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1089ブログ

トーハクで自由研究 展示をもとにお皿をデザイン

学校は夏休みに入りました。
夏休みの思い出といえば家族旅行、プールや海、ラジオ体操などでしょうか。
私は部活と宿題です。
夏休みの終わりが近づくと宿題に追われ、特に自由研究は最後まで引きずっていました。
こうなることはわかっていたのに、早めに取り掛からない自分を恨めしく思ったものです。
私と同じ経験をされた方、この夏もしそうな方、いらっしゃいますよね。

じつはトーハクにも夏休みになると美術部、文芸部、歴史研究部などいろんな部活の皆さんが来てくれています。
ゆっくり時間をとれる夏休みに人気なのが、スクールプログラムのひとつである「伝統模様のお皿作り」。
技術を学んだり、うまく描くことを目指すのではなく、鑑賞するための手がかりとして始めたワークショップです。
作品や展示をもっと楽しんでほしい。そのための提案のひとつです。
なんと夏休みの予約はもういっぱいですが、自由研究にもうってつけでは?ということで、今日はこのプログラムの人気の秘密をご紹介します。

まずはどんなプログラムなのか、のぞいてみましょう。
少し緊張気味の生徒たちに真っ白なお皿を渡し、「展示作品から好きなモチーフを選んでお皿をデザインしてみましょう」というと、とたんにざわざわ…
美術部とはいえ、普段から美術館や博物館に通う生徒は少なく、トーハクにきたのが初めてという生徒がほとんど。
どんな作品があるかもわからない状態の彼らには少し難しい課題なのでしょうか、どことなく不安な様子です。
まずはみんなで一緒に本館展示室に行き、お皿のデザインのパターンや日本美術の模様やモチーフについて説明をうけたら一度解散。
約1時間かけて本館の展示作品を鑑賞し、自分の好きなモチーフをスケッチします。


見学のあと、思い思いにスケッチしていきます。

デザインをまとめたら専用のサインペンで絵付けをし、最後に出来上がったお皿を全員で鑑賞します。
30分ほどかけてひとりひとりに展示の感想、どんな作品を基にしたのか、どんなところを工夫したのかを聞いていく鑑賞会が、
このプログラムのポイント。
お互いの発見や工夫を共有します。


お互いのお皿を見ながら、感想を聞きます。


展示作品と、それを基に生徒がデザインしたお皿。

「時代もジャンルも材質も違う作品なのに、同じモチーフが使われていてビックリ」
「同じ着物を参考にしたのに、全然雰囲気が違う!私のお皿は実用に、あの子のお皿は飾るのにいいかも」
「その作品ってどこにあったの?」
できたお皿も、こうした感想もすべて、みんながしっかり鑑賞してきた証です。

同じ日に、同じ時間だけ、同じ展示室を回って、同じ画材で描いたお皿なのに、同じものはありません。
鑑賞になれていない生徒たちも「デザインする」という課題を持つことで、
立体の作品、四角い画面の作品などを丸いお皿にどうアレンジするか、
彩色のない作品に色をつけたらどうなるか想像しながら、
作り手の気持ちという「いつもと違う視点」で作品にじっくり向き合い、何かに気づくことができたのでしょう。

そして鑑賞会では自分の思いつかなかった表現や、見落とした作品の魅力に新鮮な驚きを感じるようです。
「いつもと違う視点」が「日本美術をみるのも楽しい!」といってくれる理由だと思います。

「いつもと違う視点」の他の例として、
作品の「つくり方」に注目する、ということを親と子のギャラリー「日本美術のつくり方Ⅲ」でご提案しています。
こちらも、自由研究の題材になるのではないでしょうか。
自由研究にお困りのみなさん、保護者の皆様、トーハクで自由研究、いかがでしょうか。

余談ですが・・・
この夏も、東京都高等学校文化連盟茶道部門の皆さんが参加してくださいました。
夏にトーハクで作ったお皿を銘々皿として、冬にトーハクのお茶室を借りてお茶会をする、
という壮大な計画を実行してくれている高校生たちです。
こういう発展、活用方法もあったのか!と私も驚きましたし、うれしく思っています。


昨年12月のお茶会の様子。私も一服いただきました

たくさんの皆様に、いろいろな方法でトーハクを活用し、楽しんでいただければと願っています。

カテゴリ:教育普及

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2012年08月01日 (水)