早いもので、平成館も建ってからすでに15年が経ちました。
外からちょっとみただけでは気づきませんが、マンションなんかでも10~12年したら、大規模修繕をしなければならないことからもわかるように、平成館も空調や照明などがだいぶ傷んでおりました。
そこで昨年12月の「日本国宝展」と月例講演会を最後に、平成館を一時休館して、4ヵ月ほどかけて改修工事を進めてまいりました。
その間は皆さまにも、いろいろなご不便をおかけしましたが、ようやく4月4日(土)の講演会を皮切りに、まずは大講堂が復活いたします。
わたしがおります教育講座室は、講演会やイベントなどを担当する部署です。
平成館休館中の講演会は、お隣の東京文化財研究所で地下のセミナー室をお借りして開催してまいりました。
お越しになられた方はよくご存知でしょうが、大変きれいな施設です。
ただ、当館の大講堂の定員が380名であるのに対して、仮設のいすを加えても120席ほどしかありません。
いくつかの講演会では大変申し訳ないことに、聴講を希望されたかた全員にはお入りいただけないことがありました。
またスタッフとしても慣れない会場ということもあり、様々な点で行き届かない面もあったかと存じます。
お詫び申し上げます。

東京文化財研究所セミナー室での月例講演会の様子
そんななかで、ある講演会でちょっと嬉しくなるようなできごとがありました。
ぜひ皆さまにも知っていただきたいと思い、ここにご報告させていただきます。
それは2月24日(土)に行った、檜図屏風の修理に関する講演会でした。
国宝の名品ということもあり、おそらくは全員にお入りいただけないだろうと予想して、あらかじめ整理券を120枚用意しておりました。
120枚目の整理券を受け取られたのは初老の男性でした。
そして、その最後の1枚を渡し終えた直後に来られたのが、学生風の若い女性でした。
彼女に、残念ながらもうお入りいただけない旨をお伝えしていたところ、初老の男性からご自身の券を譲るとのお申し出がありました。
男性は彼女に券を渡すと「若い人が聴いたほうがいいよ。上野の山には見るところがいっぱいあるので、自分はそっちをまわって帰るから」と言って、にこやかな笑顔で去っていかれました。
お名前をうかがうまもなく、しっかりとお礼も申し上げられなかったので、この場を借りてお礼申し上げたいと思います。
本当にありがとうございました。
わたしもぜひ先輩のような、よい歳のとり方をしたいな、とあらためて決意した次第です。
新しくなった大講堂での講演会第1弾は、4月4日(土)開催の桜セミナー「富士とサクラの絵画」。
先着順で380名まで聴講いただけます。
皆様のご来館をお待ち申し上げております。
| 記事URL |
posted by 淺湫毅(教育講座室長) at 2015年03月30日 (月)
特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」開幕
特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」、いよいよ本日開幕です。
これに先立ち、昨日16日、開会式・内覧会が行われました。
開会式では、本展覧会でインド仏像大使に就任し、オリジナルグッズの開発など展覧会を力強く応援してくださっている、みうらじゅんさん、いとうせいこうさんも加わり、にぎにぎしくテープカットが行われました。

開会式テープカットの様子
天気予報では午後から雨かとも言われておりましたが、幸いにもお天気はもち、内覧会の観覧者が1000人を超す大賑わいぶりでした。

内覧会の様子
インド東部の大都市コルカタ(旧カルカッタ)に所在するコルカタ・インド博物館は、1814年に創立したアジア最古の総合博物館。そのコレクションの中から、初期仏教美術を代表するバールフット遺跡の出土品、仏像誕生の地であるガンダーラやマトゥラーの仏像、インドで発生し、中国を経て日本にももたらされた密教の仏像などを厳選。本展はインド仏教美術のあけぼのから1000年を超える繁栄の様子を紹介する展覧会です。

コルカタ・インド博物館
展示される像やレリーフ、ストゥーパは、ほとんどが石製。初期仏教美術の素朴にして野趣あふれる表現、ガンダーラ仏の精緻な彫技、密教尊の妖しげな微笑。時代や地域により、その表情は異なります。
石の材質や色もまたさまざま、しかしその色や質感が、とても美しいのです。

弥勒菩薩坐像 ロリアン・タンガイ出土 クシャーン朝(2世紀ごろ) コルカタ・インド博物館蔵
Photograph (c)Indian Museum, Kolkata
この特別展は、久しぶりに表慶館を展観会場として行われます。
表慶館はご存知のとおり、明治42年(1909)に開館した建物。中央と左右に美しいドーム屋根をいただき、上層部の外壁面のレリーフや床のモザイク状のタイルなど、随所に趣のある明治末期の洋風建築で、重要文化財に指定されています。
それぞれの部屋はこじんまりとしていますが、中央ホールの左右に、小部屋が左右均等になっています。本展の1階中央からスタートして、2階を経て再び下階へと戻る流れは、インド仏教美術作品の展示に、しっくりなじんでいるように思われます。
かつてコルカタ・インド博物館を訪れたことのある私としては、同博物館がトーハクに再現されたような感をも抱きました。

表慶館 外観と中央エントランスから見た展示室
桜の花に囲まれた上野で、あなたをきっと、時空を超えたインドへのジャーニーに誘ってくれることを、お約束します!
Don't stop believing! 「インドの仏」、絶賛開幕中です。
カテゴリ:news、2015年度の特別展
| 記事URL |
posted by 伊藤信二(広報室長) at 2015年03月17日 (火)
3月に入っても寒暖の差が激しい日が続きましたが、ようやく、春らしい気温に落ち着きつつあるようです。
トーハクでは、明日3月17日(火)より、春の恒例「博物館でお花見を」(~4月12日(日))、「春の庭園開放」(~4月19日(日))が始まります。
今年は、期間中の3月23日(月)、30日(月)は特別開館し、3月27日(金)、4月3日(金)は庭園ライトアップ(19時30分まで)を行います。
東京の桜の開花は、3月26日(木)、満開は4月2日(木)との予想が出ていますので、ライトアップもタイミングがよさそうですね。
「博物館でお花見を」では、桜をモチーフにした作品の展示のほか、鑑賞ガイド、ワークショップ、コンサートなどイベントももりだくさんです。

国宝 花下遊楽図屛風 狩野長信筆 江戸時代・17世紀(3月17日(火)~4月12日(日)、本館2室にて展示)
2年ぶりの公開となります。
こちらも恒例のさくらスタンプラリー。「博物館でお花見を」パンフレット(A4二折)がスタンプラリーの台紙になっています。
桜のマークを目印に展示室を巡ると、5つのポイントでスタンプを集めることができます。
スタンプを全部集めると、オリジナル缶バッジをプレゼント!

今年のバッジのデザインは、花よりだんご!?のトーハクくんです!
トーハクくんのように「花よりだんご」な方におすすめしたいのが、こちら。
構内のレストラン(ゆりの木、ホテルオークラガーデンテラス)はもちろん、庭園にはさくらカフェも出店します。
そして今回は、表慶館で開催の特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」にちなみ、表慶館前にカレーを中心とした屋台が登場します!
4月26日(日)まで、曜日ごとに2~4台の屋台が出店いたしますので、ぜひご利用ください。
さらに、ミュージアムショップでは、「博物館でお花見を」期間中(3月17日(火)~4月12日(日))、千鳥屋総本家の「舟橋硯箱もなか」(6個入り 1,080円)を1日5箱の限定販売(本館ショップのみの取扱い)をいたします!

箱や桜の包装紙も素敵。もなかも作品の形を再現しています。
現在、本館12室で展示中の国宝「舟橋蒔絵硯箱」をモチーフにした老舗の逸品です。
国内の直営4店のみでしか販売されていないというレアもの。作品の鑑賞とあわせて、お土産にどうぞ。
この春はトーハクの展示室で華やかな作品を、庭園で可憐な桜を愛で、レストランやカフェ、屋台でお腹も春爛漫気分にひたってみてはいかがでしょうか。
| 記事URL |
posted by 奥田 緑(広報室) at 2015年03月16日 (月)
特別展「みちのくの仏像」(1月14日(水)~4月5日(日)、本館特別5室)は、
3月4日(水)に10万人目のお客様をお迎えしました。
ご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
10万人目のお客様は、鈴木康子さん。
なんと宮城県仙台市よりお越しいただいたそうです。
東北の仏像を展示する本展の、記念すべき10万人目のお客様が東北のお客様。
これも仏縁なのかもしれません。
鈴木さんには、東京国立博物館長 銭谷眞美より、記念品として特別展図録とトートバッグ、クリアファイルなどを贈呈しました。

特別展「みちのくの仏像」10万人セレモニー
鈴木康子さん(左)と館長の銭谷眞美(右)
3月4日(木) 東京国立博物館 展覧会会場前にて
仏像に興味があるという鈴木さんは、2年前からカルチャースクールで勉強もされていらっしゃるそう。
そんな鈴木さんでも、本展の仏像は初めてご覧になるお像ばかりなのだそうです。
「地元だとかえって行く機会がなく、また行きづらい場所のお寺が多いので、こうやってひとつの場所で見られるのはとてもありがたいです」と、お話くださいました。
そうなんです、地元の方でもなかなかご覧になる機会のない仏像が一堂に会していることも、本展の魅力のひとつなんです!
しかも、「これぞみちのく」といったお像から都風のお像まで、さまざまな仏像をご覧いただけます。
特別展「みちのくの仏像」は4月5日(日)まで。
どうぞお見逃しのないように、皆様のご来館をお待ちしています。
カテゴリ:news、2015年度の特別展
| 記事URL |
posted by 高桑那々美(広報室) at 2015年03月04日 (水)
トーハクにクレオパトラがやってきます!
誰もが知っているクレオパトラ。カエサルやアントニウスといった世界史上の大物をとりこにしたという、美女のなかの美女です。
そんなクレオパトラゆかりの名品が、この夏、トーハクにやってきます。

東京国立博物館では、この夏「クレオパトラとエジプトの王妃展」(2015年7月11日(土)~9月23日(水・祝)、平成館)を開催します。
3月2日(月)には本展の報道発表会を行いました。
こちらの展覧会、魅力は何といってもそのスケール感。
世界12ヵ国、約40もの所蔵先から古代エジプトの名品が集結します。
所蔵先としては、ルーヴル美術館、大英博物館、ボストン美術館、ベルリン・エジプト博物館、ウィーン美術史美術館など、世界有数の古代エジプトのコレクションを誇る博物館・美術館が名前を連ねています。
まさに古代エジプトの粋を集めた展覧会なのです!

報道発表会では本展覧会の担当研究員・品川欣也より展覧会のみどころを説明しました
さて、今回の主役は古代エジプトの王妃や女王。
ファラオ(王)を支え、国を支えた彼女たちゆかりの作品をご覧いただけます。
たとえばクレオパトラ(クレオパトラ7世)。

冒頭でもご紹介したとおり、絶世の美女として語り継がれる、古代エジプト史上最も著名な女王です。
実はクレオパトラとされる作品は非常に少なく、展覧会ではそんな貴重な作品が展示されます。

クレオパトラ
プトレマイオス朝時代(前1世紀前半)
イタリア トリノ・エジプト博物館蔵
(C)Archivio Soprintendenza per i Beni Archeologici
del Piemonte e del Museo Antichità Egizie
他にも多くの王妃や女王が登場しますが、あと一人、皆様に覚えておいていただきたいのがアメンヘテプ3世の王妃ティイ。

アマルナ改革で有名な(あるいは、美女・ネフェルトイティ(ネフェルティティ)の夫として有名な)アメンヘテプ4世(後のアクエンアテン王)の母でもあります。
王族出身ではありませんが、ティイは王に寵愛され、また王母としても大きな力を発揮しました。

アメンヘテプ3世の王妃ティイのレリーフ
新王国・第18王朝時代
アメンヘテプ3世治世(前1388~前1350年頃)
ベルギー ブリュッセル・ベルギー王立美術歴史博物館蔵
(C)Royal Museums of Art and History, Brussels
このレリーフはウセルハトという人物の墓にあったものですが、その墓は瓦礫などで埋もれてしまい、20世紀初頭の調査以来、その正確な所在地はわかっていませんでした。
その墓が、早稲田大学の調査隊により約100年ぶりに再発見されました!
その調査隊を率いたのが、本展の監修である早稲田大学の近藤二郎教授です。
近藤先生は、日本を代表する古代エジプトの研究者。2013年末には、約3200年前のビール醸造長の墓を発見し、世界的にも注目されています。
クレオパトラやティイが本展のヒロインなら、近藤先生は本展のヒーローなのです!

近藤先生には、レリーフのあった墓の調査について、臨場感たっぷりにご説明いただきました
ファンの多い古代エジプト、古代エジプト史のヒロイン・クレオパトラ、
トーハクでは15年ぶりの古代エジプトの展覧会。
(2000年の「世界四大文明 エジプト文明展」以来の開催です。)
そして、本展監修・近藤先生の最新の研究成果。
いやが上にも期待が高まります!
さて、当館にも古代エジプトのコレクションがあります。
報道発表会の最後には、古代エジプトの作品を展示している東洋館3室でギャラリートークも行いました。

(左)セクメト女神像
エジプト テーベ出土 新王国時代・第18王朝(ティイ、アメンヘテプ3世の時代の作品です)
(右)パシェリエンプタハのミイラ
エジプト テーベ出土 第22王朝 エジプト考古庁寄贈
※どちらも東洋館3室で通年展示。本展には出品されません。
夏の開幕が待ちきれないという方は、東洋館で予習をして、今から備えておくのも良いかもしれません。
「クレオパトラとエジプトの王妃展」、どうぞお楽しみに!
カテゴリ:news、2015年度の特別展
| 記事URL |
posted by 高桑那々美(広報室) at 2015年03月03日 (火)