特別展「和様の書」を楽しむために─入門編1 和様ってなんだろう
今年の夏、特別展「和様(わよう)の書」(2013年7月13日(土)~9月8日(日)、平成館)が開催されます。この和様というのは、日本の風土や国民性に適合した日本独自の文化をさす言葉です。平安時代も中期になると日本人ならではの美意識や価値観によって、文化は和風化に向かって舵が切られていきました。書の世界も、平安時代の中期に三跡(さんせき)の登場とともに日本的な和様の書へと変貌していきます。
この和様の書とは、中国風な書である唐様(からよう)に対して、日本風の書を指しています。
誤解される人もいるかもしれないので、あえて注記しますが、和様の書とは日本人が書いた書のすべてを指すものではありません。日本でも、奈良時代や平安時代の初めは大半の人々が中国風の書体を目指していました。その後も、中国風の書を学び、これをもとに自らの書を表現する人も表われています。和様の書とは、中国風とは異なる日本独自のスタイルの書のことです。
和様の書の特徴の一つは、筆がやや右に傾くような筆使いで、転折の部分は比較的軽く曲線的で、柔和で優美な書風です。
和様の書 報道発表会でのデモンストレーションの様子
中国風の書は筆をたてて書きます こちらは筆がやや右に傾く和様の書き方
同じ和でも趣が違いますね
ここに、藤原行成の白氏詩巻(国宝・東京国立博物館蔵)の「書」という文字を掲げて見ました。
この優しい筆使い、美しい字形で雅な雰囲気を持つのが、いわゆる和様の書の完成した姿です。
国宝 白氏詩巻(部分) 藤原行成筆 平安時代・11世紀 東京国立博物館蔵
眺めていると、なんだかゆったりした雅な気持ちになったでしょう。
書を鑑賞する際、文字が読めてその内容がわかればより深い理解ができます。ただ、意外に思われるかもしれませんが、たとえ読めなくても、理解できなくても、全体の調和、筆の線の美しさなどは楽しめるものです。
この展覧会は、日本人の感性を基盤にした平安時代から江戸時代までの日本風の書について、その特徴や魅力をご覧にいれます。
この機会に、書を楽しんでみてはいかがでしょう。
カテゴリ:2013年度の特別展
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posted by 島谷弘幸(副館長) at 2013年05月02日 (木)
ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は池田上席研究員に「国宝 大神社展」を解説してもらうほ。
池田さん、よろしくお願いしますほ。
よろしくお願いします。ではさっそく展示を見ていきましょう。
装束に手箱、本当にきれいな宝物がならんでいるほ~!
そうだね、きらびやかだね。たくさんの「古神宝」が展示されていますね。
コシンポー?そりゃなんだほ?
ではまず、「神宝」とは何かをご説明しましょう。
神社には、神が祀ってありますよね。そこで、神々(祭神)がお使いになるものとして、特別に作られた装束や調度品、武具などがそろえられました。
これが「神宝」です。
国宝 表着 萌黄地小葵浮線綾模様二陪織物(うわぎ もえぎじこあおいふせんりょうもようふたえおりもの)
南北朝時代・14世紀 和歌山・熊野速玉大社蔵(5月6日(月・休)まで展示)
ほうほう。ってことは、「古神宝」は『古い神宝』ってことだ!
どうりで古い時代のものばかりだほ。
いやいや、単に「古い」という意味じゃないんです。
今年は伊勢神宮で式年遷宮が行われますね。
こんな風に、社殿や神宝が一定の期間を経て古くなると、それまでと同様の社殿や神宝を新たに製作する「式年造替」が行われる神社があります。
その際、前に納められていた神宝は取り下げられます。この取り下げた神宝を「古神宝」といいます。
そうか!お役目を終えた神宝のことなんだね!
そのとおりです。
古神宝は祭神が使われたものですので、神聖なものとされ、その清浄さを保つために、人目に触れないように焼却あるいは埋納されてきました。
ただ神社によっては再度社殿に納められたり、宝庫などに伝えられてきたのです。
そんな貴重なものがトーハクで一気に見られるなんてすごいほ!
そうなんです。
装束の織文や漆工の文様などをじっくり見てみてください。平安から室町時代の日本の典型的な意匠や美意識がよくわかります。
国宝 橘蒔絵手箱(たちばなまきえてばこ)
南北朝時代・明徳元年(1390) 和歌山・熊野速玉大社蔵(5月6日(月・休)まで展示)
ほぉ~。模様が細かくて色もきれいで、ぼくが見てもかっこいいなと思うデザインだほ。
そうですよね。武具の文様もとても美しく、見ていて惚れ惚れします。
神宝はね、その時代の染織・漆工・金工など最高の工芸技術を使って製作されたんですよ。だって、祭神がお使いになるものですからね。
人の目に触れないとしても、祭神のために技術の限りを尽くしてつくられた神宝。それを見ると、当時の人々の謙虚な思いが伝わってきますね。
神さまのために一生懸命つくった気持ちが、ぼくのハートに響いてくるほ!ぐっと来るほ!
現在は春日大社と熊野速玉大社の古神宝で、5月6日(月・休)まで展示します。
5月8日(水)からは厳島神社、鶴岡八幡宮、熱田神宮の古神宝に展示替えになりますよ。
うほー、すごいところから集まってくるね!後期も見逃せないほ!
池田さん、どうも有難うございました!
国宝 桐文蒔絵平胡簶(きりもんまきえのひらやなぐい)・金銅鏑矢(こんどうかぶらや)・金銅矢、国宝 朱漆弓(しゅうるしのゆみ)
南北朝時代・明徳元年(1390) いずれも和歌山・熊野速玉大社蔵(5月6日(月・休)まで展示)の前にて。
池田宏上席研究員と、トーハクくん(本名:東博・あずまひろし)。ダブルひろしでお送りしました。
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posted by トーハクくん at 2013年04月26日 (金)
あの「七支刀(しちしとう)」が、展示期間が延長され、5月12日(日)まで観られるようになった!!
国宝 七支刀
古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵
[展示期間:5月12日(日)まで]
当初は5月6日(月・休)までの展示予定だったが、奈良・石上神宮の森正光宮司の格別なるご配慮により実現したのだ。
この刀剣がどれほど貴重なものか説明しよう。
教科書でもお馴染みの「七支刀」。
この名は忘れても、その独特の形を示せば、多くの方が「ああ、あれか!」と、ピンとくるはずだろう。それほど有名な刀剣だ。
しかし、実物が展示されることはほとんどない。それは、この刀剣がご神体にも匹敵するものだからなのだ。
この刀剣には、表裏合わせて61文字が金象嵌されている(彫った文字の上に金がのせられている)。
その銘文の解釈には諸説あるが、大意はざっと以下のとおりだ。
「泰和(太和に通じる)4年の吉日に上質の鉄で七支刀を造った。
この刀は多くの敵兵を退ける力があり、侯王にふさわしい。未だこのような刀は百済にはなかった。
百済王・・・(中略)・・・倭王のために造り、後世に伝えられるように。」
これにより、この刀剣が中国・東晋の太和4年(369)に制作され、百済王から倭王に贈られたことが推測される。
「七支刀」は、日本の古代史のみならず当時の東アジア情勢を考えるうえでもきわめて貴重な史料なのだ。
この機会を見逃すなかれ!
並み居る敵を退ける七支刀のパワーを、あなたももらいに来ないか!!
「七支刀」は、第五章 伝世の名品の中盤に展示されている。
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posted by 井上洋一(学芸企画課長) at 2013年04月23日 (火)
1月12日に開幕しました、特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」は4月7日(日)無事に閉幕しました。
最終日は、千光寺の大下大圓ご住職をはじめ、当館副館長島谷弘幸、本展覧会の担当研究員、東洋室長浅見龍介、主催の読売新聞社、NHK、NHKプロモーションの担当者ほか展覧会に関わったスタッフ皆で最後のお客様を見送らせていただきました。
多くの方にお越しいただき関係者一同大変感謝しております。誠にありがとうございました。
この円空仏にずっと浸っていたいところですが、ご出品いただいた作品は終わりしだい高山にご返却しなければなりません。
返却日の朝は、トーハクを午前7時に出発し高速を乗り継ぎ約9時間、まずは千光寺以外のご所蔵者からお借りした円空仏を高山市の収蔵庫に収め、そこから30分ほどかけて千光寺に向かいました。
そして、円空仏を千光寺の「円空仏寺宝館」に搬入し翌日の準備をしたところでこの日は終わりとなりました。
翌日、明方降った雪が少し積もっていました。東京の暖かさが恋しくなるような冷え込みの中、作業開始です。
千光寺 岐阜県高山市(真言宗寺院)
円空仏寺宝館の外では男性陣が集まり作業をしています。この方たちは?
皆さん手際がよくあっという間に作業が進んでいきます。
千光寺の檀家の皆様で、朝早くから来てくださったとのこと。
円空展で使用した様々な造作物を円空仏寺宝館で再利用するために作業されています。
元々円空仏寺宝館の中は白い壁だったのですが、円空展の会場のような黒を基調とした色にしたいというご住職の思いから、トーハクでの展覧会開催中に色を塗り替えたとのことです。展示照明も一新され、ご住職の熱い想いを感じます。
さて、檀家の皆様が作っているものはどのようになるでしょうか。
円空仏寺宝館の中では、展覧会でも大変人気のあった「金剛力士(仁王)立像 吽形」から開梱開始です。
仁王像は226cmもありますので寝かせて運んできました。周りは木枠で囲ってあるので、まずは木枠ごと立たせるところからです。
仁王像を立たせるために大きな滑車を使います。
日通の作業員さんが息を合わせてロープを少しずつ引きはじめるとだんだん仁王像が起き上がってきました。
木枠を入れた総重量は約150kg!慎重に動かしていきます。
無事起き上がり、やわらかい和紙で綿を包んだ梱包用の布団を取ると、仁王像のお顔がでてきました。
ん?ニヤっと笑っているように見えます。
作業を開始した頃より冷えてきました。外に出てみると、なんと大粒の雪が舞っていました。
頭の上にどんどん雪が積もってきます。
外の気温は2~3度、4月とは思えない冬の寒さです。
しかし、雪が降る中、円空仏寺宝館から見る飛騨の山々は大変美しいです。 しばし雪景色に心奪われ、円空仏寺宝館に戻ろうと入口の横を見ると!!
左:短い時間でしたが激しく雪が降りました。
右:白い壁にバナーがとても目立っています。
円空展にお越しになった方は、特別5室に入る手前の上にバナーが下がっていたのを覚えていらっしゃますでしょうか?
そのバナーがこのように円空仏寺宝館に入る方をお出迎えします。
こちらは、先ほど外で檀家の皆様が作っていたものです。
まさか、ここでまたこのバナーと再会できるとは!とても嬉しくなります。
円空仏寺宝館では、仁王像の展示が無事終わりました。
展覧会前は、吽形は円空仏寺宝館入った正面でお客様をお出迎えしていましたが、
阿形(展覧会には保存状態からお出ましできませんでした)の隣に展示されました。
これで阿吽そろっての展示となりました。
金剛力士(仁王)立像 左:吽形 右:阿形 江戸時代・17世紀 千光寺蔵
「吽形おかえりなさい」、お留守番をしていた阿形が思っているかもしれません。
その他の円空仏も展示していきます。
ご住職の息子さんである副住職も一緒に行っています。
一つ一つ表情が皆違う三十三観音立像はこのように展示されました。
三十三観音立像 江戸時代・17世紀 千光寺蔵
向き合っているものもいます。かわらず可愛らしい表情です。
三十一体はぜひ円空仏寺宝館で!
展覧会のメイン作品でもありました「両面宿儺坐像」。これを見て「あっ!」と気づく方。そうです。
なんと、特別5室の造作物をそのまま使用しています。
木をイメージしたデザイン、展覧会をご覧いただいた方は印象に残っているのではないでしょうか。
こちらも檀家の皆様が展示ケースに入るよう切って入れました。
両面宿儺坐像 江戸時代・17世紀 千光寺蔵
ケースに入れるときは一苦労ありましたがぴったりです。さすがです。
さらにこちらも注目!
特別5室入ってすぐ右手に展示されていた「護法神立像」です。
護法神立像 江戸時代・17世紀 千光寺蔵
展覧会前まではケースに入れて展示していた「護法神立像」ですが、少し窮屈でした。
今回展覧会で使用していた森のイメージのスクリーンをはり、壁の前に立たせることにしました。
展覧会では、少し高めの台の上に展示していましたが、今回はより近くでお像を見ることができます。
この他にも見どころ満載です。
トーハクでの展覧会のデザインを取り入れ、そして、檀家の皆様との協力でできあがった円空仏寺宝館。
リニューアルといってもいいほどかわりました。
様々な特別展を開催する中で、お客様の心に何か残ることもあるかと思いますが、一方で会期終了後は、形としてはほとんど何も残りません。
展覧会が終わると、会場から様々なものがなくなり何も残らないことはしかたないことではありますが、展覧会担当者としては寂しい気持ちにもなります。
しかし今回は、円空仏寺宝館がトーハクでの円空展の記憶をよみがえさせるような雰囲気になり、大変嬉しく思いました。
その後、各所蔵先にも無事返却が終了しました。
円空展では普段なかなか見ることができないお像の背面や特別展ならではの照明で表情や造形のすばらしさを見ることができたかと思います。
しかし、お寺や神社などその土地の風土を感じながら見る円空仏には、また違った魅力を感じていただけるかと思います。
ぜひ、高山にお出かけしていただき、今度は円空をより近くに感じながらご覧いただければと思います。
現在、岐阜県高山市一之宮町にある天然記念物の臥龍桜は満開を迎えています。
円空展をご覧いただいた方も、ご覧いただけなかった方も、美しい自然を感じながら円空にかかわる寺社をめぐってみてはいかがでしょうか。
円空展ブログはこれにて終了です。
どうもありがとうございました。
カテゴリ:彫刻、2013年度の特別展
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posted by 江原 香(広報室) at 2013年04月20日 (土)
ほほーい!ぼくトーハクくん!
ここ「国宝 大神社展」では、なにやら神社の宝物が日本全国から大集結しているらしいほ。これは絶対見逃せないほ!
ということでこの展覧会のチーフ、池田上席研究員に解説をお願いしたんだけど、まだちょっと時間があるから…
いきなりグッズコーナーに来てみたほ!
おおっ、面白そうなものがたくさんあるほ~!
まずは展覧会オリジナル「ジンジャークッキー」!(500円(税込))
神社展で、ジンジャークッキー…。ダジャレかほっ!
そうです、ダジャレです。ハート型でかわいいほ。
そして「ジンジャー飴」!(500円(税込))
しょうがとハチミツのお味。ジンジャーパワー、全開っ!
これはこれは、キレイなはがきだほ!和紙風だほ。
ユリノキちゃんにお土産を買っていこうっと。
展覧会オリジナルはがき(和紙風)(1枚 150円(税込))
展覧会オリジナルはがきセット(3枚セット 400円(税込))
重要文化財 春日神鹿御正体(南北朝時代・14世紀 京都・細見美術館蔵)や、
獅子・狛犬(平安時代・12世紀 滋賀・若松神社蔵)など、人気の名宝がモチーフになっているほ。
これはべんり。ばらばらしちゃうチケットをまとめられる、おしゃれなチケットファイルだほ。
左2種 展覧会オリジナルWチケットファイル(280円(税込))
右2種 展覧会オリジナルチケットファイル(260円(税込))
このほかにもたーくさん楽しいグッズがあるんだほ!
グッズコーナーって、楽しくてついつい長居しちゃうよね。皆さんもチェックしてみてくださいだほ。
さて、そろそろ池田研究員が来るころなんだけどなあ。「コシンポー」について解説してくれるんだって。
「コシンポー」って、なんだほ?くわしくは次回のブログを読んでほ!
「国宝 大神社展」は、会期中展示替えがあります。作品リストでチェックしていただけます。
カテゴリ:news、2013年度の特別展
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posted by トーハクくん at 2013年04月18日 (木)