書を見るのはとても楽しいです。
より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第2回です。
今回は、線を見てみましょう。
トーハクの本館1、3、8室で展示している書のほとんどは、筆に墨をつけて書かれたものです。
筆が太ければ太い線になり、筆が細ければ細い線になります。
同じ筆で書いても、いろいろな線が生まれます。
私は、本館8室の「聚楽第行幸和歌巻(じゅらくだいぎょうこうわかかん)」の中に、いろいろな線を見つけました。
(画像4枚全て)聚楽第行幸和歌巻(部分) 烏丸光広筆 江戸時代・17世紀 (~2011年11月6日(日)展示)
まず、最初に書かれた文字。
これは「行幸(ぎょうこう)」と読みます。
「行」の線は、たっぷりと太くて、勢いがあります。
次は、おもしろい線を発見。
一つの文字の中に、線が2本に見えるところと1本に見えるところがあります。
墨が足りなくなって、筆の先が割れてしまったのでしょうか?
割れた筆を巧みに使っています。
また、真ん中でたてにひかれた線、ゆったりとして、ながーくて、面白いです。
そして、これ。
右の1行は色が濃いですが、2行目から薄い線になります。
変化させるために、墨に水を加えたのでしょうか?
それとも、墨を少ししか擦らなかったのでしょうか?
最初に見たのと同じ字、「行」の字も見えます。
今度も勢いがありますか?
これらは全部、「聚楽第行幸和歌巻」からとった拡大写真です。
太くてたっぷりした線、
細くて二重になった線、
薄い線、濃い線、
勢いのある線、ゆっくりした線。
あらためて全体を見てみてください。
いろんな線がひとつの作品の中におさまって、また美しい「調和」が生まれています。
「聚楽第行幸和歌巻」は、江戸時代、烏丸光広(からすまるみつひろ、1579~1638)が書いたものです。
2011年11月6日(日)まで、本館8室で展示しています。
面白い線をぜひ見つけてみてください。
カテゴリ:書跡
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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2011年10月28日 (金)
書を見るのはとても楽しいです。
私は、書道教室に通ってもぜんぜん楽しめずに上手にならなかった、ごく普通の日本人です。
それが、いつのまにか書の魅力に取り憑かれ、書(字)を見て感激したり、癒されたりしています。
みなさんも、親しい人の字ならば、だれの字なのかわかるでしょう。
また、魅力的な手書きの字に、思わず惹きつけられませんか?
より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズをはじめます。
第1回目は、書の作品から、自分の名前を探してみましょう。
トーハクの総合文化展(平常展)では主に、本館の1室、3室、8室に日本の書の作品が展示されています。
自分の名前が見つかる確率が高いのは、1室から3室の最初に展示されている古写経です。
(左右ともに)紺紙金字無量義経(平基親願経)(部分) 平安時代・治承2年(1178) (~2011年10月30日(日)展示 )
小林さん、大崎さん、王子さん、長井さん。
みつかりましたか?
8室では個性的な書風の字が見つかるかもしれません。
(左右ともに)和歌屏風(部分) 近衛信尹筆 安土桃山時代・17世紀(~2011年11月6日(日)展示)
玉田さん、露崎さん いかがですか?
3室の「関戸本和漢朗詠集切」の中に、私の名前、「えみ」の「み」をたくさん見つけました。
(左右および以下画像3枚全て)関戸本和漢朗詠集切(部分) 源兼行筆 平安時代・11世紀
(~2011年10月30日(日)展示 )
でも、この「み」はもう一つです。
次の「み」は、小さめです。
この「み」が、カッコいいです!スッキリした形が私の好みです。
この1枚の中に、いろいろな「み」があります。
ときには小さく、ときにはイマヒトツでも、全体として見たときのバランスがいいです。
この作品はとくに『和漢朗詠集』なので、「和歌」(仮名)も「漢詩」(漢字)もありますが、その仮名と漢字の「調和が美しい」と解説にもよく書かれます。
この「調和」(バランス)の意味がじつはよくわかりませんでした…。
「調和」については、また別の回に考えましょう。
今回は、自分の名前を探してみました。
いい!と思った自分の名前の文字があったら、次に書くときに使ってみましょう。
さいごに必ず、作品の名称と解説の確認も忘れずに。
「関戸本和漢朗詠集切」は、平安時代に源兼行(活動確認期:1023~74)が書いたもので、愛知の関戸家が持っていたため「関戸本」と呼ばれます。
2011年10月30日(日)まで、本館3室(宮廷の美術)で展示しています。
ぜひ見てください。
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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2011年10月15日 (土)