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1089ブログ

公式フィギュア「風神雷神図屏風」いよいよ発売!

待ちに待った名画立体化プロジェクトの第1弾です!
昨年来、着々と進められてきた名画立体化プロジェクトの一番手として、
当館の所蔵品のなかでも抜群の知名度を誇る尾形光琳筆の「風神雷神図屏風」が立体化されました。


重要文化財 風神雷神図屏風 尾形光琳筆
(2013年1月2日(水)~1月14日(月・祝) 本館7室にて展示予定)


この光琳作品は、伝統的な日本の絵画の特色が強くあらわれています。
日本の絵画は描かれた神仏や人物、生き物、そして山や木々などの自然が、線によって形があらわされて、どんどん単純化された結果、記号のようにあらわされます。
そこで描かれたものには、視覚的(網膜に映るもの)には立体感はありませんし、画面のなかで奥行きも感じられません。

古来、日本の絵画は中国から多くを学びながら独自の発展を遂げました。
西洋絵画も同じ道を歩んだといえますが、中国絵画の本流は、目に映る世界をありのまま描こうとします。
あたかも描かれたものに、厚みや重さが感じられるようなイリュージョンをあらわして、迫真のリアリズムで世界を描きます。
しかし、日本の絵画の場合は、あくまで2次元の世界です。このような日本の絵画の表現方法は、現代の日本で制作される多くのマンガやアニメーションと同じです。

マンガの場合、ストーリーが素晴らしいと、その物語世界のなかに引き込まれて、人物に影がなく、立体感もなくとも、その人物たちに感情移入ができてしまいます。
そうして物語を楽しみ、映像、画像を見ている私たちには、物語の世界があたかも実在しているように実感してしまいます。言いかえると視覚的にではなく、感情的に3次元化してみているわけです。

しかし現代では、かつて描かれた絵画をみる場合、テーマや主題がほとんどわからなくなっています。
描かれた当時、「源氏物語」や「伊勢物語」といった文学や中国の歴史的な出来事などは、生活のなかで身近なものでしたので、すぐに感情移入できたでしょう。
線と色だけであらわされたこの光琳の絵画も、目から入った映像が、かつての人々には脳内で変換されて立体視できていたに違いありません。
現在、展示されている日本の絵画をみて、立体視されている方々は、日本の古典文芸をよくご存知であるために、無意識に脳内変換しているのでしょう。

しかし、日本の絵画をみる上で、その実感を得るためにはたくさんの教養が必要で、多くの約束事を学ぶ必要があります。それはなかなかできることではありません。
そこで、今回の立体化プロジェクトによって、かつての日本の人々が絵画を目にしたとき、どんな光景が目に映っていたのかを感じてもらいたいと思ったのが、この企画のはじまりでした。

チョコエッグで食玩の世界を席巻した海洋堂は、世界名作劇場シリーズなどの食玩フィギュアでその名をさらに高めたとき、筆者は2次元(マンガやアニメーション)が3次元化されるのを目の当たりにしたのです。
そこでは、「アルプスの少女ハイジ」や「みなしごハッチ」といった作品に本来なかった場面が立体化されるなど、読者、視聴者である自分が、頭のなかで思い描いていたシーンが表現されていました。まさしく今回の名画立体化プロジェクトそのものが現実化していたのです。

今回の光琳絵画の立体化にあたって、造形総指揮の竹谷隆之氏は、光琳の世界を文字通り、現実化されました。サンプルで目にした幽かな明かりで照らされた風神雷神像は、まさしく作品を前にしていつも頭に浮かべる作品世界でした。


完成フィギュア


微かな光に照らされた風神雷神フィギュア

当初、筆者が書いた海洋堂へのラブレターのような企画書では、さらに多くの東京国立博物館の名画を提案しています。
今後も、海洋堂との競演によって、東京国立博物館の名画の世界がさらに広がっていくことでしょう。


ワンダーフェスティバル 2012[夏](2012年7月29日 幕張メッセ国際展示場)での
(左から)造形総指揮・竹谷隆之氏、宮脇修一海洋堂代表取締役(センム)、筆者。

http://www.ustream.tv/channel/wf-kaiyodo#/recorded/24324413 (Ustreamのサイトへリンクします)

発売日 : 2012年9月15日(土)9:30~
商品名 : 東京国立博物館公式フィギュア 名画立体プロジェクト「風神」「雷神」
高 さ : 約120mm(台座含む)
価 格 : 各3,990円(税込)
販売場所 : 本館地下ミュージアムショップ
お問合せ : 東京国立博物館 ミュージアムショップ 電話:03-3822-0088



販売方法について
(1) 販売初日(2012年9月15日(土)9:30~)の販売方法
「風神」「雷神」ともに各10個までご購入が可能です。
ご購入にあたり当日の観覧券、または友の会・パスポート等をご提示ください(販売初日のみ)。

(2) 2012年9月16(日)以降の販売について
ご購入限定数は、初日販売終了後の商品在庫状況により変更させていただく場合がございますので、当日店頭にておたずねください。
在庫を十分に用意しておりますが、万が一品切れの際はご容赦ください。

(3) その他
・お電話等による取り置きは行っておりません。
・発売開始当初における通信販売は行っておりません(通信販売の開始時期は未定)。
・友の会、賛助会割引対象商品です。

 

カテゴリ:news

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posted by 松嶋雅人(特別展室長) at 2012年09月15日 (土)

 

特別展「青山杉雨の眼と書」 入場者3万3千人達成

特別展「青山杉雨の眼と書」は、2012年8月28日(火)午後、3万3千人目のお客様をお迎えいたしました。(あおやま「さん」う、ということで、「3」万「3」千人のお祝いです!)
これまでご来場いただいたお客様に、心より感謝申し上げます。

3万3千人目のお客様は、千葉県よりお越しの諏訪林郁子さんです。
東京国立博物館長 銭谷眞美より展覧会図録を、
青山杉雨のご長男でいらっしゃる青山慶示氏より、杉雨作品のレプリカを贈呈いたしました。

青山展 3万3千人セレモニー
右から、銭谷眞美館長、青山慶示氏、諏訪林郁子さん、島谷弘幸副館長
2012年8月28日(火) 東京国立博物館平成館にて


諏訪林さんはご自身も書道をされていらっしゃるとのこと。
「自分の作品を家の中に飾っていますが、一番良い所にこのレプリカを置きます。これから展覧会をみて、自分の作品制作に反映できたら嬉しいです」とお話いただきました。

特別展「青山杉雨の眼と書」の会期はいよいよあと2週間、9月9日(日)で閉幕となります。
昭和を代表する書家、青山杉雨の表情豊かな作品の数々をぜひご覧ください。
皆様のご来館を心よりお待ちしております。
 

カテゴリ:news2012年度の特別展

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posted by 広報室 at 2012年08月28日 (火)

 

特別展「青山杉雨の眼と書」のスペシャルイベント開催!

みなさんこんにちは!ユリノキちゃんです。さっそくですが、緊急ニュースを発表します!

なんだほ?早く教えてほしいほー。

特別展「青山杉雨の眼と書」の開催を記念して
8月13日(月)、14日(火)にワークショップ「親子書道教室」
8月16日(木)には書のデモンストレーションを行うことになりました!

ワークショップ「親子書道教室」は、うちわに文字を書いてオリジナルうちわを作ります。
書家の先生が教えてくださるし、本番の前に半紙で練習するから、とても素敵なものができると思うの。
お道具は会場で準備しているので、持っていなくても大丈夫。
完成したうちわと書道道具の一式は、お土産としておうちに持ちかえることができるのよ!
各日20組限定、申込締切は8月7日(火)なので、早めにチェックしてね!

書のデモンストレーションは、当日、どなたでも、参加できるのよ。
 8月16日(木)14時に、特別展「青山杉雨の眼と書」を開催中の平成館の1階、ラウンジに来てね。
ゲストとして囲碁棋士(二十四世本因坊秀芳(石田芳夫9段)、小川誠子6段)もいらっしゃるの。
作品をじっくり見るのも好きだけど、作品が誕生する瞬間が見られるなんて感激!
しかも完成した書は、イベントにご参加いただいた方へのプレゼントにされるんですって。私も欲しいなぁ・・・

 ほー!プレゼントいっぱいだほ。

 ね、みなさんにいち早くお知らせすべき重大ニュースでしょう?

 ユリノキちゃんは、書道が特技だから、とっても楽しそうだほ。

もちろん!私みたいに「書道が大好き」っていう人はもちろん、
 もっとたくさんの人に、新しく書の魅力を知ってもらえるとうれしいな。
夏休みの自由研究にもぴったりね!
ぜひ、特別展「青山杉雨の眼と書」の展示と一緒にお楽しみくださいね。

 待ってるほー!

 

カテゴリ:news2012年度の特別展

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posted by ユリノキちゃん&トーハクくん at 2012年08月02日 (木)

 

140周年スタンプラリー もう参加されましたか?

トーハク140周年パンフレットのスタンプラリーの記念品の引換が始まっています。
スタンプを6つ集めた方に、トーハクオリジナル140周年記念グッズを差し上げています。(先着3000名様)

記念品は「松林図屏風」をデザインしたメモ帳とトーハクくんかユリノキちゃんのチャーム付ボールペンです。

毎月替わるスタンプを楽しみにしてくださっている方もいらっしゃると思います。
すべてトーハクの所蔵作品をデザインしました。

スタンプラリーは2013年3月まで。
パンフレットは本館、平成館のインフォメーションなどで配布中。
記念品の引換は、本館インフォメーションまでお越しくださいませ。


140周年スタンプラリー記念品
トーハクくんとユリノキちゃん、ボールペンはどちらか一つを選べます


関連リンク
東京国立博物館140周年「ブンカのちからにありがとう」キャンペーンページ

1089ブログ 140周年 スタンプラリーで、オリジナルグッズをプレゼント!

 

カテゴリ:newsトーハク140周年

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posted by 小林牧(広報室長) at 2012年07月30日 (月)

 

博物館総長 森鷗外の特集陳列が始まりました

特集陳列 歴史資料 生誕150年 帝室博物館総長 森鷗外 (本館16室、2012年7月18日(水)~9月9日(日) )が始まりました。

「え? なんで森鷗外?!」と思った方も、「ああ! あの新聞記事の!」と思った方もいらっしゃると思います。

実は、森鷗外は大正6年(1917)~11年(1922)、その晩年の4年半、帝室博物館(トーハクの前身)の総長の職にありました。
今回の特集陳列では、鷗外の総長時代の足跡を丁寧にたどっています。
展示されているものの大半は地味な資料ですが、鷗外が博物館でどんな時間を過ごしたのか、それらを通してさまざまなことがわかってきました。

そして、この特集で展示されている資料について、7月3日の読売新聞(夕刊)の一面トップで報じられました。
鷗外の未完の論文の自筆原稿が発見されたという記事です。
翌日には、NHKニュースで、また毎日、日経、東京、産経など他紙でも紹介されましたので、それらの記事を読んだ方もおられるのではないでしょうか。

新発見!  鷗外の未完の自筆論文
論文のタイトルは「上野公園ノ法律上ノ性質」。
博物館用箋10枚にペンで書かれたもので、和とじの製本がされています。
冊子には表題もなく、他の資料とともに綴じられていました。
この論文は冊子の冒頭に綴じられており、上記のタイトルと大正9年という年紀があります。
当時、博物館を含む上野公園は、帝室(皇室)の管理下にありました。
これを、政府に移管しようという動きがあり、博物館としてどう対応するかが大きな問題になっていたようです。
鷗外は、この論文で公共の公園の法的な位置づけやその歴史に触れながら、帝室の所管、つまりは皇室の私有財産のままでも公共の公園たりうることを説いています。
実はこの論文に鷗外の署名はありません。なのに、なぜ、鷗外の自筆論文と判断したのか?

今回の特集陳列を実施するにあたって、展示を担当する田良島哲調査研究課長は、鷗外在任期間中の館史資料を片端から読んでいったそうです。
そのなかで見つけたこの冊子、最初はまさか鷗外その人の手になるものとは思っていなかったようです。
しかし、内容を読んでみると、整然とした論理構成や「吾人ハ多クノ学者ニ反対シテ」といった断定的かつ論争的な文章から、鷗外の手稿ではないかと思ったそうです。
さらに、当時の鷗外の日記、書簡を調べると、公園の問題に関する記述があること、また筆跡に照らしても鷗外に違いないという結論に至りました。


上野公園ノ法律上ノ性質 大正9年(1920)
上野公園ノ法律上ノ性質 大正9年(1920)
上野公園ノ法律上ノ性質 大正9年(1920)
使われている用箋には博物館の名前が印刷されています。
書いたのは館内の人物に限定されます。
この用箋も鷗外自筆とするひとつの手がかりとなりました。

総長・森鷗外
今回は、ほかにも、鷗外が真摯に館の運営に関わっていたことを示す資料を展示しています。
たとえば、鷗外は各担当者に任されていた展示替の内容を必ず総長の伺いを経るように新たな規定を定めました。
鷗外の花押の残るその決裁書や、鷗外自らがこつこつとまとめた博物館所蔵の書物の解題も展示されます。

例規録 大正八~十一年 大正8~11年
例規録 大正八~十一年 大正8~11年
総長の文字の下に、鷗外の花押があります。

今年は、鷗外生誕150年にあたる年です。

鷗外は博物館総長在任のまま、この世を去りました。
最晩年の鷗外の博物館に対する思いをぜひ、感じていただければと思います。

 

お知らせ
台東区立書道博物館「 この人、どんな字?-近代日本の文豪たち- 」(2012年6月28日(木)~9月19日(水))でも、
森鷗外自筆の書簡などが展示されています。あわせてお楽しみください。

 

カテゴリ:研究員のイチオシnews

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posted by 小林牧(広報室長) at 2012年07月23日 (月)