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1089ブログ

さよなら「茶の湯」オールスターズ

青葉が本当に気持ちのよい季節になりました。
日差しも少し強くなって、雨も長くなって、そろそろ梅雨が来るのかなと感じます。

そして特別展「茶の湯」も残すところわずかとなりました。

展覧会の企画は3年前ほどから本格的にスタートして、
そのあいだ私はずーっと平成館展示室の図面とにらめっこの日々でした。
5、60枚は図面を引いたでしょうか…。
これだけたくさんのお茶碗、そして茶入、茶杓や香合といったとても小さな工芸作品が特別展会場である平成館にならぶ機会は珍しく、その形、大きさから照明を当てるのも書画や彫刻とは異なる細やかな工夫が必要です。

とりわけやきもの専門の研究員として、茶の湯のやきものについて
ぜひお伝えしたかったのは、日本ほどやきものを身近に感じている国は他にないということです。

ガラス質のなめらかな釉面の中国のうつわ。
轆轤目が粗く残るざらざらとした朝鮮半島のうつわ。
そして縦に横にヘラによって削られた日本のうつわ。
先人たちは手にとってそうした違いを受け止めて、大切に伝えてきたということ、これだけ個性あふれる名品が集まる機会はめったにないということ、ぜひその素晴らしさをこの展示で再現したいと思いで準備をしてきました。


重要文化財 油滴天目
建窯 南宋時代・12~13世紀 九州国立博物館蔵

古田織部、松平不昧が所持した油滴天目。こちらも大阪東洋陶磁美術館所蔵の国宝の「油滴天目」に負けないくらい魅力たっぷりに輝いています。


国宝 大井戸茶碗 喜左衛門井戸
朝鮮時代・16世紀 京都・孤篷庵蔵
名もなき陶工がスピードにのって轆轤を挽きあげ、ざくざくと削って整える様子が目に浮かぶよう。圧倒的な存在感を放って佇む孤高な姿に心打たれます。


国宝 志野茶碗 銘 卯花墻
美濃 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 東京・三井記念美術館蔵
ほんのりと赤みを帯びた穏やかな火色で、一見優しい雰囲気を漂わせる名碗「卯花墻」にはじつは胴部に大胆に箆目が入り、力強い造形で迫ってきます。

そこで今回、光源を展示台の下に設けた特別な照明を作り、茶碗の側面や高台部分をより良く観ていただけるようにしました。
(協力:デザインオフィスイオ、大光電機、株式会社マルモ)


楽茶碗の展示ケース
(撮影:横山研究員)


作品は重要文化財「黒楽茶碗 銘 ムキ栗」(文化庁蔵)。
360度ぐるりと、ちょっと腰を落として目線の高さを変えてみたりして、楽茶碗の薬の変化や箆削りなど、いろいろな表情を見つけることができます。


重要文化財 黒楽茶碗 銘 俊寛
長次郎 安土桃山・16世紀 東京・三井記念美術館蔵

柔らかい光が当たった胴から裾にかけて、ぐっと横に箆削りが入っているのをみることができます。口が内向し、持つ手にぴったりと収まる絶妙なかたち。
茶の湯が生み出した唯一無二のやきもの、楽茶碗の名品です。



茶碗のみならず、どれもそれぞれに魅力たっぷりの「茶の湯」オールスターズ。
こんな名品が一堂に会する機会は、もうしばらく無いだろう…と、
企画者の一人として展示替えのたびにちょっと寂しい気持ちがしておりますが、素晴らしい作品たちと向き合える時間を大切にしようと心新たにする日々です。

カテゴリ:研究員のイチオシ2017年度の特別展

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posted by 三笠景子(平常展調整室主任研究員) at 2017年05月28日 (日)

 

等伯の松林であそぶ? それとも光琳のつるとあそぶ?

夏休み恒例の親と子のギャラリーでは、トーハク所蔵の国宝のなかでも人気ナンバー1の長谷川等伯筆「松林図屏風」とアメリカ・フリーア美術館所蔵の尾形光琳筆「群鶴図屏風」の高精細複製に、ダイナミックな映像をプラスした体験型の展示を企画しています。



「松林図屏風」(綴プロジェクトによる高精細複製品)
原本=長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀
原本、複製品とも東京国立博物館蔵



群鶴図屏風高精細複製
「群鶴図屏風」(綴プロジェクトによる高精細複製品)
原本=尾形光琳筆 江戸時代・17~18世紀
複製品=東京都美術館蔵
Facsimiles of works in the collection of the Freer Gallery of Art, Smithonian Institution, Washington, DC:Purchase, F1956.20, F1956.21



ここでひとつ質問です。
みなさんにとって、絵画を見る楽しみってなんですか?
美しい風景を眺めてそこに行った気分になれる、とか
かわいいものを見つけて、ほのぼの幸せになれる、とか
絵に込められた祈りに触れて、敬虔な気持ちになる、とか。

絵によって、また見る人にとって、その喜びはいろいろですが、いずれにしても、自分の目で見て、想像したり、感じたりすることが楽しいのではないでしょうか。
トーハクにはたくさんの絵画作品がありますが、ご存じのとおり古いものばかりです。時代を経たもの、伝統的なものの前に立つと、なぜか緊張してしまって、自分なりに自由に見たり、感じたりすることができなくなっていることがありませんか?
いわゆる「敷居が高い」という感覚です。

そこで、考えたのがこの企画。目的は、皆さんの前にある決して低くない敷居をすべてとっぱらうことです。
 


第1会場は「松林であそぶ」
くつを脱いで畳の広間にすわって、のんびり松林図を眺めましょう。もちろんガラスケースなしで。
等伯が描いた松林のその向こうにはどんな風景が広がっていたのか?
松林では何が起こっていたのか?
みなさんの想像力を刺激する映像が、松林図屏風を見る楽しみを広げることでしょう。
 
特別5室会場イメージ
会場には高さ約5メートル、直径約15メートルの半円形のスクリーンを設置。
ダイナミックな映像をお楽しみいただきます。

 


第2会場は「つるとあそぶ」
びょうぶに描かれた鶴たちは、どこから飛んできてどこへ行くの?
子どもたちの動きにあわせて鶴が動くインタラクティブな演出も交えて、まさに、絵の中の鶴とあそんでみてください。
 


このほか、触って楽しむハンズオンコーナーなども企画しています。
詳細は追って、このブログで少しずつ紹介していきます。
この夏はぜひ、お子さんと一緒に、トーハクであたらしいアート体験を楽しんでください。

 
親と子のギャラリー びょうぶとあそぶ 高精細複製によるあたらしい日本美術体験
本館 特別4室・特別5室   2017年7月4日(火) ~ 2017年9月3日(日)

 

 

カテゴリ:研究員のイチオシ教育普及特集・特別公開

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posted by 小林 牧(博物館教育課長) at 2017年05月26日 (金)

 

霊雲寺開基 浄厳の思想

こんにちは、保存修復室の瀬谷愛です。

特集「幕府祈願所 霊雲寺の名宝」(本館特別2室、~6月4日(日))は、中日の展示替えを経て、残すところあと2週間となりました。



リーフレット
リーフレットを作りましたよ!

この、小規模ながらも史上初の一大企画のために、がんばって8ページ、オールカラーのリーフレットを作成しました。
しかも、無料です!
会場に見本がありますので、ぜひ本館インフォメーションでお受け取りください。

さて。

今回、霊雲寺さんの展示をするためにいろいろと新しいことを知りましたが、最も興味深かったのは、やはり浄厳和尚のことでした。


梵書阿字
梵書阿字 浄厳筆 江戸時代・17世紀 1幅 紙本墨書 東京・霊雲寺蔵
一番大事な梵字です。


浄厳は、高野山で修行を始めた若いうちから、梵字研究をとても大切だと考えていました。
梵字は、ただの文字ではなく、この一字一字のなかに、仏とその教えが詰まっている。
形と意義、その力、すべてを理解したうえで真言陀羅尼を唱えなければならないといいます。

なかでも、この梵字。
読みは「ア」、漢字では「阿」と書きます。
「阿(ア)」は、すべての音声、文字、教えの根本となる梵字です。


悉曇三密鈔
悉曇三密鈔  浄厳編  江戸時代・天和2年(1682) 3冊 東京国立博物館蔵
浄厳が梵字の発音や文法、仕組みや意味などについて解説したこの本にも、一番初めに「ア」が。


梵字をマスターした浄厳直筆の梵書。
その霊験は計り知れないと、多くの人が求めたことでしょう。

でも、浄厳は自らの梵書を「無料」では配布しませんでした。
さて、代わりに何を求めたでしょうか??

銭? いいえ。
米? いいえ。

答えは、

「光明真言1日300回念誦すること!」

 
梵書胎蔵界大日如来真言
梵書胎蔵界大日如来真言 浄厳筆 江戸時代・17世紀 1幅 絹本墨書 東京・霊雲寺蔵
皆様ご存知の「ア・ビ・ラ・ウン・ケン」も、浄厳に始まる流派では、五字目に根本の「ア」を混交することで「ア・ビ・ラ・ウン・キャン」と読みます。


こちらの梵書を求める人には、陀羅尼を1日500回課されたそうです。

これはミーハーな気持ちでは達成できませんね。
お金やお米を一度きりで払ったほうがよほど安いような気がします。

しかし、これには浄厳の深い深い想いが詰まっています。

浄厳は常々、次のように語っていたそうです。
「私の恩に報おうとするならば、常に戒律を守って、正しく真言を持誦するように。私の恩のみならず、三世の仏恩、三国の祖師の恩に報いなさい」
と。

そして、真言宗の祖、弘法大師空海も、釈迦が「梵字に通じて自由自在となり、他の者のために解説して、名誉や財をむさぼらなければ、功徳を得るだろう」と言っているので、初心者のために「梵字悉曇字母幷釈義」を著したそうです。

自らが会得したものを、他者に伝え、自らのための見返りは求めない。
というわけです。


幕府祈願所 霊雲寺の名宝」。
リーフレット、無料です。
名誉も財も、求めません。
ぜひ、霊雲寺と浄厳についてご理解を深めていただけましたら幸いです!


ちなみに、
大阪出身・浄厳ゆかりの文化財が下記展覧会に展示されます。あわせてご覧ください。
1) 「木×仏像 飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年」 
4月8日(土)~6月4日(日) 大阪市立美術館
2) 「創建1250年記念 奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝
7月29日(土)~9月24日(日) あべのハルカス美術館
(浄厳関連文化財は大阪会場のみの展示となりますが、本展は、三井記念美術館〔4月15日(土)~6月11日(日)〕、山口県立美術館〔10月20日(金)~12月10日(日)〕を巡回します。)
 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 瀬谷 愛(保存修復室主任研究員) at 2017年05月25日 (木)

 

トーハクでバードウォッチング

こんにちは。博物館教育課の神辺知加です。

季節が春から初夏に移り変わるこの時期、野外では春の訪れを告げる鳥と夏の渡り鳥を見ることができます。上野公園でもメジロ、ヒバリ、ツバメの姿を見かけますし、ゴールデンウィーク明けには森や山でオオルリ、キビタキの美しいさえずりを聞くこともできるでしょう。
そして・・・
ここトーハクではなんとキジ科の鳥がシーズンを迎えています!

さっそくウォッチングできる鳥をご紹介します。
キジ科の鳥の代表、日本の国鳥でもあるキジはつがいで見ることができます。キジ科の鳥であるニワトリ、ウズラ、ライチョウも時間帯、天候に関係なく100%の確率で出会うことができます。

つがいのキジ

つがいのキジ 五代清水六兵衛作 陶製 昭和時代・20世紀

そしてキジ科の中でもっとも美しい鳥クジャクは、アーティストや職人の制作魂を揺さぶるらしくクジャクをモチーフとした美術品は数多く作られています。トーハクの所蔵品にも「孔雀」と名のつく作品は100件以上あります。そのためキジ科の鳥とは分けてクジャクのコーナーを設けて展示しました。クジャクコーナーでは仏さまを描いた絵の中に、仏教の法要でつかう楽器に、刺繍の屏風にといろいろなクジャクを見ることができます。こちらも100%の確率でご覧いただけますし、さらに運がよければベストポジションをキープして観賞することもできます。

クジャクに乗った仏さま
クジャクに乗った仏さま 横山大観模写 紙本着色 明治時代・19世紀

シルクロードを通って伝えられたクジャクの模様
シルクロードを通って伝えられたクジャクの模様 中国・ホータン ストゥッコ・彩色 6~7世紀

さて野外のバードウォッチングでは決して出会うことのない、トーハクならではの鳥をご紹介しましょう。その鳥とは「鳳凰」です。きれいな湧き水しか飲まず、数十年に一度しか実らない竹の実を食し、桐の木にしか宿らないというこだわりの鳥、鳳凰。孔子が論語の中で優れた指導者が現れる時しかその姿を現さない鳥と謳った、鳳凰。その鳳凰が今、台東区上野公園東京国立博物館平成館企画展示室に10羽(単位が羽で良いのかわかりませんが)以上も並んでいます。ぜひお見逃しなく。

仏さまの世界の鳳凰
仏さまの世界の鳳凰 絹製・刺繍 中国・初唐または飛鳥~奈良時代・7~8世紀

布団の図柄になった鳳凰と桐
布団の図柄になった鳳凰と桐 絹製、友禅染 江戸時代・19世紀

また今回の親と子のギャラリーでは、鳥たちをより身近にウォッチングしていただくためいくつかの工夫をいたしました。

工夫その1:親しみやすい作品名
「小学校高学年や日本美術になじみのない方にもわかる」を意識して作品名をつけました。


工夫その2:単眼鏡
バードウォッチングに必需である双眼鏡の代わりに、「美術鑑賞におススメ」が売り文句の単眼鏡を用意しました。細部までしっかりご覧いただけます。

単眼鏡


工夫その3:のぞきケース
小さな作品をぐっと近くでご覧いただけます。

のぞきケース3


工夫その4:キジとクジャクの鳴き声と動画

作品のキジやクジャクの鑑賞の参考にしていただくためご用意しました。動画は上野動物園にご協力いただきました。

キジとクジャクの鳴き声と動画


工夫その5:露出展示

ガラス越しではなく直にご覧いただける鳳凰も2点あります。そのうち1点は触ることもできます。
この鳳凰についてはあえてここには写真を掲載いたしません。ぜひ鳳凰に会いに会場までお越しください。


おまけ

入口の看板は黄色いシールの上に立つと鳥たちに囲まれた写真を撮ることができます。掌に孔雀を乗せたり、肩にキジを乗せるなど楽しんで撮影していただければ幸いです。

フォトスポット

 
 

展示情報
親と子のギャラリー「トーハクでバードウォッチング―キジやクジャク、鳳凰が勢ぞろい―
平成館企画展示室 2017年4月25日(火)~6月4日(日)


関連事業

月例講演会「親と子のギャラリー『トーハクでバードウォッチング―キジやクジャク、鳳凰が勢ぞろい―』の見方と特集展示ができるまで
平成館大講堂  2017年5月27日(土) 13:30~15:00 開場は13:00を予定 
先着380名、聴講無料(ただし当日の入館料は必要)
 

カテゴリ:研究員のイチオシ教育普及特集・特別公開

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posted by 神辺知加 (ボランティア室主任研究員) at 2017年04月29日 (土)

 

幕府祈願所 霊雲寺の名宝

こんにちは、保存修復室の瀬谷愛です。


特集「幕府祈願所 霊雲寺の名宝」が始まりました!


展示風景
THE仏画!

会場は、本館2階、西側の特別2室。
ひと部屋だけですが、濃密な空間になっています。

当館の特集は、基本的に館蔵品と寄託品とで構成するのですが、今回は霊雲寺様のご厚意により、多くの寺宝を拝借することができました。
そのため、はじめに企画したときの私のイメージより、何倍も充実しています。
この機会にぜひ、たくさんの方にご覧いただきたい展示です。


霊雲寺
春が来たなァ~

ご宝物を拝借に伺ったのは、4月3日。
今年は少し遅めだった桜の花が咲き始めたころでした。

博物館から車で10分(距離は近いのですが、とにかく上野の駅前は混んでいる!)。
美術品輸送の作業員さんたちと、しばし春の訪れを味わうことができました。

霊雲寺は、文京区湯島の湯島小学校のとなりに建つ、真言宗のお寺です。
江戸時代の元禄4年(1679)5代将軍徳川綱吉の帰依を受けた、覚彦浄厳(かくげんじょうごん)が幕府祈願所として開きました。

「幕府祈願所」というのは、幕府が建立した、国家安泰や病気平癒などのための祈祷を行なう寺院のことをいいます。
浄厳は、定期的な祈禱のほかに、将軍綱吉の息女鶴姫や大名たちのために祈禱を行なったり、綱吉に経典の講説を行なうなど、多忙な日々を行なっていたことが記録からわかっています。


不動明王像
徳川綱吉筆 不動明王像 江戸時代・元禄8年(1695) 絹本墨画
将軍綱吉からは、こんなご寄進が!


綱吉は、江戸両国の回向院で法隆寺出開帳が行われた翌年の元禄8年(1695)浄厳に自筆の不動明王像を寄進しています。
同じ年には、正月・5月・9月に行なう鎮護国家の祈禱の本尊として「大元帥明王像」も寄進しましたが、こちらは関東大震災で焼失してしまいました。


両界曼荼羅図 両界曼荼羅図
両界曼荼羅図 江戸時代・17世紀 紙本着色
今回の展示のハイライトは、浄厳オリジナル両界曼荼羅です。


さて、一方で、江戸の庶民にも真言を広めようと考えた浄厳は、霊雲寺で「結縁灌頂(けちえんかんじょう)」を盛んに行ないました。
これは、目隠しをして、床に敷いた曼荼羅(壁に掛ける曼荼羅ではなく、床に敷く「敷曼荼羅」)に華(菊)を投げ、華が落ちたところに描かれる仏菩薩と結縁する儀式です。

元禄8年(1695)9月、浄厳が霊雲寺で灌頂壇を開いたところ、
30日間の結縁入壇者数は、34,442人!
毎日1,000人以上が訪れた計算になります。

そして、2年後の開壇では、21日間に89,967人が入壇したといいます。
このペースは、現在、好評開催中の特別展「茶の湯」の入館者数に匹敵します。

やるな、江戸庶民……!

こうして結縁灌頂の評判は広まり、霊雲寺は江戸の幕府と庶民になくてはならない存在となりました。
その様子は、19世紀に出版された「江戸名所図会」にも表されています。


江戸名所図会
江戸名所図会 齋藤長秋著 江戸時代・天保7年(1836)
灌頂の闇よりいでてさくら哉


中央に建つひときわ大きなお堂が、灌頂堂です。
春、霊雲寺で結縁灌頂を受け、目隠しをとって外へ出ると、明るい陽射しが桜にふりそそいでいる。
目隠しの闇とともに、仏と縁を結ぶことで心の闇も晴れた。
そんな特別な場所としての霊雲寺が、宝井其角の句に読まれています。
きっと、ここで結縁灌頂を受けた多くの人が共感できる気持ちだったことでしょう。

6月4日(日)まで。途中5月16日(火)より一部展示替えとなる作品があります。
 

関連事業
ギャラリートーク「幕府祈願所霊雲寺と開基浄厳」
2017年5月16日(火) 14:00~14:30 本館特別2室

 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 瀬谷 愛(保存修復室主任研究員) at 2017年04月27日 (木)