1月17日(火)、特別展「春日大社 千年の至宝」がついに開幕しました。
開幕に先立ち、前日に行った開会式と内覧会にも多くのお客様にご出席いただきました。なお、開会式には御来賓として高円宮妃久子殿下にお越しいただきました。

開会式には、多くのお客様にご出席いただきました
春日大社では、「式年造替」と呼ばれる社殿の建て替えや修繕が約20年に一度行われ、昨年、第60回目を迎えました。本展はこの大きな節目に開催する、かつてない規模の展覧会。国宝・重要文化財100件以上を含む、春日大社の「至宝」がトーハクに一堂に会します(会期中展示替あり)。
展覧会は6章構成。
第1章は・・・、奈良といえば鹿。春日大社と鹿は切っても切れない関係にあります。第1章では神々しくも親しみにあふれる「神鹿(しんろく)」にスポットを当てます。

まずは奈良公園の鹿がお出迎え
第2章は神々の調度品として奉納された古神宝類。「平安の正倉院」とも呼ばれる、平安工芸の最高峰といわれる国宝の工芸品をご紹介します。

今回の展示の目玉作品の一つ、国宝 金地螺鈿毛抜形太刀(春日大社蔵)(展示期間:1月17日(火)~2月19日(日))
第3章は春日の神々への祈りを表した選りすぐりの名品を、第4章では歴史上の偉人たちが奉納した国宝の甲冑や刀剣をご覧いただきます。

3章、神仏習合を象徴する、重要文化財 文殊菩薩騎獅像および侍者立像(東京国立博物館蔵)(展示期間:通期)

4章、こちらも本展の目玉の一つ、五月人形のモデルになったとも言われる国宝 赤糸威大鎧(梅鶯飾)(春日大社蔵)(展示期間:1月17日(火)~2月19日(日))

4章展示風景、昨今若い女性にも人気の刀剣も多数展示
第5章では、国の重要無形文化財にも指定されている「若宮おん祭」をはじめとする祭礼の際に奉納された舞楽などの芸能にかかわる作品を、最後の第6章では「式年造替」にかかわる資料などをご覧いただきます。なお、第5章では実際の「若宮おん祭」で使用された巨大な鼉太鼓(だだいこ)を展示。ぜひ実際に見てください。きっとその大きさに圧倒されますよ。

実際の春日大社のお祭りでも使われている日本最大級の太鼓、鼉太鼓(春日大社蔵)

昨年の式年造替で撤下され注目を浴びた獅子・狛犬 (春日大社蔵)
なお、今回は春日大社の雰囲気を体感していただくための工夫も随所にございます。まず第1章と第2章の間には、普段は拝観できない本殿の第2殿をほぼ実物大で再現。上野にいながら春日詣を体感していただけます。

本殿の第2殿を再現。御殿の間の壁にある「御間塀」は、昨年の式年造替で撤下されたもの
さらに第4章と第5章の間には、春日大社の回廊沿いにずらりと並んでいる釣燈籠を23基展示。幻想的な空間となっています。こちらは皆さま、なんと撮影も可能!ぜひ、とっておきの1枚を収めてください。

こちらのコーナーは写真撮影OKです!
特別展「春日大社 千年の至宝」、会期は3月12日(日)まで。今回は展覧会全体を駆け足でご紹介しましたが、今後、しっかりと本展の見どころをこのブログでご紹介していきます。どうぞご期待ください!
※撤下…神に捧げられていた道具類が役目を終え、神殿から下ろされること
 
カテゴリ:news、2016年度の特別展
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posted by 武田卓(広報室) at 2017年01月18日 (水)
こんにちは、ユリノキちゃんです![]()
皆さん、お正月に初もうではどこか行かれましたか?
いつも近所の神社におまいりに行く、という方にもお知らせです。
来週17日(火)から、トーハクで春日詣でができちゃいます!
特別展「春日大社 千年の至宝」(1月17日(火) ~ 3月12日(日))は、奈良の春日大社から、めったにみられない貴重な宝物がたくさんやって来ます。春日の神様にお願いごとをするためにつくられた大切なものも、いろいろと展示されるのです。
ということで、皆さんより一足お先に会場をのぞいてきまーす

 
奈良といえば、鹿、ですね。
「鹿図屏風」には、茶色や白の鹿がたくさん描いてあります。

鹿図屛風 江戸時代・17世紀 春日大社蔵
こちらは木彫りの鹿さん。斑点模様もあってなんだかかわいらしい

白鹿  森川杜園作 江戸時代・慶応2年(1866) 春日大社蔵
わぁ!ここは本当に神社がそのままやってきてるみたい。お参りしちゃうわー

本殿再現展示の一部 オープンの時にはもっと雰囲気のある空間に。
 
こちらには、ながーい鉾がずらりと並んでいます。

国宝 本宮御料古神宝類 細身鉄鉾、平身鉄鉾、木鉾
平安時代・11~12世紀 春日大社蔵
 
あ、チーフの土屋さんと、研究員の植松さんだ。お忙しそう。
いよいよ今回の展覧会の見どころのひとつ、「春日宮曼荼羅図」をかけるところなのね。
私も緊張するー
 
 
 
 
掛け終ったところで、さて、どのくらいの高さがいいかしら。お二人で相談中です。
土屋さん「これでいいかな、ユリちゃん?」
え!?えーと、いいと思います ![]()
「では、これで決まり!」
責任重大になってしまいました…
「ユリちゃん、ここをよくみてごらん。」

春日宮曼荼羅(部分)鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵
あ!鹿さんたちが! でも、かなりじっくり探さないとわからないかも。
会場でよくみえなかったら、だいたいこのあたりかな、って思ってくださいね ![]()
 
さてさて、反対側のお部屋も行ってみよう。
すごい!なんて大きな太鼓!

鼉(だ)太鼓(複製) 昭和51年(1976) 春日大社蔵
ここでは春日のおん祭に関係するものが並びます。この大きな太鼓や、宮廷の踊りの衣裳などもあります。
衣裳はこういうお人形に着せるのですね。
  
和紙のひもと綿の布団で衣裳に合うように形を作っています。
こちらでは、染織専門の小山(おやま)工芸室長が、衣裳を展示する準備をしています。

小山さん「ユリちゃん、こんにちは」
小山さん、こんにちは。それはなんですか?

「衣裳の帯につけるバックルと、肩につける飾りよ。ひとそろいはこんな感じ」
 

太平楽装束一式 江戸時代・17世紀 春日大社蔵
とてもゴージャスでステキです![]()
春日大社には有名なおさむらいさんや貴族の人から奉納された刀やよろいがあります。
こちらも今回絶対見逃せない、武器・武具のコーナーをちらっとのぞいてみます。
この刀は国宝。きりっとしてきれいねえ。これで照明を調整したらもっときれいにみえるはず!

国宝 金装花押散兵庫鎖太刀(部分)刀身:伝長船兼光
刀身:南北朝時代・貞治4年(1365) 春日大社蔵
[展示期間:2017年1月17日(火)~2月12日(日)]

銘があり、作った年がわかります
 
こちらの籠手は、源義経が吉野に行く前に春日さんにおいていったものって言われているんですって。

国宝 籠手 鎌倉時代・13世紀 春日大社蔵
[展示期間:2017年1月17日(火)~2月12日(日)]
手の甲にこんなステキな飾りが

国宝 籠手(部分)
わあ、きれいな燈籠がいっぱい!

 
 
ここでは皆さんも写真を撮れるんですって。記念写真はこちらでどうぞー
すごい宝物や大きな太鼓、いろんな姿の鹿さんたちの絵など、まだまだみきれないわ。
皆さん、開幕を楽しみにしてくださいね!
カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん、2016年度の特別展
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posted by ユリノキちゃん at 2017年01月13日 (金)
董其昌は、明時代も終わりに近づいた1555年、現在の上海地方に生まれました。
さほど裕福な家の出身ではありませんでしたが、勉学に励み、数え35歳で難関の科挙に合格、官僚生活をスタートします。その後は、一時的に官を退くことはありましたが、ほぼ順調にキャリアを積み上げ、南京礼部尚書の地位まで昇りつめます。
郷里では地位を活かして豪勢な生活を送り、82歳の長寿を全うしました。まずまず幸せな一生を送ったといえるのではないでしょうか。
董其昌がその名を歴史に刻んだのは、政治家としての業績よりも、書家・画家としての腕前、古今の書画に対する鑑定家・評論家としての知識・卓見によるところが大きいでしょう。
彼の遺した作品や理論は、後の書家・画家たちに広く影響を与えました。

渓山仙館図 董其昌筆 明時代・天啓3年(1623) 東京国立博物館蔵 (2017年1月29日(日)まで展示)
台東区立書道博物館との連携企画第14弾「董其昌とその時代―明末清初の連綿趣味―」では、東洋館8室(2017年2月26日(日)まで)と書道博物館(2017年3月5日(日)まで)の2会場で、董其昌と彼の生きた時代の書画を特集展示しています。
当ブログではこれから3回にわたって、この展覧会の魅力を紹介していきますが、第1回目の今回は、明末清初の絵画の楽しみ方についてお話しようと思います。
キーワードは、「古」と「奇」です。

東洋館8室展示風景
董其昌のような知識人の制作する絵画において、なぜ「古」が大事であったか、これは、彼らにとっての文章を書く、という行為と比較するとわかりやすいかもしれません。
科挙の答案に始まり、皇帝への意見文、同僚・地元の名士との交流に必須の詩文、知人から頼まれる祝賀あるいは追悼の言葉など、知識人は日々多くの文章を書きます。
彼らに求められているのは、文章の中に彼らの教養を反映させることです。すなわち、この答案のこの部分は、孔子先生が述べられたあの言葉を踏まえている、あるいは、この詩のこの言葉は、李白のあの有名な句を踏まえている、といった具合です。
このために、彼らは2000年以上にわたる「古典」を猛勉強するわけです。
知識人の作る絵画は文章と同じく、作り手の優れた内面を伝えるものであるべきと考えられました。とすると、当然そこには「典拠」が散りばめられることが期待されます。
明末清初の絵画に「古の誰々に倣う」という題がしばしば見られるのは、このためです。

倣黄公望山水図 王鑑筆 明時代・崇禎11年(1638) 京都国立博物館蔵(2017年1月29日(日)まで展示)
ここで問題となるのは、明末という時代の特性です。
都市経済が空前の発展を遂げた16世紀後半、まちには様々なレベルの知識人が溢れていました。董其昌のように高級官僚になれるのはほんのひとにぎり、多くは自分の教養を売りに、詩人、戯曲家、編集者、評論家、そして書家あるいは画家として生活しなければなりませんでした。
知識人が需要過多となった社会の中で、彼らは、他に比べて自分の教養、内面こそが優れていると証明しなければならず、そこに古典解釈の正統性を競う苛烈な競争が生じました。
この競争の中で重視されるようになったのが、「奇」という概念です。
董其昌もしばしば作画にあたっての「奇」の重要性を説きますが、これは当時にあっては、「個性」とも解釈できる言葉で、人と同じ倣古ではだめだ、自分の独創性を表現しなければならない、という主張が成されています。
今回の展示では、このような明末の熱気の中で制作された、自分オリジナルの「奇」を競う絵画が多く並びます。ここでは、1月15日までしか見られない名品2点を紹介しましょう。
   
天目喬松図 藍瑛筆 明時代・崇禎2年(1629) 個人蔵(2017年1月15日(日)まで展示)
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藍瑛(1585-1666)は浙江・杭州出身、様々な古典を勉強して自分なりの倣古山水画様式を確立した画家です。
「天目喬松図」は浙江省にある道教・仏教の聖山、天目山を描きます。10・11世紀の華北画壇では、このような下から湧き上がる堂々とした高山の姿が好まれました。藍瑛の天目山イメージはこれへのオマージュとも解釈できるでしょう。
一方で、山肌を走る筆線は、10世紀の江南で活躍した董源に発するとされる「荷葉皴」に近く、赤や白の鮮やかな樹葉は、6世紀のやはり南の画家、張僧繇が描いたと伝わる濃彩の青緑山水を思わせます。
剛毅・峻厳な北の画風に、温厚・甘美な南のエッセンスを取り入れたところに、藍瑛の「奇」が光っています。
   
渓山絶塵図 呉彬筆 明時代・崇禎2年(1629) 個人蔵(2017年1月15日(日)まで展示)
(右) 部分拡大
呉彬(?-1567-1617-?)は福建出身、古画に取材した怪異な風貌の人物を描いた画家として有名です。
「渓山絶塵図」では、藍瑛と同様、10・11世紀の華北画風を学んで、俗人を近づけない、まさに「絶塵」の厳しさを持つ大山を描いています。
眼を引くのは、第一に、上に聳えるだけでなく、横に伸び、垂れ下がり、ねじ曲がって絡み合う山の形です。第二には、光沢のある織り方をした絖と呼ばれる素材を活かして、そこに筆墨で明暗を付け、複雑な線描を施した山の肌合いが挙げられるでしょう。
詳しくは展覧会図録に書きましたが、造形・質感におよぶ呉彬の「奇」は、当時流行していた奇石愛好趣味からインスピレーションを得たものといわれています。空洞や突起を多く備え、複雑な文様と滑らかな肌を持った珍奇な石は、人々に幻想的な大山のイメージを抱かせるものでした。それを画面に写したのが、呉彬ということになります。
この他にも、「董其昌とその時代―明末清初の連綿趣味―」展では、明末清初の絵画の名品が並んでいます。この機会を逃さず、トーハクと書道博物館で「古」と「奇」の世界を楽しんでいただければ幸いです。
展覧会図録
カテゴリ:研究員のイチオシ、特集・特別公開、中国の絵画・書跡
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posted by 植松瑞希(東洋室研究員) at 2017年01月12日 (木)
新年、明けましておめでとうございます。
当館では毎年正月にちなんだ特集展示を行っており、今年は平成29年の干支である酉にちなんで、「暁の鳥」「祝の鳥」の二つのテーマのもとに、鳥を表わす美術工芸品を展示します。
まず「暁の鳥」について。十二支は動物に例えられ、十二支の酉は鶏の姿で表現されることが通例です。鶏は鳴いて夜明けを告げる人間に身近な家禽であるとともに、赤い鶏冠や長い尾羽根の姿が美しかったためか、美術工芸品のモチーフとしても親しまれました。天子の政治を諫(いさ)める太鼓が善政のうちに不要となって鶏の遊び場となった「諌鼓鶏(かんこどり)」という太平の世を表わす主題や、鶏同士を闘わせる「闘鶏」という遊戯を主題とする作品などが制作されました。そのような鶏をモチーフとする作品、そして鶏と人との関わりを表した作品を展示します。

重要文化財 竹鶏図 蘿窓筆 中国 南宋時代・13世紀

鶏合せ 鈴木春信筆 江戸時代・18世紀
そして「祝の鳥」について。色鮮やかな羽根を広げて空を舞う鳥の姿は美しく、美術工芸品のモチーフとして親しまれました。
鷹は高く飛翔するので隆盛、鶴は仙人が乗るので長寿、鴛鴦は雌雄が寄り添うので愛情などと、鳥のモチーフにはしばしば吉祥的な意味が込められました。また人間の豊かな想像力は中国の鳳凰や東南アジアのガルーダなどの空想鳥をも生み出しました。
鳳凰は鶏に取材した聖帝の治世に出現する瑞鳥であり、ガルーダは孔雀に取材した毒蛇を退治する聖鳥とされました。そのように、実在の鳥に限らず、空想鳥を含む鳥を表した作品を展示します。

花鳥図屏風 海北友雪筆 江戸時代・17世紀

自在鷹置物 明珍清春作 江戸時代・18~19世紀

桐鳳凰蒔絵鞍 江戸時代・18世紀(小野逑信氏寄贈)
新しい年を祝う鳥たちの世界をお楽しみください。
「博物館に初もうで 新年を寿ぐ鳥たち」
2017年1月2日(月) ~ 2017年1月29日(日) 本館 特別1室・特別2室
 
カテゴリ:研究員のイチオシ、博物館に初もうで、特集・特別公開
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posted by 猪熊兼樹(出版企画室主任研究員) at 2017年01月06日 (金)











カテゴリ:news、彫刻、2016年度の特別展
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posted by 西木政統(絵画・彫刻室) at 2017年01月04日 (水)