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「尚意競艶―宋時代の書―」が始まりました!

10月2日(火)から、東京国立博物館&台東区立書道博物館の連携企画「尚意競艶―宋時代の書―」(平成館企画展示室、11月25日(日)まで)が始まりました。

平成館企画展示室の入口
平成館企画展示室の入口

今年は、宋時代の書の世界で、四大家のトップバッターに立つ蔡襄(さいじょう、1012~1067)の生誕1000年にあたります。こんなにキリのいい節目など、なかなか遭遇するものではありません。しかも蔡襄の肉筆を所蔵しているのは、日本で東京国立博物館と書道博物館だけなのです。これを逃す手はないと、記念すべき10回目の連携では、蔡襄をクローズアップし、一般にはシブいといわれる、宋時代の書の華やかな魅力をみなさんにご紹介することにしました。

1000歳になった蔡襄がお出迎え!
1000歳になった蔡襄がお出迎え!

展覧会のみどころは、なんといっても蔡襄の名作、“2つの「楷書謝賜御書詩表巻(かいしょしゃしぎょしょしひょうかん)」”です。今回初めて同時に展示しています。見比べると、行間の空きや線の太さなどに違いがみられます。同じものが2つ存在する理由…これは、清書と手控えではないかと考えられていますが、みなさんはどう思われますか?

楷書謝賜御書詩表巻
左:楷書謝賜御書詩表巻 蔡襄筆 北宋時代・皇祐5年(1053) 台東区立書道博物館蔵
右:楷書謝賜御書詩表巻 蔡襄筆 北宋時代・皇祐5年(1053) 高島菊次郎氏寄贈 東京国立博物館蔵

(2012年10月28日(日)まで東京国立博物館にて展示、10月30日(火)~11月25日(日)まで、台東区立書道博物館にて展示)


さて、台風一過で気温も30度を越した快晴の10月1日、報道内覧会が行われました。
やはり記者さんたちも、トーハクで展示されていた2つの蔡襄に釘付け。

2つの「楷書謝賜御書詩表巻」を取材する報道陣
2つの「楷書謝賜御書詩表巻」を取材する報道陣

会場を移動し、書道博物館に入ると、真っ先に目に飛び込んでくるのが、真っ赤な蔡襄のどでかい拓本。まさに「蔡襄1000歳、おめでとう!」の祝賀モードです。


楷書泉州万安橋碑  蔡襄筆 北宋時代・嘉祐5年(1060) 高島菊次郎氏寄贈 東京国立博物館蔵
(台東区立書道博物館にて全期間展示)



作品鑑賞後には、連携企画10回の歩みを感慨深く振り返りつつ、今回の展覧会ウラ話などを交えて、書道博物館のお庭でレセプションを行いました。


トーハクの島谷副館長、これまでの連携企画を振り返る

一般の方々には、まだまだメジャーではない宋時代の書ですが、身近に感じてもらえるよう、書道博物館では「週刊瓦版」を配布し、個性派文人たちの競艶を魅力たっぷりにお伝えしています。ぜひこの機会に、東京国立博物館&書道博物館でご鑑賞ください。



「尚意競艶 ―宋時代の書―」 2012年10月2日(火) ~ 2012年11月25日(日)
東京国立博物館(平成館企画展示室)・台東区立書道博物館
両館展示一覧 (2ページ PDF:100KB)

関連事業
列品解説 宋時代の書
2012年10月23日(火) 14:00~14:30 平成館企画展示室
講師:富田淳(東京国立博物館列品管理課長)

上野の山文化ゾーンフェスティバル 講演会シリーズ(11) 尚意競艶-宋時代の書-
2012年11月23日(金) 13:30 ~ 15:00 平成館大講堂
講師:鍋島稲子(台東区立書道博物館主任研究員)、 富田淳(東京国立博物館列品管理課長)

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 鍋島稲子(台東区立書道博物館) at 2012年10月09日 (火)

 

特集陳列「動物埴輪の世界」の見方6─馬形埴輪1

特集陳列「動物埴輪の世界」(2012年7月3日(火)~10月28日(日))の主なラインナップ、鶏・水鳥形埴輪と犬・猪・鹿形埴輪に続いて最後を飾るのは馬形埴輪です。
馬形埴輪は動物埴輪でもっとも数が多く、また大型の目立つ存在ですが、他の動物埴輪にはみられないさまざまな装飾をもつことが特色です。
多くの教科書や切手にも採り上げられていますので、少しでも埴輪に興味のある方なら誰もがご存知のことと思います。

馬形埴輪部分全景
馬形埴輪展示部分(全景)
左:埴輪 馬 大阪府堺市 伝仁徳陵古墳出土 古墳時代・5世紀 宮内庁蔵
中:重要文化財 埴輪 馬 埼玉県熊谷市上中条日向島出土古墳時代・6世紀
右:埴輪 馬 群馬県大泉町出土 古墳時代・6世紀


馬といえば、競馬やレジャーなどでしばしばテレビ・スポーツ紙に登場し、先日のロンドンオリンピックでも、馬術の日本代表選手が大会最高齢ということで注目を浴びたことは記憶に新しいところです。
また、モータリゼーションの現代でも乗り物の「推進力」は、(あの鉄腕アトムも・・・)「馬力」で表示されますし、演劇からきた「馬脚をあらわす」をはじめ、「馬齢を重ねる」「馬の耳に念仏」などの慣用句は誰もがピンとくる表現で、日常会話(日本語)の中にも深く埋め込まれています。


現在では、馬は競馬・観光などの特定の利用に限定されますが、ほんの半世紀ほど前までは農村はもとより街中でも、農事の耕作・運搬や馬車・荷車の牽引に利用され、日常的にお目にかかる馴染(なじ)み深い動物でした。
時代劇でもいろいろな場面に登場し、江戸時代以前の人々の生活にもっとも密接な動物であったといっても過言ではありません。
そういえば、「人馬一体」などという表現もありますね。


まず、馬の起源とその特徴を見ておきましょう。
化石を研究する古生物学によれば、約6500万年前の始新世に北アメリカの森林地帯に棲(す)んでいた草食動物(エオヒップス)が草原に進出して暮らすうちに、進化してエクウスと呼ばれるウマの祖先が誕生したといわれています。
この間に肉食動物から逃れるために、(最初は私たちと同じような)四肢の5本指は草原を駆け廻るのに適した形に変化し、(人間で言えば・・・)“中指”が著しく長大に発達しました。
また、体格の大型化とともに、先端の爪は変化して蹄(ひづめ)となり、馬の体の特徴が出来上がりました。

ウマ類の進化図
ウマ類の進化図(E.ギエノー(日高利隆訳)1965 『種の起源』文庫クセジュ174、白水社より)

われわれ人類が誕生した氷河期(約600万年~1万3千年前)には、地続きとなったユーラシア大陸にも移動して、現在のヨーロッパ・アフリカの草原地帯にまで活動範囲を拡げていったようです。

このような蹄をもつ草食動物を有蹄(ゆうてい)類といいますが、蹄の特徴から大きく2種類に分かれます。
一つは、ウマを代表とする単数の蹄をもつ奇蹄(きてい)類です。
もう一つは、“中指と薬指”が変化して2つの蹄をもつ偶蹄(ぐうてい)類で、イノシシやシカ・ヤギなどが“代表選手”です。
同じ四つ足動物でも肉食動物のオオカミを祖先にもつイヌの仲間や、(動物埴輪にはありませんが・・・)ライオンやヒョウなどのネコ科の動物は、ご存知のように5本の指と鋭い爪をもっています。


そこで、動物埴輪の脚先に注目してみると、興味深いことに気がつきます。
猪と馬の埴輪の(キュッと引き締まった形の良い・・・)脚を後ろから見ると、脚先の裏に鋭い三角形のスリット(???)が入っています(ハイヒール・・・ではありません)。
(念のために・・・)やはり犬形埴輪にはありませんので、これらはまさに有蹄類の蹄(!)を表したものということが判ります。

猪・馬・犬形埴輪部分
猪・馬・犬形埴輪部分(脚先後部):
左:重要文化財 
埴輪 (前脚)  群馬県伊勢崎市境上武士出土  古墳時代・6世紀
中:馬
埴輪 馬 (脚部) 群馬県大泉町出土  古墳時代・6世紀
右:
埴輪 犬(前脚) 群馬県伊勢崎市境上武士出土  古墳時代・6世紀

これまで(第2・3回)に見てきた鶏・水鳥形埴輪では、頭部の嘴(くちばし)や鶏冠(とさか)などに加えて、脚先には蹴爪(けづめ)や水掻きなどが表現されていました。
また、同じ四つ足動物の埴輪でも、それぞれに特徴的な体型や頭部表現のほかに、このように動物種によって脚先までが見事に造り分けられていたことが判ります。
これらの独特な表現からは、まずは造形する動物の特徴を的確に捉える、という埴輪製作者(工人)の“基本姿勢”がうかがわれ、その鋭い観察眼と的確な表現力には驚かされます。

このように動物埴輪は、一定のルールに基づいて造形されていたことを想定することができそうです。
埴輪の製作者は、いわば「動物埴輪の“キーワード”」を埋め込むことによって、それを見る人々にメッセージを伝えようとしていたに違いありません。
動物埴輪の性格を知るためには、現代のわれわれも当時の人々と同じ“目線”で埴輪を「見る」ことが重要と思います。
ここに動物埴輪を「読み取る方法」のヒントが見えてきたようです。


さて、そもそもこのような馬は、いつ頃から日本列島に棲んでいたのでしょうか。
また、馬形埴輪に表現されている多種・多様な馬具には、どのような意味があったのでしょうか。
これらのご紹介は少々話が長くなりそうですので、(残念ですが・・・)次回にしたいと思います。

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ところで、前回(第5回)のクイズの答えは、もうお分かりでしょうか。
ヒントは「お尻と脚の向き」にありました。

すでに、これまで(第2~6回)にお付き合い頂いた皆さんは、鳥形埴輪や四つ足動物形の埴輪には相当詳しくなっておられますので・・・、すぐに見つけられたことと思います。

水鳥形埴輪
左:埴輪 水鳥 大阪府羽曳野市 伝応神陵古墳出土  古墳時代・5世紀、右:水鳥形埴輪展示部分(全景)

そう・・・、水鳥形埴輪群の後列右端に“居る”、丸々とした体型の彼(?)です!
(頸部をまったく欠いていますが・・・)水掻きのある右側(右脚)の脚先が向こう側に向いていますので、こちらには(丁度人間の)“踵(かかと)”に見える部分(実は趾(あしゆび)の付け根ですが・・・)が見えています。
よく見ると、翼の羽毛の向きも逆ですね。

大変恐縮ですが、(胴体が向こう向きですので・・・)こちらにはふっくらとした「お尻」を向けています(申し訳ありません・・・)。
失礼致しました!
 

これまでの記事
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方1
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方2─鳥形埴輪・鶏編
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方3─鳥形埴輪・水鳥編
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方4─犬と猪・鹿の狩猟群像
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方5─番外編

カテゴリ:研究員のイチオシ考古

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posted by 古谷毅(列品管理課主任研究員) at 2012年10月08日 (月)

 

書を楽しむ 第23回「池大雅」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第23回です。

いま、本館8室(書画の展開―安土桃山~江戸、10月14日(日) まで)に、
池大雅(いけのたいが、1723~76)の作品が
たくさん展示されています。

まずは、池大雅の作品のうち
一部分を、エンピツで写してみました!


(左) 一行書(部分)  池大雅筆 江戸時代・18世紀 植松嘉代子氏寄贈
(右) エンピツの写し(「此度」のみ)


自由な筆遣いを再現したかったので、
双鉤塡墨(そうこうてんぼく。字の輪郭を線でとって、その間を墨で埋める模写方法)の
ように写してみました。
墨のかすれ具合が特徴的です。

自由な、と言いましたが、
実際に写してみると、
上の文字「此」の空間に前の字「去」が、
下の文字「度」の空間に次の字「還」が、
それぞれ一字であるかのように書かれているのが、
わかりました。
空間をうまく使って書いています。


一行書 池大雅筆 江戸時代・18世紀 植松嘉代子氏寄贈

全体を見ると、バランスよく収まっています。
ところが、下の方、「此」の上の数文字は、とても小さいです。
能書(書の上手な人)の作品は、
変化の妙を見せながら、作品の後半が巧みです。

今回は、池大雅の書が5点もあります。


七言二句 池大雅筆 江戸時代・18世紀  植松嘉代子氏寄贈


江戸時代に、
中国文化の影響を受けて、
文人(ぶんじん)が日本各地で活躍しました。
文人は、絵も書も上手で、
中国の詩を理解し、漢詩を詠んだりしました。
ただ、中国の文人と日本の文人では、
大きく立場が異なります。

それはともかく、
池大雅は、日本を代表する文人として有名です。
描いた絵の評価も高く、
実は、今回、本館8室には、
池大雅の絵もたくさん展示されています。


六遠山水図 平遠 池大雅筆 江戸時代・18世紀

文人・池大雅の世界。
ぜひ本館8室にいらしてください。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2012年10月06日 (土)

 

トーハクで48mの高層神殿体感!

特別展「出雲-聖地の至宝-」(2012年10月10日(水)~11月25日(日))の会期終了日まで
トーハク構内で、古代出雲大社の高層神殿を体感できるARアプリがあります。
ご存知でしたでしょうか?
*AR(Augmented Realityの略)とは、日本語で拡張現実感と訳され、現実の世界にデジタルの情報を付加させる技術のことです。

期間中(9月15日~11月25日まで)、トーハクでスマートフォン・タブレット端末(一部対応していない機種があります)からアプリを立ち上げると本館前の広場に巨大神殿がそびえたちます。
また、その場の風景と神殿を合わせて撮影することもできます。

まずは、アプリ(Android版、iPhone版・iPad版あり)(無料)をダウンロードしてください。
(「AR高層神殿」と検索するとすぐでます)    

google playよりダウンロードApp Storeよりダウンロード

アプリを起動させると、神殿が画面上に出ます。
神殿の方向・大きさをかえることができます。

 
スマートフォンより(イメージ)


iPadより(イメージ)

撮影ポイントが決まったらいざ、撮影!



このように本館と神殿のコラボレーションができます。

本館の高さが約30m、神殿が48m。 
神殿の大きさがわかると思います。

展覧会をご覧いただいたあとは、ぜひ48mの高層神殿を体感してみてください!
そして、現在島根県で開催されている神話博しまねAR神話博のホームページでは
巨大神殿アプリの使い方ガイドフォトコンテストの応募方法が掲載されています。

また、フォトコンテストで入賞すると豪華商品のプレゼントがあります。
皆様、素敵な一枚、楽しい一枚をご応募していただければと思います。

*フォトコンテストの応募締め切りは平成24年10月31日です。

カテゴリ:2012年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2012年10月04日 (木)

 

宇豆柱(うづばしら) トーハクへ!

10月10日(水)より開幕する特別展「出雲-聖地の至宝-」(2012年10月10日(水)~11月25日(日))の準備が着々と進んでいます。
先日、京都国立博物館の特別展覧会「大出雲展」(2012年7月28日(土)~9月9日(日))でも出品されていた「宇豆柱」がやってきました!

「宇豆柱」とは、出雲大社などの大社造りを構成する9ヵ所の柱のうち、
正面中央の棟持柱(むねもちばしら)にあたり古くからそのようによばれてきました。

この「宇豆柱」は、平成12年(2000)出雲大社より出土したもので、出雲大社本殿遺構の棟を支えていた柱材です。


出雲大社境内遺跡模型(島根県立古代出雲歴史博物館蔵)
赤い丸の部分が発掘された宇豆柱です


3本の杉の大木を束ねて1つの柱としており、1本の直径が1.3m、高さ約1.3m、推定重量1.5トンもあります。


重要文化財 宇豆柱
鎌倉時代・宝治2年(1248)
出雲大社境内遺跡出土(島根県・出雲大社蔵)

「宇豆柱」は、1本、1本頑丈な木枠に入れられて運ばれてきました。



木枠を外し、美術用梱包材をとると・・・

ついに、「宇豆柱」がお目見えしました!
とても大きく迫力があります。

早速、島根県立古代出雲歴史博物館と当館の保存修復の担当研究員がライトをあてながら細部まで点検しています。



点検が終わると、すでに設置済みの展示ケースに入れます。



まず、木製の台を展示ケースの高さまでリフトで上げます。
そして、「宇豆柱」の台座の下にはシートをかませすべりやすくし、展示ケースになめらかにすべらすようにして慎重に少しずつ少しずつ押していきます。


声をかけあいながら作業をする人、そして周りでは、固唾をのんで見守る人々

1本の柱を展示ケースに入れるのに2時間近くかかりました。
3本柱を展示ケースに入れ、発掘されたときと同じように周りに石をつめて設置終了です。


全体の雰囲気はぜひ展覧会場でご覧ください!

3本そろっての展示だと迫力が増し見ごたえたっぷりです。
会場でぜひご覧いただきたいのが、柱をたてた当時の人々の「手の跡」です。
運搬時に縄を掛けるのに用いたと思われる孔(画像:上の左の柱)や表面を削った手斧の跡を見ることができます。

「宇豆柱」は特別5室の中央に展示します。
どうぞお楽しみに!

カテゴリ:2012年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2012年09月29日 (土)