特集「親と子のギャラリー 尾・しっぽ」みどころ(1) 三館園のコラボ展示! 裏側ストーリー
こんにちは。教育講座室の横山です。
現在、平成館企画展示室では特集展示「親と子のギャラリー 尾・しっぽ」を開催中です(2023年6月4日まで)。
平成館企画展示室入口の様子
なかを覗くと、東博の作品と一緒に、ちょっと珍しい展示品が…
え? これは何?
きゃ! これは誰?
これらはいずれも、恩賜上野動物園(動物園)や国立科学博物館(科博)からの借用品で、この展示にあわせて特別に出品をしていただいたものです。
そもそものお話しになりますが、この展示は、動物園、科博との合同で開催してきた「上野の山で動物めぐり」というイベントの一環です。
毎年三館園で動物に関する共通のテーマを設定して各園館をめぐるツアーを実施し(注)、当館ではそれに関連した館蔵品をご紹介しています。
合同企画自体は2007年に始まり、今年が16回目となるロングランイベントです。
企画の誕生秘話、過去の内容など詳細については、かつての本展担当者(現デザイン室主任研究員・神辺知加)によるYouTube動画がありますので、ぜひそちらをぜひご覧ください。
【オンライン月例講演会】6月(2021)「『上野の山で動物めぐり』の裏側をめぐる」神辺研究員(デザイン室)を見る
(注)以前はツアー形式でしたが、コロナ禍となった2021年度からはオンラインの形式となっています
さて、今回のテーマ(「尾・しっぽ」)は、昨年の夏ごろに三館園の担当者の打ち合わせで決定しました。
テーマ設定は、毎年悩ましくも肝心な、この企画の最初の重要課題です。
人気の動物、面白い動物をぜひ取り上げたいところですが、それが必ずしも当館の所蔵品とうまく折り合い、特集展示を組めるとは限りません。
上野といえばやはりパンダ! といきたいところですが、残念ながら当館の作品でパンダ特集をするのは難しい…といったことがあります。
そうした理由から、近年は特定の動物にとらわれず、「ツノ」「うごき」「翼と羽」といった、動物の部位や動作に注目するテーマとして、話題にする動物の種類も多様に、横断的に取り上げるようにしてきました。
こうしてあれこれと議論しながら新たに決まったのが、「尾・しっぽ」です。
私たち人間にはない特別な部位だからこそ、そこに注目したらきっと面白い発見があるのではないか。そんな意見でまとまりました。
テーマが決まると、話題も一気に広がります。
科博の研究者・川田伸一郎さん(動物研究部 脊椎動物研究グループ主幹)からは、こんな発言がありました。
「一般的には、しっぽの先まで骨がつながっているっていうイメージが意外と少ないんですよね。」
動物園の解説員・小泉祐里さんからは、
「しっぽの役割にも、いろいろなものがありますね。虫を払う、バランスをとる、つかむ、威嚇する…。クモザルはしっぽが『第五の手足』のような動きをします。」
これを受けて、当館も、
「龍のような空想上の動物の尾は、博物館ならではトピックスとして面白い見せ方ができるかもしれません。」
といった具合で、各専門の視点からそれぞれの見方が提示され、打ち合わせはいつしかレクチャーのような充実した時間となって、一同企画への熱がこもっていきました。
というわけで、冒頭にご紹介した標本たちは、こうした打ち合わせ内容を経て、当館に展示される運びとなりました。
東博館蔵品だけではなかなか伝わりにくい、尾(しっぽ)の機能や役割について、ぜひ注目してもらう機会にしたいと考えています。
あらためて展示室でじっくり注目すると、骨格標本からは、クモザルのしっぽは確かに先端まで小さな骨がつながっていること、さらに骨はやや平たい形で、木の枝につかまりやすくなっていることがわかります。
骨格標本(クモザル) しっぽの部分
また実物標本のほうでは、クモザルの尾の外側には毛が生えているのに内側には毛はなく、すべりどめのような機能をもっていることも見えてきます。
動物実物標本(クモザル) しっぽの先
こうした標本を間近で見比べられることはなかなかないと思います。
ぜひこの機会に、東博の展示室でご覧ください。
(みどころ(2) 担当室員が選ぶおすすめ作品 に続く…)
| 記事URL |
posted by 横山梓(教育講座室) at 2023年05月23日 (火)