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まだまだ続く?女性画家

安藤(以下A):瀬谷さん!特集陳列「女性画家」も残すところあと10日になりましたね。(平成館企画展示室、2012年7月29日(日)まで)

瀬谷(以下S):絵画の展示としては長い8週間という期間に設定したので、展示替をはさんで、たくさんの作品を見ていただいてます。
まあ、「展示替がある」というのは、お客様の立場になると恨めしいものですけれど・・・

A:一度で全て見られないですもんね。でも、それだけ女性画家の作品があるということで、前・後期とも是非見に来ていただきたいです。
現在展示中の作品で注目なのは、なんと言っても、皆さんご参加いただいているご様子の「あなたが選ぶ女性画家No.1は?」でダントツトップを維持している、跡見花蹊筆「草虫」です!!

跡見花蹊筆
草虫 跡見花蹊筆 明治5年(1872)

S:跡見花蹊の人気は会期当初からずっと高いですね。
ラグーザ玉や葛飾応為の方が知名度が高いと思っていたのですが、今回のラインナップでは跡見さんのパッと華やかな作品に皆さんがひかれるのかもしれません。

A:そうそう、作品の良さもあるし、あとはやはり、今回の躍進には跡見学園関係者のみなさんの後援があるのかなぁと・・・。
花蹊の勝因は後進を育てた点にあるのではないかと思っています。

S:あと女性画家で人気が高いのは、同時期に本館18室で展示するため今回の企画には入れなかった上村松園。
松園は2年前に東京国立近代美術館でも個展が開かれましたし、知名度もあるので、今回のラインに入れると逆に浮いてしまったかもね。

A:そうですね。それにどちらかというと、投票も展示も、これからまだまだ魅力発掘できる女性画家たちを皆さんに知ってほしい、見てほしいという気持ちがありました。

S:見てくるとつい感情移入してしまうと思うけれど、安藤さんとしては、ひそかなイチオシはどの作品?

A:私のひそかなイチオシは、応為の『煎茶手引の種』です!!
ちっちゃいけど、目を凝らすとみんなの会話が聞こえてくるんですよ。
たとえばねー、ここ↓

煎茶手引の種(部分に加工) 山本都龍軒著 葛飾応為画 江戸時代・嘉永元年(1848) 徳川宗敬氏寄贈
煎茶手引の種(部分に加工) 山本都龍軒著 葛飾応為画 江戸時代・嘉永元年(1848) 徳川宗敬氏寄贈

  「あ!ちょっと、おみっちゃん(仮)!」
  「あら、おさよちゃん(仮)?」
  「今日またあそこで、おだんご食べてから帰ろ!」
  って絶対言ってるでしょ。で、となりのおねえさんは、お茶碗運びながら「アー忙しい、忙しい」って思ってる。

S:ははは!言ってる!
絵を見る楽しみって、絵と画家と自分のひそかな対話、妄想にもあるね。

A:そう、妄想です(笑)!!

S:絵を見るということでいえば、実のところ、そもそも今回の「女性画家」というくくりでの特集陳列ってどうなんだろう?という自問は、ずっと心にありますね。
今は、職業でも性差を表だって出さないことが主流になっているので、あえて女性の画家だけを取り出すのはどうかな、とか。
でも実は、作品だけ見て、「これは女性の絵だ」と見抜くのはかなり難しいと思います。

A:そうそう、落款とか手がかりがなければ絶対無理だと思う。

S:ね。だからあえて、そんなところも全部ひっくるめて提示してみたかったというか。
  結果として、来場者の方たちがそれぞれの背景や見方を投影しながら鑑賞してくださって、楽しんでくださっているようで、よかったなと思っています。

A:そうですね。でも、全部ひっくるめたかったから、余計に「女性画家」についてあまり偏った印象を与えたくなくて、展示のイメージをどういう方向へ持っていくかは難しかったなぁ。
年表などのパネルも「青紫andシンプル」×「ピンクandファンシー」という無茶苦茶なイメージで作ってもらいましたし(笑)

S:今回の会場デザインに関しては、
  「女性画家の展示だから、美しくしなければならない」
という意見もいただいたけど・・・それはまあ、どの展示にも同じことで。

A:んーでも、「美しく」って重要ですよね。
私の思う「女性画家」のイメージは要するに「澤穂希選手×きゃりーぱみゅぱみゅ」なのですが、それぞれに美しいです。
初めに考えていたタイトル「十一人の女性画家」も「なでしこジャパン」に由来しているし、
様々な人生を歩んで輝いている女性たちにスポットを当てて、元気が出る企画にしたいなーと思っていました。
でも、最終的には11人にとどまらず、女性画家はもっといるということを伝えられることになりましたね。

S:そうね。本当はまだまだたくさんいる。
今回は、東博のコレクションからだけだったけれど、それでもわからないことがたくさんありますし、ちょうど今、実践女子大学を中心に進められている女性画家の総合的な研究には、学界も注目、期待しているところです。

あと、「あなたは誰派?女性画家タイプ診断」どうだった?
今までのトーハクにはなかったような「冒険」のつもりだったけれど、本音としては、もっとはじけてみたかった・・・

A:確かに!!担当A案では、画家本人の言葉は「お姉さま方からの導きの言葉(キラキラ)」っていう感じのコーナーにしてました。良いと思ったんだけどなー(笑)
それにしても、このコンテンツを作るのはかなり面白かったですよね!
それぞれの人生の要素を抽出して、確実に当てはまれば「はい」、それ以外は「いいえ」で診断を進めていくので、事実に基づきながら良い具合に仕上がったのではないかと思います。
驚いたのは、意外な人同士の人生の要素が似ていたこと。例えば、山崎龍女と江馬細香とか、跡見花蹊と中林清淑とか、葛飾応為とラグーザ玉とか・・・

S:今回はいろいろと女性画家について調べるなかで、「親子」や「夫婦(恋人)」といった人間関係が、意外と画家に深く影響しているかもしれないとわかったのがおもしろかったですね。
とくに、親から受けた教育や環境。

A:そうですね、やっぱり教育って大事なのだと思いました。

S:さてさて、話は尽きませんが・・・
できれば、今回展示できなかった作品も含めて、今度はちょっとちがう視点で第2弾もしてみたいです。

A:また色々オモシロ企画を考えたいですね。皆様お楽しみに~!

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 安藤香織(登録室)、瀬谷愛(平常展調整室) at 2012年07月19日 (木)