは鎌倉復興当時の北円堂内陣の再現を試みます。その中の国宝「弥勒如来坐像」は、令和6年度(2024)の修理を経て、約60年ぶりに東京で公開されるものです。運慶の最高傑作が織りなす空間を、存分にお楽しみください。
このほか、春には当館庭園の桜と東博コレクションに見る桜の競演を楽しむ「博物館でお花見を」、秋にはテーマに沿ったアジア地域の作品を推す「博物館でアジアの旅」を開催します。例年同様、趣向を凝らしたイベントもあわせて計画していますので、こちらもどうぞお楽しみにしてください。
さて、昨年11月、私たちは、“いにしえから宝物を創ってきた人々の想いを、いまを生きる力にする"という『東京国立博物館2038ビジョン』を発表し、このビジョンを以って、現在の本館がオープンして100周年となる2038年に向け、展示中心のミュージアムから「最先端ミュージアム」へとして成長し、世界をリードするミュージアムを目指すことを表明しました。そしてこれを推進するためのミッションステートメントを定め、4つのキーワードでロードマップを描きました。
おかげさまで東博は、国内外から多くのお客様にご来館いただき賑わいを見せています。2025年はこのビジョンのもと、さらに皆様に、博物館が新たな発見・学び・体験を提供する場となるべく活動して参ります。
本年も東京国立博物館をよろしくお願いいたします。
東京国立博物館長
藤原 誠
カテゴリ:news
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posted by 藤原誠(東京国立博物館長) at 2025年01月01日 (水)
ほほーい、ぼくトーハクくん! 2024年もおわりだほ。
こんにちは、ユリノキちゃんです。今年は秋が短かったからあっという間に年末になった気がするわね...。
カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん
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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2024年12月30日 (月)
「博物館に初もうで」ポスター
カテゴリ:news、催し物、博物館に初もうで、特集・特別公開
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posted by 宮尾美奈子(広報室) at 2024年12月26日 (木)
東洋館8室では、毎年秋恒例の名品展、特集「中国書画精華―宋・元時代の名品―」が開催中(~2024年12月22日〈日〉)です。
中国の書画は古来日本人に愛され、現在に至るまで多くの優品が大切に伝えられてきました。ただ、現代の私たちの目には少しとっつきづらい、どこを楽しめばよいかわからない、というジャンルでもあります。
ここでは、「見どころ紹介」と題して、いくつかの作品について、鑑賞のおすすめポイントを説明したいと思います。
1. 修理後初公開!表装にも注目!!
山水図軸 伝夏珪筆 南宋時代・13世紀 中国
山水図軸(風帯)
本作は2022年に修理を終えてから初めての公開になります。現在の表装は、公家の名門近衛家(このえけ)で仕立てられた可能性があり、風帯(ふうたい)と一文字(いちもんじ)には、紫に染められて金箔が貼られた、羅(ら)という織り方の最高級の裂(きれ)が、おそらく非常に貴重であったため、端切れをつなぎあわせた形で使われています。
また、風帯は通常本体に縫い付けられて、巻いた状態では折りたたむように収納されるものですが、本作では、裂がこれ以上いたむのを避けるため、取り外しができるようになっています。これを掛風帯(かけふうたい)といいます。
修理前は、不安定であったため、掛風帯を使用することができなかったのですが、修理を経て風帯を掛けた状態で展示できるようになりました。近衛家で愛された本来の姿をお楽しみください。
2. 鳥は何羽?
重要文化財 雪汀遊禽図軸 羅稚川筆 元時代・14世紀 中国
雪汀遊禽図軸(部分)
手前の木々は葉を落とし、枝先は蟹の爪のようにとがり、枝と幹がねじれ複雑にからみあっています。後ろには、川面と白く雪の積もった岸、そして山々が水平方向にどこまでも広がっていきます。
色彩のない荒涼たる空間のようですが、目を凝らすと、寒さの中に息づく生命のいろどりを見つけることができます。枝の上には、水色の長い尾をもつ山鵲(さんじゃく)のような鳥2羽、首と腹の白い鳥(コクマルガラスか)の群れが、寒さに羽毛をふくらませてとまり、水辺には橙色の鴨の群れが身を寄せています。
宋・元時代の画家たちは、このような墨と色彩の効果的な対比を得意としました。
3. 「金」、使ってます!
重要文化財 猿図軸 伝毛松筆 南宋時代・13世紀 中国
猿図軸(目)
南宋時代の絵画には、要所要所で、非常に洗練された金の使用が認められます。本作はその好例で、ふさふさとした毛を描く細い線には、墨や赤茶に加えて金泥(きんでい)が使われ、白目には絹の後ろから金箔あるいは金泥が施されています。これらにより、繊細にきらめく光を表現しているのです。
特に白目の部分は、肉眼では光を感じるだけで、なかなかはっきりと金の存在を確認できません。しかし顕微鏡で拡大してみると、絹糸の後ろにしっかりと詰まった金箔(金泥)の存在を見ることができます。
4. 高僧と能書の競演
重要文化財 禅院額字「釈迦宝殿」 無準師範筆 南宋時代・13世紀 中国
禅院額字「釈迦宝殿」(部分)
無準師範(ぶじゅんしばん)が円爾(えんに)に贈った一群の額字(がくじ)・牌字(はいじ)には、筆者を無準とするものと、能書の張即之(ちょうそくし)とするものの2種があります。
展示中の禅院額字「釈迦宝殿(しゃかほうでん)」は無準、同じく「旃檀林(せんだんりん)」は張の書です。ともに太く堂々とした書きぶりですが、線質や点画の構成などには違いがあります。無準はややニジミがあり、粘りのある重厚な線質。点画の太細(たいさい)や疎密(そみつ)など、構成にバランスを欠くところもありますが、かえってそれが厳しくもどこか温かさのある独特な雰囲気を醸(かも)しているようです。一方、張は重厚かつ鋭い線質。点画が整然と配され、揺るぎのない字姿をつくっています。南宋を代表する高僧と能書による迫力満点の書。ぜひ見比べながらご堪能ください。
5. 修理後初公開、過去から未来へ
傑山偈 古林清茂筆 元時代・泰定3年(1326) 中国
傑山偈(修理前)
本作は2022年10月から1年をかけて本格修理が実施されました。本紙には強い折れや汚れが多く見られ、亀裂(きれつ)等によって墨書の一部に剥落(はくらく)が生じていました(上図の5行目2・5・6字目「若・低・可」)。剥落が進行する前に、作品を解体してクリーニングや補修等の処置を行い、本紙と表装の状態は改善され、今後の保存活用に支障がない健全な状態となりました。修理後はまず収蔵庫内の安定した環境で1年ほど保管、経過観察をして、今回晴れてお披露目することとなりました。
修理に際しては、もとの軸木(じくぎ)に江戸時代・天明(てんめい)元年(1781)の修理時の墨書が確認されました。先人たちが過去から現在まで大切に伝えてきた本作は、今また未来へとつなぐ準備が整いました。
6. 篆書もスゴイ!
楷書玄妙観重脩三門記巻 趙孟頫筆 元時代・14世紀 中国(部分)
本紙の末には、1字分下げて4行にわたって署名が添えられます。ここに「趙孟頫書幷篆額」とあり、行楷書による本文と冒頭にある篆書(てんしょ)の題額はともに趙孟頫(ちょうもうふ)の書であることがわかります。
趙孟頫と言えば、書聖・王羲之(おうぎし)を規範とした行草書や、碑文を得意とした唐の能書、李邕(りよう)を素地とした、本作のような行楷書などで知られます。碑文という性格を意識したのか、本文は余白がよく整った、見やすく美しい字姿をしています。点画の配置とその間の余白(分間布白(ぶんかんふはく))は、文字の視認性に直結します。その点で、厳格な分間布白や左右対称の字形、均一に保つ線などを基本とする篆書では、その技量が試されます。本作の題額は、趙孟頫の篆書の技量の高さを示しています。
展示会場風景
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posted by 植松瑞希(絵画・彫刻室)、六人部克典(東洋室) at 2024年11月27日 (水)
開催中の挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」(12月8日(日)まで)は、来場者20万人を突破しました。
カテゴリ:「はにわ」
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posted by 小松亜希子(広報室) at 2024年11月26日 (火)