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「インドの仏」の見どころ(2)~日本側からみたインドの仏の魅力~

ほほーい! ぼくトーハクくん!
今日は特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」を担当している研究員の三田さんと待ち合わせなんだほ。
今日はわたしも一緒です。どんなお話が聞けるのか、楽しみだわ。

 
今回はふたりで表慶館に行ってきました

こんにちは、トーハクくん。
(※写真はイメージです)
トーハクくん、ユリノキちゃん、はじめまして。
(※写真はイメージです)
あれ? 三田さんと・・・となりの人は、誰なんだほ???
こんにちは。奈良国立博物館で研究員をしている山口隆介です。
山口くんとは、大学のゼミが一緒だったんだよ。普段日本の仏像を研究してる山口くんの目に「インドの仏」はどう見えるのかな、と思って、登場してもらいました。
ふたりの話が聞けるなんてラッキーなんだほ! うれしさ2倍だほ!!
三田さん、山口さん、今日はよろしくお願いします。

法隆寺宝物館にもインド風の顔をした菩薩像があるけど、7世紀の日本にインド風の彫刻様式がどのようにして入ってきたのか最近興味があるんだよね。


重要文化財 観音菩薩立像
飛鳥時代・7世紀
東京国立博物館蔵
展示期間:~5月19日(火) 法隆寺宝物館第2室


日本における「インド風」というは、あくまで中国というフィルターを通して見たインドなのかな? 実際にインドの仏像を日本人が目にする機会はなかったんだろうか。うーん・・・。
さ、さっそく濃い内容ね。
展覧会のサブタイトルは「仏教美術の源流」なんだけど、日本側の目からインドの仏像を見ていくと面白そうだね。
わくわくするほ!

 
仏立像
サールナート出土 グプタ朝・5世紀
コルカタ・インド博物館蔵


会場に入って最初の仏像がこれだね。素晴らしい仏像だね~!
グプタ朝に造られた仏像だよ。
丸いお顔にピンポン玉を割ったような肉髻(にっけい)、たっぷりした唇なんか、奈良・法隆寺の金堂壁画の阿弥陀さまにも通じる造形だよね。
グプタ朝はインドの仏像彫刻が最も完成した時期で、後の時代にも大きな影響を与えているんでしょ?
確かに完璧な彫刻だね! しなやかな身のこなしなんかは、天平彫刻にも通じるなぁ。
それにしても、薄い衣を通して均整のとれた身体が感じられるっていう繊細な表現だけど、身体はわりと抽象的で、裸を感じさせながらも卑俗じゃないよね。何が人体と違うんだろう?
ぼくも考えてみたんだけど、結局、鎖骨とかお腹とか関節のくぼみがなくて、各パーツが丸く円満な形なんだよね。関節のくぼみとか、リアルな人体を感じさせちゃうでしょ? そういうところが違うんじゃないかな。
あー確かに! おヘソのヘコミは表現してるけど、実際の肉体に基づくのなら、先に乳首の部分が盛り上がらないのは変だね。
極限まで衣は薄く表現する一方で、身体に抽象性を持たせてる。それが卑俗な肉体を脱して理想的な仏の姿を完成させてるんじゃないかなぁ!!
山口さんの正体がわかったほ。山口さんは、仏像マニアなんだほ。
仏像に関しては、昔からマニアックだったもんなー。
やっぱり!


仏坐像
ロリアン・タンガイ出土 クシャーン朝・2世紀頃
コルカタ・インド博物館蔵
Photo(c)Indian Museum, Kolkata


この仏坐像は肉体の充実感が素晴らしい!!
山口くん、ますますのってきたね。
第2室では、仏像が誕生したガンダーラとマトゥラーの仏像を中心に据えて、いろいろな如来像を集めてるんだけど、この仏坐像はガンダーラ彫刻の中でも名品中の名品だよね。
ところでこのお像、上半身は正面からの視点で彫られているけど、脚の部分は斜め上から見たように造られてるのが面白いよね。
脚部だけ俯瞰表現というのは、東大寺大仏の蓮弁に表わされた如来像にもあるけど、どうしてこういう風につくるんだろう。
造られた当時は、どのくらいの高さに安置されていたんだろうね。
普通に脚を造ると下から見えなくなるから、このお像は視点を低く設定してるんじゃないのかな。
あと、横からみると平たい形をしてるから、材料の制約もあるんじゃないかな。
限られた奥ゆきのなかで、正面から見た時に最も立体的に感じられる工夫として脚を俯瞰で表わすんだろうね。
そうした表現法が絵画にも通じているのは、彫刻と絵画の関係を考える上でも面白いよね。
なるほどー!! 勉強になりますっ(汗)。
三田さんもたじたじね。
口をはさむ隙がまったくなかったほ。

次は2階の展示室の作品を見てみようか。
きれいな階段だねー。表慶館に来るのは特別展「スリランカ‐輝く島の美に出会う」以来かな?



表慶館のこの雰囲気は、今回の展覧会にぴったり、というお客様のお声も聞くわ。
表慶館は奈良国立博物館のなら仏像館と同じ片山東熊(かたやまとうくま)の設計で、当時皇太子でいらっしゃった大正天皇のご成婚を記念して計画された建物なんだよ。
階段の曲線とか、内装も美しいよね。
三田さんの表慶館愛もなかなかのものなんだほ。
2階の第3室には菩薩の像を集めてあるんだけど、なかでもイチ押しなのがこの菩薩頭部!!


菩薩頭部
ペシャワール周辺出土 クシャーン朝・2世紀頃
コルカタ・インド博物館蔵
Photo(c)Indian Museum, Kolkata


漆喰でつくられた作品で、うっとり微睡むようなお顔が美しすぎて感動しました!!
今度は三田さんが興奮しているわ。
三田くん、こういう作品好きだよね。イチ押しするのもよくわかる(笑)。
もとは斜め横を向いていたのかなー。正面からみるとお顔が左右で不均衡だけど、そこに特有の魅力があるよね。
なんだか奈良・興福寺の仏頭に通じる美しさを感じるなー。
髪の毛が「8」の字形に束ねられているのは弥勒菩薩とも共通するから、もとは如来像の脇侍として、向かって左側に立っていた可能性があると思うよ。
1階にあった仏三尊像も脇侍が弥勒と観音だしね。


仏三尊像
ロリアン・タンガイ出土 クシャーン朝・2世紀頃
コルカタ・インド博物館蔵
Photo(c)Indian Museum, Kolkata


髪の毛が生クリームみたいだほ。おいしそうだほ。
トーハクくん、わかってるねー。ほんと、やわらかな髪の表現だよね。
ガンダーラ美術っていうと石のイメージだけど、石とは違った、やわらかな質感がよく表れてるよね。
今は正面向きに展示してあるけど、いろいろ角度を変えながら見て、自分なりに美しいと思うアングルを発見するのも楽しいと思うよ。
本物を実際に見ることでしかわからないってことね。
日本でも法隆寺の塔本塑像とか、やわらかな表現の仏像があるよね。
そう思うと、グプタ朝の仏立像から見始めたけど、7世紀の日本とインドの仏像には造形の深いつながりを感じたなー。
何だか「仏」欲に火がついた! 今日はこのあと法隆寺宝物館に行って、片っ端から金銅仏を見るぞ!!
「インドの仏」を観た後に法隆寺宝物館に行く、この贅沢。
ふたつを見比べることで、より仏像への理解が深まると思うよ。日本における「インド風」も気にしながらね。
それはイイね! 宝物館は、5月20日(水)以降は、2016年3月14日(月)までメンテナンスのため休館しちゃうから、いまが見納めだよ。
それは行かなくちゃだほ!
特別展「インドの仏」もいよいよラストスパートね。
「インドの仏」と法隆寺宝物館、ふたつを見られる貴重な機会です。皆様、お見逃しなく。
三田さん、山口さん、今日はありがほーございました。

カテゴリ:研究員のイチオシ2015年度の特別展

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posted by 三田覚之(教育普及室研究員) at 2015年05月11日 (月)