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140周年ありがとうブログ

変わらないものに、ありがとう

近世絵画を専門にしております研究員の小野真由美と申します。
いまは出版企画室で、さまざまな図録や『MUSEUM』の編集などにたずさわっております。

いままで手がけた本たち
いままで手がけた本。どれも思い入れがあります。

東京藝術大学に在学中、何度となく訪れたトーハクの展示風景は、いまでも心に焼き付いています。
その頃の展示風景の記憶は、必ず陶磁のイメージからはじまります。
その記憶はいつも志野茶碗の柔らかく光をすい込み、内側から輝くような美しさに心を奪われる瞬間からはじまります。
そして、ゆっくりゆっくりと、静かな会場をめぐって、厳しく研ぎ澄まされた古筆のイメージへとたどりつきます。
その贅沢な時間は、忘れがたいイメージの堆積となって、いまでも私の大切な宝ものとなっています。
(その頃は、トーハクで働くことになるとは、夢にも思っていませんでした…)

きっとこんな何気ない記憶を、多くの人々と共有させていただいているのだと思います。

そして、まだトーハクを訪れたことのない小さなお子さんや、旅の途中に立ち寄ってくださる諸外国の方々などをはじめ、
無限につづく(と願っています)トーハクへのご来館者のみなさまに、
作品をみつめる静かな時間の記憶を、もっともっと素晴らしいかたちでご提供しなければ、と思います。

花下遊楽図屏風
国宝 花下遊楽図屏風 狩野長信筆 17世紀 東京国立博物館蔵
(2013年3月19日(火)~2013年4月14日(日) 本館2室・国宝室にて展示予定)
この作品に心うばわれ、生涯の研究テーマとなりました。


変わらないものはないのかもしれません。
トーハクもつねに、よりよい博物館をめざして、変化しつづけています。
そのなかで「変わらないもの」があるとすれば、そのような何かに「ありがとう」と伝えたいです。

いつまでも美しく、強く、ゆるぎない文化財の価値を伝え残していくことに、微力ながら日々精進していきたいです。
140年間のご来館者みなさまに、心から感謝しながら…。

この場所も、変わらないもののひとつ。
この場所も、変わらないもののひとつ。

カテゴリ:2012年12月

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posted by 小野真由美(出版企画室) at 2012年12月09日 (日)

 

ボランティアからありがとう

今年のボランティアデーのテーマは「ボランティアからありがとう」でした。ご参加いただけましたか?

まずは来館者の皆様にありがとう。
お困りのことに対応し、展示作品をおすすめした際などに、ほっとした笑顔で感謝の言葉をいただくこともあります。
そんな時、私たちは大変嬉しい気持ちになります。さまざまなお客様とお話し、気持ちに寄り添った対応を工夫することが、私たちのやりがいになっています。

お客様の「ありがとう」の言葉が元気の源になります。
お客様の「ありがとう」の言葉が元気の源になります。

二つ目はボランティアの仲間たちにありがとう。
年齢や経験の異なる仲間と一緒に活動し、お互い学んだり刺激を受けています。

手にしたお客様の喜ぶ顔を思い浮かべて、パンフレットを作っています。
手にしたお客様の喜ぶ顔を思い浮かべて、パンフレットを作っています。

最後に、博物館の建物と作品にありがとう。
本館の建物はまるで「やあ、いらっしゃい」と、両手を広げて迎えてくれるようです。
大切に守り伝えられた作品からは、いつも新たな発見があります。
現在、平成25年度のボランティアを募集中です。トーハクでの一日が素晴らしい思い出になるように、私たちと一緒に活動してみませんか?

朝のミーティング。ボランティア仲間と会うのも楽しみのひとつ。
朝のミーティング。ボランティア仲間と会うのも楽しみのひとつ。

カテゴリ:2012年12月

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posted by ボランティアさん(生涯学習ボランティア) at 2012年12月06日 (木)

 

たくさんの先生にありがとう

東洋工芸、おもに陶磁器の研究にたずさわっております三笠と申します。

教師だった祖母が、私のことを「先生に恵まれる子だ」とよく言っていたそうです。
本当に、大人になったいまもたくさんの「先生」に導いていただいています。
皆、私にはかけがえのない方々です。

博物館にも、「先生」がいっぱいいます。
研究員のほかに、作品をより良い環境で伝えるために奮闘する修理技術者。
博物館の未来のために駆け回る職員。
博物館の隅から隅まで、愛情込めて教えてくださる先輩方を「先生」と思い、私はたくさんの背中を追いかけています。

じつは収蔵庫のなかにもこっそり、偉大な先生がいます。
「横河民輔先生」(1864~1945)です。
建築家として知られる「横河先生」は、1100点余の陶磁器を博物館に寄贈されました。
なかでも中国陶磁は質量ともに世界屈指を誇ります。
第一級の名品から資料的価値の高いものまで、あらゆる種類がそろっているのです。

でもまだひよこの私は、毎日収蔵庫のなかで呆然と立ちつくすばかり。
そんなとき「横河先生」が「ほら、こっちにもあっちにも」と声をかけてくださっている気がします。
そしてゆっくりと耳を傾け、器に関わったであろう多くの人々の声を聞いてみる。
大事なことを教えてくださいました。


重要文化財 青磁輪花鉢 南宋官窯 中国 南宋時代・12~13世紀 横河民輔氏寄贈
(2013年1月2日(水)~5月6日(月) 東洋館 5室にて展示)

この官窯の器をようやく手に入れることができた時、「横河先生」は画竜点睛!と歓ばれたそうです。
東洋館の新しい展示ケースでは、まるで吸い込まれるような青の美しさと、細かいヒビによる光の反射を見ることができます。
この器を焼きあげた陶工の声、この器を手にした古人の声に耳を傾けてみてください。


生まれ変わった東洋館の展示作業は「横河先生」と一緒に・・・

 

カテゴリ:2012年12月

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posted by 三笠景子(保存修復室) at 2012年12月03日 (月)