特別展「法然と極楽浄土」その3 福島浜通りと「法然と極楽浄土」
特別展「法然と極楽浄土」(6月9日(日)まで)の主担当を務めました研究員の瀬谷愛(絵画担当)です。
何年もかけて準備してきましたこの展覧会も、東京国立博物館での会期は残りわずかとなりました。
この後は、京都国立博物館、九州国立博物館へと巡回しますが、目黒・祐天寺のご本尊「祐天上人坐像」など、東京会場にしか出品されない作品もありますので、ぜひあきらめずに! お越しいただきたく思います。
思い返すに、特別展の準備は、それはもう、筆舌に尽くしがたいくらい、たいへんなものです。
全体のコンセプトづくり、リストの作成、ご出品のお願いから始まり、作品調査、応急修理の手配。
作品解説、論文の執筆、図録用の写真撮影や手配、図録の校正、校正につづく校正、校正、校正。
ポスター、チラシなど広報の文章執筆やデザインのチェック、会場構成と会場デザインの相談、数センチ単位の図面検討、音声ガイドの台本校正や収録、ジュニアガイドの作成…。
作品の集荷で全国のご所蔵者様をトラックで伺うのがつかの間の楽しみで、館に戻って、緊張の展示作業。
開幕後もテレビ、新聞、雑誌、ウェブ記事の取材対応、講演会、ブログ…。
気が遠くなるほど長く感じる準備期間でした。
それはまるで、極楽に往生していながら、なかなか開かない蓮のつぼみの中でひたすら阿弥陀仏の説法にふれる下品下生(げぼんげしょう)の赤子のような日々。
もう、十二大劫(じゅうにだいこう・とんでもなく長い時間)です。
重要文化財 當麻曼陀羅図(貞享本)(部分) 青木良慶・宗慶筆 江戸時代・貞享3年(1686) 奈良・當麻寺蔵
まさに當麻曼陀羅に描かれるこの赤子のような日々
やっと開いて、会場で多くの方がご観覧なさっているのをみると、あぁ本当にがんばってよかったなと思います。
ずーっと観想していた世界が目の前に広がっている。これこそが研究員(学芸員)の極楽です。
と、同時に、仕事や研究に一生懸命取り組んでいると、思いもよらない巡りあわせのようなことが起きて、驚くことがあります。
今回、広報の最前線に登場いただいていたのは、国宝「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)」でした。
国宝 阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎) 鎌倉時代・14世紀 京都・知恩院蔵(東京会場での展示は終了しています)
早来迎が会期前半で撤収され、後半に展示したのはこちら。
重要文化財 阿弥陀三尊来迎図 鎌倉時代・14世紀 福島・いわき市蔵
福島・いわき市所蔵の重要文化財「阿弥陀三尊来迎図」です。
縦240センチ、横140センチを超える極めて大きな画面に、阿弥陀仏と観音・勢至菩薩が並んで来迎しているところが表されています。
その姿はとても量感的で、美しいです。
この仏画は、同市内に所在する如来寺というお寺に伝来しました。
こんなに大きな仏画を掛けられるというだけで、いかに立派なお寺かということが想像されます。
如来寺は14世紀初頭に名越(なごえ)派3世・妙観によって開かれた古刹(こさつ)で、鎌倉光明寺の開山・然阿良忠(ねんなりょうちゅう)の弟子であった尊観から始まる名越派の檀林(僧侶の養成機関)として多くの学僧を輩出しました。
本展ではそのはじまりのとき、尼僧真戒が如来寺の前身と伝えられる庵に安置したという本尊「阿弥陀如来および両脇侍像(善光寺式)」(5月12日まで)も展示しました。
そうしたなか今回は国宝「綴織當麻曼陀羅」が奈良県外で初めて出品されるということで、染織の仏教美術にも着目し、『繡仏(しゅうぶつ)』(日本の美術470、至文堂、2005)を執筆された九州国立博物館の伊藤信二さんから繡仏の名品を選んでいただきました。
そのなかに福島・阿弥陀寺所蔵の重要文化財「刺繡阿弥陀名号」がありました。
阿弥陀寺は福島・南相馬市に所在する浄土宗寺院で、妙観の孫弟子にあたる源尊が開いた古刹です。
重要文化財 刺繍阿弥陀名号 鎌倉~南北朝時代・14世紀 福島・阿弥陀寺蔵(東京会場での展示は終了しています)
こちらは縦63センチ、横19センチという小さな作品ですが、下地の絹を刺繡で覆いつくす「総繡」と呼ばれる仕上げで、表装となる部分も刺繡されており、全体が制作当初の姿を美しく残すという点でも、稀有で優れた繡仏の代表作と評価されています。
「南無阿弥陀仏」の名号部分は、毛髪を刺しているんですよ。
中世の繡仏ではよくある技法だそうですが、制作者の思いの強さが伝わってきます。
今回の展覧会では近世の浄土宗の広がりにも着目しまして、17世紀初頭に琉球に浄土宗を広めた袋中(たいちゅう・1552~1639)にふれました。
一説に沖縄のエイサーは袋中が伝えた念仏踊りを起源に持つともいわれています。
袋中上人像 尚寧王筆・讃 江戸時代・慶長16年(1611) 京都・檀王法林寺蔵(東京会場での展示は終了しています)
袋中は増上寺の学寮で白幡派(良忠の弟子・良暁の一派)を極め、郷里の古刹・成徳寺13世となります。
成徳寺の開山は聖観といって妙観の弟子、源尊の師にあたります。
そして袋中の出身地は、奥州菊多郡岩岡(現・福島県いわき市)。
おや? いわき…
第4章「江戸時代の浄土宗」展示風景
(右手前)祐天上人坐像 竹崎石見作 江戸時代・享保4年(1719) 東京・祐天寺蔵
そして、同じく本展を担当した研究員・長倉の1089ブログ「特別展「法然と極楽浄土」その1 浄土宗にまつわる江戸時代の書」でもご紹介した、
東京会場のみでご覧いただける東京・祐天寺のご本尊「祐天上人坐像」と祐天寺の多くのご寺宝。
祐天(1637~1718)は、大巌寺(だいがんじ)、弘経寺、伝通院の住持を歴任し、増上寺36世となった高僧で徳川5代将軍・綱吉やその母・桂昌院、そして大奥の女性たちや江戸の多くの民衆から多大な帰依を受けた方でした。
その祐天の出身地は、陸奥国石城郡(現・福島県いわき市)。
んん?? いわき…!!
当初まったく意図していなかったので、ここにきて福島浜通りのつながりに気づいてたいへん驚きました。
考えてみればこれはただの偶然というよりは、奥州における名越派のつながりが優秀な僧侶と文化財を生むにいたった必然、とみることができるのではないでしょうか。
実は私がこの展覧会の担当になったのは、13年前、2011年秋に当館で開催した特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」を担当したご縁があったからなのですが、当時、開催の半年前に東日本大震災が起きました。
阿弥陀仏はすべての人を平等にあまねく救うことを誓い、悟りを得たといいます。
誰も置いていかない。誰をも忘れない。
仕事の巡り合わせとはいえ、いろいろなことを考え、感じました。
今回の展覧会の準備が佳境に入っていた今年1月には、能登半島で大きな地震が起きました。
まだ多くの方が不自由な生活をされていますし、余震も続いています。
どんなに準備をしても、展覧会は会期が終われば、記憶の中だけに残ります。
このような機会に10万人を超える方々がわざわざ上野までご来場くださり、過去の多くの人々の想いの結晶にふれていただけたことに、とても感謝しています。
本当にありがとうございました。
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posted by 瀬谷愛(登録室長) at 2024年06月06日 (木)
まもなく閉幕を迎える特別展「法然と極楽浄土」(6月9日(日)まで)は、来場者10万人を突破しました。
これを記念し6月5日(水)午前に、静岡県浜松市からお越しの新美 幸二さん・久美子さんご夫妻に、当館館長の藤原誠より記念品を贈呈いたしました。
記念品贈呈の様子。新美さんご夫妻と藤原館長(右)
新美さんご夫妻はよく寺院にお参りになられ、仏像などをご覧になる機会も多いそうです。
本来安置される空間での対面もさることながら、こうした展示室で仏教美術を細部まで鑑賞できる機会を楽しみにして頂いているとのことでした。
今回はこれまでに見たことのない作品との出会いに期待して、本展へはるばるお越し下さったとのことです。
浄土宗の開祖・法然の時代から近世に至るまで、浄土宗の長い歴史を通覧する初めての試みである特別展「法然と極楽浄土」も東京会場の会期は残すところあと4日ばかり。
本展は今年秋に京都国立博物館(会期:2024年10月8日(火)~12月1日(日))、来年秋に九州国立博物館(会期:2025年10月7日(火)~11月30日(日))へと巡回しますが、関東所縁の寺院ご所蔵のご宝物などは東京国立博物館のみでの展示となります。
時を越えて多くの人々の想いが託された、善美なる祈りのかたちの数々をこの機会にどうかお見逃しなく。
カテゴリ:「法然と極楽浄土」
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posted by 中束達矢(広報室) at 2024年06月05日 (水)
開催中の特別展「法然と極楽浄土」(6月9日(日)まで)で彫刻作品の担当をしています研究員の浅見です。
私からは本展覧会で唯一写真撮影可能な作品であり、様々なグッズ化もされて大変話題の香川・法然寺所蔵の仏涅槃群像(82軀のうち26軀を展示中)について紹介します。
第4章「江戸時代の浄土宗」 仏涅槃群像 26軀(82軀のうち) 江戸時代・17世紀 香川・法然寺蔵 会場展示風景
この群像は高松藩初代藩主・松平頼重(1622-1695)の構想によるものです。
頼重は水戸徳川家の光圀の実兄です。城下の上水道整備などの工事も行いましたが、寺院の造営、造仏にも熱心でした。
法然寺だけでも十王堂に十王坐像、来迎堂に阿弥陀如来と二十五菩薩立像、三仏堂に三世仏(阿弥陀如来、釈迦如来、弥勒菩薩)坐像と仏涅槃群像82軀など100体を超える像があります。いずれも京都の仏師に注文したものです。
明治9年(1876)に香川県から求められて提出した法然寺の記録に、
<涅槃之尊像・聖衆・羅漢・長者居士・天龍八部之像并五十二類之形相> とあります。
末尾の「五十二類」というのは『涅槃経』で釈迦入滅の時に集まった生き物が羅漢等を含め52種類とあることによります。
明治33年(1900)の記録では、像の名称を挙げた後、動物については一括して「鳥獣類 五十二類」とあり、動物の彫刻が52点あったようにも読めますが、現在は45点です。
そのうち、うさぎの像底には銘文があります。
仏涅槃群像 のうち うさぎ(像底部分)☆
(注)仏涅槃群像の写真のうち☆印があるものは京都国立博物館・岡田愛氏が撮影したものです。
このうさぎについては明治16年(1833)に調えた、つまり造ったということですから、現存する動物がすべて同じ時に造られたのではなく、後世加えられたものもあったのです。
また、明治33年の記録では尊像(仏)の名前を列挙していますが、現存どの尊像が誰であるか同定するのが難しいものが少なくありません。
確実なのは阿難(あなん)と阿那律(あなりつ)です。記録には「阿難臥像(あなんがぞう)」とあるので、まずこの横になっているのが阿難です。
仏涅槃群像 のうち 阿難像☆
ちなみに様々に描かれた「仏涅槃図」ではうつ伏せ、仰向けの2種類の姿が見られます。
ご紹介した法然寺の像のように右肩を露出する画像もあります。
左:上:仏涅槃図(部分)鎌倉時代・14世紀 東京国立博物館蔵(本展覧会の会場では展示されていません)
右:下:仏涅槃図(部分)鎌倉時代・14世紀 東京国立博物館蔵(本展覧会の会場では展示されていません)
そして阿那律は「立像 雲上ニアリ」と記されるので、摩耶夫人の前にいるのがその人です。
仏涅槃群像 のうち 摩耶夫人・侍者・阿那律立像(本展覧会の会場では展示されていません)
釈迦を産んで七日後に亡くなった生母・摩耶夫人は天界の忉利天(とうりてん)にいたので、釈迦の危急を知らせに行き、先導して駆け付けるところです。
天井から吊るしてそれを再現するなど非常に劇的な表現です。
そのほか記録の名称と同定できる像は以下のとおりです。
左:上:仏涅槃群像 のうち 阿修羅坐像☆ 右:下:仏涅槃群像 のうち 足疾鬼坐像☆
左:上:仏涅槃群像 のうち 韋駄天坐像☆ 右:下:仏涅槃群像 のうち 難陀龍王坐像☆
ところで、この法然寺の釈迦像はかすかに目を開けています。
仏涅槃群像 のうち 仏涅槃像(上:部分☆ 下:左目部分画像を右に90度回転したもの)
会場ではなかなかわからないと思いますが、玉眼(目を刳り抜いて、裏から水晶の板を当てる技法)をはめています。
こちらも涅槃図に表される姿では目を開くものと、瞑るものの両方が見られます。
仏涅槃図(部分) 鎌倉時代・14世紀 東京国立博物館蔵(本展覧会の会場では展示されていません)
こちらの作品では眼を開けています
仏涅槃図(部分) 鎌倉時代・14世紀 東京国立博物館蔵(本展覧会の会場では展示されていません)
一方、こちらの作品では眼を閉じています
このほかにも比較をすると、図像の中には法然寺の涅槃群像と似たものを見つけることができ、造像に際して参照した画像があることが想像できます。
カタツムリが登場する鎌倉時代の仏涅槃図もあります。
会場にお出ましの26軀を本展覧会でご覧になった後は、釈迦と合わせて82軀という全体像をぜひ現地でもご覧ください。
法然寺は高松琴平電気鉄道 高松築港駅(JR高松駅徒歩すぐ)から琴平線(通称:ことでん)に乗って17分、仏生山(ぶっしょうざん)駅で下車、のんびり歩いて15分ほどです。
境内には美味しい讃岐うどん屋さんが、また近くには温泉もあります。
(注)涅槃群像は本展覧会の巡回で今年秋に京都国立博物館(会期:2024年10月8日(火)~12月1日(日))、来年秋の九州国立博物館(会期:2025年10月7日(火)~11月30日(日))にもお出ましいただき、お寺に戻るのは2025年12月中旬頃の予定です。
↓ 以下、広報室編集担当より
左奥:仏涅槃群像 のうち 象 をモチーフにした「象ぬいぐるみ(税込3,300円)」他、展覧会限定グッズも会場内特設ショップで好評販売中。
是非皆様の枕元にもお迎えください。...おや、猫に...見られている..?
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posted by 浅見龍介(彫刻担当) at 2024年05月22日 (水)
特別展「法然と極楽浄土」その1 浄土宗にまつわる江戸時代の書
6月9日(日)まで開催中の特別展「法然と極楽浄土」のみどころを本展担当研究員がご紹介する1089ブログ。
1回目は、書跡・歴史担当研究員の長倉がお送りします。
本展覧会のみどころのひとつは、法然上人の生きた時代に限らず、江戸時代に至るまでの浄土宗の歴史をおみせしていることです。
ここでは特に第4章「江戸時代の浄土宗」に展示している作品の中から、注目していただきたい書跡をいくつかご紹介します。
まずは伝徳川家康筆「日課念仏」です。
日課念仏 伝徳川家康筆 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵
一度見たら忘れられないこのびっしり感。
名号「南無阿弥陀仏」が整然と、そして隙間なく書かれています
この作品は、徳川家康が晩年に書いたものといわれます。生涯における「罪」を滅しようと、筆を動かしながら、名号を一心に称えたのでしょう。
日課念仏 伝徳川家康筆(左:1段目部分 右:2段目部分)
1段目画像中央、また2段目にも「家康」の文字が確認できます
上から1段目と2段目に「南無阿弥家康」と書かれていますが、なぜこう書いたのかは残念ながら分かっていません。
第4章「江戸時代の浄土宗」展示風景
(右手前)日課念仏 伝徳川家康筆
(左奥)重要文化財 徳川家康坐像 江戸時代・17世紀 京都・ 知恩院蔵 は4月30日から展示中
つづいてご紹介するのは、祐天寺(東京都目黒区)所蔵の「名号」作品の数々です。どれも祐天上人自筆のものです。
祐天上人は弘経寺、伝通院、増上寺などの住持をつとめ、念仏布教に尽力した江戸時代前~中期の高僧です。
この名号を手にすると利益があるといわれ、幕府大奥から一般の人々まで、大変な人気を博しました。
左:六字名号 江戸時代 ・17~18世紀 東京・祐天寺蔵
右:阿弥陀像並六字名号 江戸時代 ・17~18世紀 東京・祐天寺蔵
見どころは、まず筆の太さと四角張った字姿から感じられる圧倒的な存在感です。余白を詰めたような筆の運びも、文字の濃縮度を高めていて独特です。
この文字をみて歌舞伎の看板を思い起こす方もいらっしゃるかと思いますが、歌舞伎の書体が生まれたのは祐天上人の生きた時代からさらに半世紀以上も後のことです。
左:宝塔名号 江戸時代・元禄12~13年(1699~1700) 東京・祐天寺蔵
右:十念名号 江戸時代・元禄13年~宝永元年(1700~04) 東京・祐天寺蔵
祐天上人自筆の名号は天井に届く大きなものから、懐に入れて持ち歩けるものまで、大小さまざまなサイズがあります。
それは人々の求めに応じてカスタマイズして作ったからといわれています。
宝塔を名号で描いた作品もあり、独特のデザインが目を引きます。
第4章「江戸時代の浄土宗」展示風景
(右手前)祐天上人坐像 竹崎石見作 江戸時代・享保4年(1719) 東京・祐天寺蔵
ほかにも江戸時代の書跡を多数展示しています。
法然上人の教えが世代をこえてひろく人々に浸透し、受け継がれていく様子を、実際の作品を通して感じ取っていただければと思います。
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posted by 長倉絵梨子(書跡・歴史担当研究員) at 2024年05月20日 (月)
本日4月16日(火)から、平成館で特別展「法然と極楽浄土」が開幕しました。
特別展「法然と極楽浄土」会場入口
今年、浄土宗開宗850年を迎えることを機に、全国の浄土宗各派のご協力を得て名宝が集結!
法然(ほうねん)による浄土宗の立教開宗から、弟子たちによる諸派の創設と教義の確立、徳川将軍家の帰依(きえ)によって大きく発展を遂げるまでの歴史を通覧できる初めての機会となります。
第1章「法然とその時代」 法然上人像の展示風景
(注)会期中展示替えあり
法然(1133~1212)は、「南無阿弥陀仏」と称(とな)えることによって誰もが等しく阿弥陀仏に救われ、極楽浄土に往生することを説き、浄土宗を開きました。その教えは貴族から庶民に至るまで多くの人々に支持され、現代に至るまで連綿と受け継がれています。
本展は東京、京都、九州の3会場を巡回し、それぞれの地域ゆかりの宝物もご覧いただけます。最初に開幕する東京会場の見どころの一部をご紹介します。
関東の浄土宗寺院に注目!
五百羅漢図(ごひゃくらかんず) 狩野一信筆 江戸時代・19世紀 東京・増上寺蔵
(注)会期中全100幅のうち、24幅を展示予定(展示替えあり)
祐天上人坐像(ゆうてんしょうにんざぞう) 竹崎石見作 江戸時代・享保4年(1719) 東京・祐天寺蔵
通期展示
東京会場では、中世の古刹(こさつ)である鎌倉市の光明寺(こうみょうじ)、徳川家康が菩提所に定めた港区の増上寺(ぞうじょうじ)、将軍家ゆかりの茨城県常総市の弘経寺(ぐぎょうじ)、目黒区の祐天寺(ゆうてんじ)など、関東浄土宗寺院の宝物にも注目してご紹介します。
スケールの大きな展示!
仏涅槃群像(ぶつねはんぐんぞう) 江戸時代・17世紀 香川・法然寺蔵
通期展示
「仏涅槃群像」は、通常絵画として表される釈迦入滅の場面を、群像で立体的に表している作品です。多数の像のうち、東京会場では2メートルを超える大きさの涅槃像と、羅漢、八部衆、動物など26体を展示します。
「仏涅槃群像」は写真撮影可能となっておりますので、群像の世界に入り込んだような感覚で記念撮影もお楽しみいただけます。
他にも、東京初公開である国宝「綴織當麻曼陀羅」(中国・唐または奈良時代・8世紀、奈良・當麻寺蔵、4月16日(火)~5月6日(月・休)展示)や、修理後初公開の国宝「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)」(鎌倉時代・14世紀、京都・知恩院蔵、4月16日(火)~5月12日(日)展示)など、浄土宗を代表する名品をご覧いただける貴重な機会です。
(注)「曼陀羅」の表記について、本展では奈良・當麻寺蔵の作品は「陀」の字を使用しています。
本展東京会場は、アーティストで浄土宗僧侶でもある西村宏堂さんに広報サポーターを務めていただいています。
特別展といえば、音声ガイドも楽しみのひとつ!本展の音声ガイドナビゲーターは、歌舞伎俳優の松本幸四郎さん、市川染五郎さんです。
会期は6月9日(日)まで(会期中、展示替えがあります)。
展示作品リストは当館ウェブサイトからもご覧いただけます。
特別展「法然と極楽浄土」 作品リストに移動する
今後、1089ブログで本展担当研究員が本展の見どころをご紹介していきますのでお楽しみに!
カテゴリ:「法然と極楽浄土」
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posted by 苅米紀子(広報室) at 2024年04月16日 (火)