このページの本文へ移動

1089ブログ

特別展「京都」 祝・20万人と夜間開館のお知らせ

祝・20万人!

特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」(12月1日(日)まで、平成館)は、
11月19日(火)、20万人目のお客様をお迎えしました。
連日たくさんのお客様にご来場いただいておりますこと、心から御礼申し上げます。

20万人目のお客様は、東京都世田谷区からお越しの大宝ひとみ(25)さんです。
ご親戚である城野京子(66)さんとご来場いただきました。
東京国立博物館長 銭谷眞美より、記念品として本展図録と洛中洛外図舟木本のミニフレームを贈呈いたしました。


京都展20万人のお客様

大宝さんと銭谷眞美館長
11月19日(火)東京国立博物館 平成館エントランスにて


デザインを学んでいる大宝さんは、
「古い美術品には今の時代にはない感性があり、色々なことを感じることができます。
今回は4Kの迫力ある映像も楽しみです。」
と、笑顔で展示会場に向かわれました。


カウントダウン企画 特別夜間開館

京都展もいよいよ残すところあと12日。カウントダウンに突入です!
1人でも多くのお客様に、少しでもゆったりと展示をお楽しみいただきたく、
通常の夜間開館日のほかにも夜間延長開館を実施することになりました。

11月22日(金)、23日(土)、24日(日)の週末と、
27日(水)~12月1日(日)のラスト5日間、京都展は夜8時まであいています。
お仕事や学校のお帰りに、是非お立ち寄りくださいませ。

なお、通常の夜間開館日22日(金)と29日(金)を除いて、時間延長は特別展「京都
―洛中洛外図と障壁画の美」のみとなります。
総合文化展及び「上海博物館 中国絵画の至宝」展は17時に終了いたしますので、
くれぐれもご注意ください。

さらに、27日(水)からは、平成館2階の京都展グッズのショップで3,000円以上お買い
上げの方先着1000名様に、10月17日に行われた「洛中洛外図 舟木本」をモチーフ
にした3Dプロジェクションマッピングを手の平で楽しめる「ハコビジョン -東京国立博物館
『KARAKURI』- 」(2014年1月発売予定)のプロトタイプをプレゼント。
(※お買い上げ対象は、京都展グッズショップの商品です。東京国立博物館のミュージア
ムグッズは含まれません)

ハコビジョンについてはこちら

プレゼントは予定数量に達し次第終了とさせていただきます。
皆様のご来場お待ちしています。
 

カテゴリ:news2013年度の特別展

| 記事URL |

posted by 小林牧(広報室長) at 2013年11月19日 (火)

 

清時代の書─碑学派─ 碑学派の祖・鄧石如、そして隆盛期

今回は、先の「清時代の書─碑学派─ 勃興期@トーハク」のバトンを受けて、碑学派の隆盛期についてお話ししようと思います。その前に、碑学派の立役者であり、今年生誕270年を迎えた鄧石如(とうせきじょ、1743~1805)について触れておきましょう。

湯禄名「鄧石如像軸」
鄧石如像軸 湯禄名筆 中国  清時代・同治3年(1864) 個人蔵    
台東区立書道博物館にて展示中)

中国の書の歴史は、官僚たちによって作られてきました。勃興期のブログにも登場した翁方綱(おうほうこう)や阮元(げんげん)、李宗瀚(りそうかん)たちも、超エリート官僚です。しかし鄧石如は、貧しい家の生まれでした。父に書や篆刻の手ほどきを受け、若い頃から各地を放浪し、売字売印の生活を送りながら糊口をしのいでいました。その才能を見抜いた名士たちは、鄧石如のために衣食や紙墨などを提供したり、豊富な収蔵品を自由に見せたりと、鄧石如を全面的に支援します。鄧石如もそれに応えるべく、当時ようやく脚光を浴びつつあった古碑の臨摸を通して切磋琢磨し、篆書や隷書の臨書を何百回と繰り返すことで、熟練した技法を身につけました。そして、王羲之の書とは全く異なる視点から、雄渾で格調高い書風を創出したのです。古典に基づいた新たなスタイルの篆書や隷書は、鄧石如によって打ち立てられたといっても過言ではありません。事実、後の碑学派の書は、鄧石如の書風を基盤として開花していきました。在野の売芸家だった鄧石如が“碑学派の祖”と称えられるゆえんです。

鄧石如「篆書白氏草堂記六屛」と、鄧石如「隷書登黄鶴楼和畢制府韻詩軸」
左:篆書白氏草堂記六屏  鄧石如筆 中国 清時代・嘉慶9年(1804)  個人蔵(平成館企画展示室で展示中)
右:隷書登黄鶴楼和畢制府韻詩軸 鄧石如筆 中国 清時代・乾隆57年(1792)  京都国立博物館蔵(
台東区立書道博物館にて展示中)


鄧石如の偉業は、包世臣(ほうせいしん、1775~1855)を通じて、呉熙載(ごきさい、1799~1870)に受け継がれ、やがて趙之謙(ちょうしけん、1829~1884)、呉昌碩(ごしょうせき、1844~1927)へと継承されて、碑学派は全盛時代を迎えます。

包世臣は、多くの人の書法を研究していましたが、その中で最も影響を受けたのが鄧石如でした。包世臣が鄧石如と会ったのはわずか2回でしたが、晩年の鄧石如の書は最高の境地にあり、包世臣もまた鄧石如の指導を受け入れられるだけの素地が十分にできていました。包世臣は、斬新で個性豊かな鄧石如の書法を吸収し、その教えを呉煕載に伝えます。
呉熙載は10代の後半に包世臣と出会い、弟子入りしました。呉熙載は包世臣を深く尊敬し、師の方法論を順守します。包世臣は持てる知識と技の全てを、鋭敏な頭脳を持つ呉熙載に授けました。草書や行書、楷書については、包世臣自身の書風を伝え、篆書と隷書については、鄧石如の書を学ばせました。


包世臣「臨孝女曹娥碑冊」 呉熙載「楷書淮南子主術訓横披」
左:臨孝女曹娥碑冊 包世臣筆 中国 清時代・18~19世紀 東京国立博物館蔵(高島菊次郎氏寄贈
右:楷書淮南子主術訓横披 呉熙載筆 中国 清時代・19世紀 個人蔵
(いずれも台東区立書道博物館にて展示中)

この2つの楷書作品をみると、包世臣の書風を、呉熙載が忠実に学んでいることがよくわかりますね。

呉煕載も鄧石如と同様、官僚となることなく、民間人として生涯を全うしました。書画篆刻はもとより、書籍の勘校、筆耕、棗刻(そうこく)などに従事し、清貧な一生であったといいます。
呉熙載の篆書や隷書は、鄧石如の書法をベースとした一つの典型をつくり、鄧石如よりも軽妙洒脱な、都会的な雰囲気の書風を築き上げました。

 
篆書崔子玉座右銘四屛 呉熙載筆 中国 清時代・咸豊6年(1856) 個人蔵



隷書文語横披 呉熙載筆 中国 清時代(19世紀) 個人蔵
(いずれも台東区立書道博物館にて展示中)


呉熙載の上品で華やかな篆書や隷書は、碑学派の隆盛をさらに推し進めることとなります。

さて、前述の包世臣ですが、彼は、阮元の著『南北書派論』、『北碑南帖論』という、石碑の拓本に価値を求めた説を継承し、それをさらに発展させた形で石碑の理論的研究を進める必要性を『芸舟双楫(げいしゅうそうしゅう)』で説きました。包世臣は書表現の理想を「気満(きまん)」に求め、それを「逆入平出(ぎゃくにゅうへいしゅつ)」という用筆法をもって具体的に示したのです。この用筆法は、北碑(ほくひ)の表現技法として実に斬新なものでした。阮元、包世臣による石碑重視、とりわけ北碑尊重の唱導が清朝後期の書壇に与えた影響は計り知れず、碑学派においては北碑を重視する傾向が強くなります。
こうした理論が先行した雰囲気の中で、今度は趙之謙のように、北碑派の主張を実践的に展開する者が現れました。趙之謙は、北魏の石刻を基とし、包世臣の気満の理想を実現すべく逆入平出の法を改良し、そこから全く新しい表現形態を樹立しました。


楷書斉民要術八屛 趙之謙筆 中国 清時代・同治8年(1869)頃  個人蔵平成館企画展示室で展示中)
趙之謙のこの独自のスタイルこそが、後に「北魏書」といわれているものです。


清朝碑学派の掉尾を飾る大御所といえば、やはり呉昌碩でしょう。呉昌碩は、金文(きんぶん)や石鼓文(せっこぶん)など、古代文字の要素をとり込んだ書風が顕著です。


臨石鼓文軸 呉昌碩筆 中華民国・民国14年(1925) 東京国立博物館蔵(林宗毅氏寄贈)
(平成館企画展示室で展示中)


この篆書作品はまさにその典型であり、彼は秦時代の小篆(しょうてん)よりも古い、紀元前5~前4世紀頃の石鼓文を自家薬籠中(じかやくろうちゅう)のものとし、一家を成しました。

こうして清時代も末期になると、北碑からさらに時代を遡った殷、周、秦時代にまで書制作の資料が広く求められるようになり、書の表現は多様化しました。また金石(きんせき)の新資料が次々と発見されたこととも相まって、清朝後期の碑学派たちによる研究活動は、広範囲に及ぶのみならず、その内容も充実していきます。芸術性の追求のみを主眼としていた従来の書が深化し、文字学や金石学、考古学といった分野からの知見を基礎とした「清朝書学」が成立したことも大きな要因でしょう。これら碑学の隆盛は、書活動の制作面にも多大な影響を与え、帖学のみではなし得なかった表現も、碑学の導入によって新たな境地を開くことが可能になり、書の潜在的な表現力は飛躍的な高まりをみせていったのです。
 

特集陳列「清時代の書 ―碑学派―」 (2013年10月8日(火)~12月1日(日)、平成館企画展示室)
特別展「清時代の書― 碑学派 ― 鄧石如生誕270年記念」 (2013年10月8日(火)~12月1日(日)、台東区立書道博物館)

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開中国の絵画・書跡

| 記事URL |

posted by 鍋島稲子(台東区立書道博物館主任研究員) at 2013年11月16日 (土)

 

京都展&上海博物館展 スペシャルメニューだほ!

  ほっほーい! ぼく、トーハクくん。
今日は、東洋館にあるホテルオークラレストラン ゆりの木に来たんだほ。
お目当ては、開催中の特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」、「上海博物館 中国絵画の至宝」の特別メニュー。
特別展が始まると、いつもそわそわ、気になるんだほ。

ほっ! 肉だ、肉だ、にくだほーい!!!

 
京たんくろ和牛重 
短角牛と黒毛和牛を交配させた、その名も「京たんくろ和牛」を使った牛重。
単品 1600円、京漬物の盛り合わせ、温泉卵、味噌椀とのセット 2,000円


ほほほー。
短角牛の深い味わいと黒毛和牛のまろやかさが一緒になって、絶妙なバランスなんだほ。


京都展限定の京都地ビールや日本酒もあるんだほ!


周山街道ビール 700円
香ばしいアンバー麦芽の風味とホップアロマがきいた、アンバーエールタイプのビール。
日本酒の蔵元が造った京都の地ビールです。

純米大吟醸「蒼光」(180ml) 1,500円
京都産の酒米「祝」と桂川上流の伏流水による、大吟醸


あ、でもボク5歳。
いけないんだほ。

(注:写真のトーハクくんは酔っ払っているわけではありません)

おつまみには、京都美山産九条葱のソーセージもどうぞ!
このほか、京のもち豚のハンバーグや、丹後産若鶏の香草焼きなど洋食メニュー、
そして、抹茶を使った限定デザートもあるんだほ。

さて、「上海博物館展」のメニューはどんなのがあるんだほ?

おお! こっちも肉だ、肉だ。にくだほーい!!
京都が牛なら上海は豚でアピールだほ。

豚角煮定食(ライス、春巻気、ザーサイ、中華スープ付き) 1,500円 
豚角煮つゆそば(本日の中華デザート付き) 1,600円
甘めに煮た煮込みは、上海料理の名物のひとつ。豚の角煮をメインにした、ゆりの木風上海料理です


とろとろに煮込まれた角煮。
やはらはふて、はほほほー だほ。

(注:トーハクくんはお肉が好きなので、肉ばかりご紹介しましたが、
舞鶴蒲鉾と野菜の天重(天重単品 1,400円、京漬物の盛り合わせ、味噌椀 とセットで1,800円) 
京漬物の盛り合わせ(昆布壬生菜、茄子浅漬け、千枚漬け・胡瓜しば漬け、刻みすぐき、半割胡麻大根 750円) 
などもございますので、どうかご安心ください)


以上、トーハクくんのグルメリポートでした。
次回は、1月。次の特別展も楽しみになってきたほ!

 
えーっ?トーハクくんばっか、ずるい! 次はわたしの番よ!

カテゴリ:2013年度の特別展

| 記事URL |

posted by トーハクくん at 2013年11月13日 (水)

 

【上海博物館展コラム】室町時代の水墨山水画との深い関係

特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」コラム。今回は、前回のブログでお約束しました「室町時代の水墨山水画と元代文人画の知られざる深い関係」についてご説明いたします。

室町時代に数多く作られた水墨山水画の中に、書斎を周囲の自然景とともに描いた一群の作品があります。
それらを「書斎図」と呼びますが、その代表的なものに下記の作品があります。


渓陰小築図  竹斎読書図
(左) 国宝 渓陰小築図 
太白真玄序、大岳周崇等六禅僧賛 室町時代・応永20年(1413) 京都・金地院蔵


(右) 国宝 竹斎読書図 
伝周文筆 文安4年(1447) 竺雲等連序・江西龍派等五僧賛 室町時代・15世紀  
 


これらは多くの場合、実景ではありません。
中世の禅僧たちが理想とした静かな生活、すなわち人里離れた庵に住み、美しい山川に囲まれ、書斎で読書や詩作に耽りたいという、実際には実現困難な暮らしへの憧れを反映して作られた作品です。
そうした憧れが醸成された背景には、陶淵明や杜甫、蘇軾など、中国の文人たちを、室町時代の禅僧たちが相当に敬愛していたことが大きく関わっています。
これら中国の文人たちは、官僚として国政に参画することを己の第一の使命と考えながらも、しばしば、ゆえあっての辞職や、動乱に起因する流浪、政争などによって、都を離れて地方に閑居し、困難に直面しながらも、詩文の創作に大いなる才能を発揮しました。

日本における書斎図の発生と流行の原因として、そうした中国の詩文や文人への憧れと同時に、中国・元時代の文人が、自己や知人の書斎や庵を表した山水画を数多く描いていることも見逃せません。
その好例が、昨年開催した特別展「北京故宮博物院200選」の目玉だった趙孟頫(ちょうもうふ)の水村図巻(北京故宮展図録no.13)(本展図録66頁、図26)や、朱徳潤の秀野軒図巻(北京故宮展図録no.17)であり、本展出品作の、王蒙の青卞隠居図軸や、銭選の浮玉山居図巻なのです。


青卞隠居図軸
一級文物 青卞隠居図軸
王蒙筆 元時代・1366年 上海博物館蔵
展示期間:10月29日(火)~11月24日(日)


浮玉山居図巻
一級文物 浮玉山居図巻(ふぎょくさんきょずかん)(部分)
銭選(せんせん)筆 元時代・13世紀 上海博物館蔵
展示期間終了



中国の元時代は、日本では鎌倉時代から南北朝時代にあたりますが、日中間の禅僧の行き来が最も盛んに行われた時代だったことは、じつはあまり知られていません。
日本からはきわめて多くの禅僧が中国を訪れ、禅寺で修行するとともに、中には趙孟頫や王蒙といった一流の文人画家と交流した禅僧もいました。
また日本からの要請を受けて中国から多くの高僧が来日し、禅宗だけにとどまらず、当時の最新の中国文化を紹介しました。

こうした往来と文化交流によって、中国で流行していた書斎図が、実際の作品はもちろん、書斎図に関する知識や見聞も日本にもたらされました。
それらに触発されて室町時代には禅宗寺院を中心に書斎図が流行しました。

室町時代の水墨山水画には元代文人画も深く関わっているといえるのです。



救仁郷秀明研究員
救仁郷秀明
列品管理課登録室長、貸与特別観覧室長。専門は中世の水墨画。

本館3室 禅と水墨画―鎌倉~室町 の展示室にて。

カテゴリ:研究員のイチオシnews2013年度の特別展展示環境・たてもの

| 記事URL |

posted by 救仁郷秀明(登録室長) at 2013年11月11日 (月)

 

【上海博物館展コラム】この絵のどこが良いのかしら…

特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」を見に行くべきかどうか、もし迷っている方がいらっしゃるなら、
倪瓚(げいさん)の漁荘秋霽図軸(ぎょそうしゅうせいずじく)(残念ながら10月27日で展示終了)と、
王蒙(おうもう)の青卞隠居図軸(せいべんいんきょずじく)(展示期間:11月24日(日)まで)をご覧になることをお薦めします。

漁荘秋霽図軸  青卞隠居図軸
(左)一級文物 漁荘秋霽図軸
倪瓚筆 元時代・1355年 上海博物館蔵
展示期間終了
(右)一級文物 青卞隠居図軸
王蒙筆 元時代・1366年 上海博物館蔵
展示期間:10月29日(火)~11月24日(日)



この2つの作品は日本人にとって、中国絵画を見慣れた方であったとしてもかなり違和感を覚える作品です。
あなたが「こんな絵のどこがいいのかわからない!」と言ったとしたら、本展担当者は怒り狂うかもしれませんが、私だったら「そうですよね」と相槌を打つことをためらいません。
けれども、これらは中国絵画史を語る上で欠くことのできない名作ですし、確実な作品が世界を見渡してもごくわずかしかないといわれる倪瓚、王蒙、それぞれの代表作として、きわめて貴重なものです。
どちらも少なくとも30分くらいは時間をかけて見ておくべきでしょう。


展示風景
(漁荘秋霽図軸は現在は展示されておりません。


さて、倪瓚の漁荘秋霽図軸ですが、こちらに描かれているのは、水辺の岩から伸びる数本の樹木と遠い岸辺という単純きわまりない、簡素な構成の作品です。
葉も落ちて、なんとも寂しい光景です。「この絵を好きですか?」と問われると、私も困って口ごもることになるでしょう。
また、樹木や岩の描写をよく見ると、筆がかすれていて、なんだかパサパサした、乾いた感じがしませんか。
このかすれたタッチは、擦筆(さっぴつ)とか渇筆(かっぴつ)と呼ばれる技法です。
しっとりとした潤いが感じられる水墨画を特に好んできた我々日本人にとっては見慣れないものですが、お隣の中国では、とくに元時代以降の文人画に多用されているテクニックです。
もしあなたが中国で類似した技法や構図を用いた絵画を見たときに、「上海博物館の倪瓚の漁荘秋霽図軸に比べると、この作品は~~ですね。」などと感想をもらせば、文人画の知識を持つ教養人としてきっと一目置かれることでしょう。
(見逃された方は図録をご参照ください。作品成立の背景について、85頁に塚本麿充研究員による詳細な解説もあります。)


展示風景


次に、王蒙の青卞隠居図軸ですが、こちらは下から上へ、うねうねと大蛇がのたうつように山が続いていく不思議な迫力に満ちた作品です。


見上げるほどの大きさ


しかしどうも不自然といいますか、日本人にとって親しみのもてる風景ではありませんね。この絵をすぐ好きになれといっても、無理もないと思います。
しかしこの力強い画面構成法は、その後の中国文人画に強い影響を与えていますし、上海博物館の青卞隠居図は、迫力という点において王蒙の真価を最もよく物語る作品といえます。ぜひ、この構図と迫力を目に焼き付けてください。


展示風景


「でも、結局、中国の文人画は、日本の絵画とは関係がないんでしょう?見に行かなくてもいいかな」
と思い始めているあなたには、室町時代の水墨山水画と元代文人画の知られざる深い関係を説明すべきですが、これについてはあらためて書くことにいたします。

カテゴリ:研究員のイチオシnews2013年度の特別展展示環境・たてもの

| 記事URL |

posted by 救仁郷秀明(登録室長) at 2013年11月06日 (水)