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1089ブログ

ようこそ、美しき混沌へ─本館18室「近代の美術」工芸の見どころ─

4月15日、本館18室が「近代の美術」の展示室として新装開展し、二週間になろうとしています。もうご覧いただけたでしょうか。
近代の絵画、彫刻と、工芸とが18室、19室という二つの展示室に展示されていたものが、今回のリニューアルで久々に絵画、彫刻、工芸すべての分野が18室というひとつの部屋に集まり、日本の近代美術の全貌を見ることができる部屋となりました。

18室全景
18室全景

全部一緒ということは
絵画に日本画と洋画があり、彫刻にも伝統の木彫や新しいブロンズがある。そして工芸では江戸時代以来の技と、西洋からの影響を受けた新たな動きが混在する。工芸の中には絵画となろうとするものまで現れる。これこそまさに日本の近代美術が体験した混沌なのであります。

会場で
入ってすぐにあるのが仏師の流れをひく木彫の大家高村光雲の「老猿」。鷲が飛び去った先を睨む姿がそこに。右手の長い壁付きケースには、軸装や屏風の日本画とともに額装された洋画が展示されています。「老猿」の先、左の壁沿いには平櫛田中の木彫「木によりて」。そして展示室中央には熊、鷲、兎、鳳凰、鯉が。彫刻家、工芸家による金工、陶磁作品の競演。



その先にすくっと立つのが、口縁に向かって大きく広がる大瓶。その伸びやかな姿全体を使って菖蒲が描かれる。これがあの蟹を張り付けた脚付鉢を作った帝室技芸員宮川香山の作品であることの驚き。

左手壁沿いのケースには、額装の作品が並ぶのですが、西村荘一郎の作品は「萩蝶木画額」。色彩の異なる木を組み合わせて萩と蝶を描くもの。加納夏雄の「月に雁図額」、三浦乾也の「鵞鳥図嵌入額」とまさに絵画であるかのような工芸の数々。



そして立体造形として力感溢れる関沢卯一の「宝相華唐草文花瓶」があり、その先の大きなケースには、巨大な工芸が。



横山孝茂・横山弥左衛門の合作による「頼光大江山入図大花瓶」の一対はウィーン博覧会事務局から引き継いだ作品。1873年のウィーン万国博覧会出品にあたり、シーボルトから「大きなものを。一対で」というアドバイスを体現した作品は、大きさに感動したらば、すぐさま近くによって、その細密なる装飾をご覧下さい。「よくぞ、ここまで。どうして…」

 
頼光大江山入図大花瓶 横山孝茂・横山弥左衛門作 明治5年(1872) ウィーン万国博覧会事務局(2014年8月17日(日)まで展示予定)

竹内忠兵衛・初代川本桝吉の合作による「七宝花鳥文大壺」もまた一対の大作でありますが、今回はその大きさにより一点のみの展示です。そして七代錦光山宗兵衛の「色絵金襴手双鳳文飾壺」は京薩摩の到達点というべき技巧の粋を尽くしたもの。

明治初期から大正、昭和にかけての工芸が、その近代の混沌の世界の中で輝きを放っています。同僚が「凄いですね、近代工芸は。初めて見ました。」と言ってくれました。本当はすべて今までも展示していた作品なのですが…。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ展示環境・たてもの

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posted by 伊藤嘉章(学芸企画部長) at 2014年04月26日 (土)