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東北の三大薬師がトーハクに集結!

素朴で力強く、そして温かみのある東北の仏像。
東北6県を代表する魅力あふれる仏像を、トーハクでご覧いただけることとなりました。

当館では、特別展「みちのくの仏像」(1月14日(水)~4月5日(日) 本館特別5室)を開催します。


9月16日(火)には、平成館大講堂で報道発表会を開催し、
本展覧会の担当研究員・丸山士郎より、見どころと展示作品についてご説明いたしました。


作品解説中の丸山研究員


展覧会には、東北の三大薬師といわれる黒石寺(岩手県)・勝常寺(福島県)・双林寺(宮城県)の
薬師如来坐像がいらっしゃいます!
3体のお像が揃うのは初めて。三大薬師の記念すべき初顔合わせです。


国宝 薬師如来坐像
平安時代・9世紀 福島・勝常寺蔵

仏像ファンが愛してやまない、円空作の仏像もいらっしゃいます。
そのうちの1体、常楽寺(青森県)の釈迦如来立像は、円空初期の作品。
ノミ跡が荒々しい後期とは違って、表面を滑らかに仕上げ、細かなところまで表現しています。


釈迦如来立像
江戸時代・17世紀 円空作
青森・常楽寺像
(画像提供:須藤弘敏)


ちんまりとかわいらしいお像にも注目です。
秋田県・小沼神社の聖観音菩薩立像の頭部をよーくご覧ください。
頭部の大きなこぶに刻まれているのは、小さな愛らしいお顔。
その愛らしさに「まるで雪ん子!」と、丸山研究員もすっかり虜です。

                
聖観音菩薩立像                       (部分)        
平安時代・10世紀 秋田・小沼神社蔵
(画像提供:東北歴史博物館)

小さなお像の次には、大きなお像を。
給分浜(きゅうぶんはま)観音堂の十一面観音菩薩立像は、高さ約290cmという大きさ。
こちらのお像が安置される観音堂は、宮城県の給分浜を見下ろす高台に立っています。
東日本大震災では、給分浜は津波の被害に遭いましたが、お像は難を逃れました。


重要文化財 十一面観音菩薩立像
鎌倉時代・14世紀 宮城・給分浜観音堂蔵
(画像提供:東北歴史博物館)


丸山研究員は、「東日本大震災の折、被災地の人びとがみせた
忍耐強さや助け合いの精神に、私たちは心を動かされました。
東北の仏像の力強く、それでいて優しいお顔には、
そのような東北の人たちの気質が表れていように思えてなりません」
と、発表を締めくくりました。


報道発表会では、特別展「みちのくの仏像」と同時期に開催する、
特別展「3.11大津波と文化財の再生」(2015年1月14日(水)~3月15日(日))の概要も発表されました。

東日本大震災で発生した大津波は、文化財にも甚大な被害をもたらしました。
本展覧会は、そういった被災文化財再生への取組みをご紹介するものです。
実際に、再生のための処理を施した資料をご覧いただけます。

   
奥州市埋蔵文化財センターでの         安定化処理後の石川啄木歌碑拓本
拓本の安定化処理作業

さらに、文化財再生を通じて結ばれた絆の象徴として、
岩手県立高田高校の実習船「カモメ」も展示する予定です。
船が大津波で流され、アメリカの西海岸に漂着した、というニュースを
ご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
漂着時には、びっしりと貝が付着して傷みも見られた船はクリーニングされ、
生まれ変わった「カモメ」は、2013年、高田高校に返還されます。
これは、アメリカの高校生の呼びかけにより、実現しました。


実習船「カモメ」と岩手県立高田高校の生徒たち
(画像提供:東海新報社)



2つの展覧会が、東北復興の一助となることを祈っています。
2015年に開催されるトーハク最初の展覧会、どうぞお楽しみに!

カテゴリ:news

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posted by 高桑那々美(広報室) at 2014年09月19日 (金)