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140周年ありがとうブログ

たくさんの先生にありがとう

東洋工芸、おもに陶磁器の研究にたずさわっております三笠と申します。

教師だった祖母が、私のことを「先生に恵まれる子だ」とよく言っていたそうです。
本当に、大人になったいまもたくさんの「先生」に導いていただいています。
皆、私にはかけがえのない方々です。

博物館にも、「先生」がいっぱいいます。
研究員のほかに、作品をより良い環境で伝えるために奮闘する修理技術者。
博物館の未来のために駆け回る職員。
博物館の隅から隅まで、愛情込めて教えてくださる先輩方を「先生」と思い、私はたくさんの背中を追いかけています。

じつは収蔵庫のなかにもこっそり、偉大な先生がいます。
「横河民輔先生」(1864~1945)です。
建築家として知られる「横河先生」は、1100点余の陶磁器を博物館に寄贈されました。
なかでも中国陶磁は質量ともに世界屈指を誇ります。
第一級の名品から資料的価値の高いものまで、あらゆる種類がそろっているのです。

でもまだひよこの私は、毎日収蔵庫のなかで呆然と立ちつくすばかり。
そんなとき「横河先生」が「ほら、こっちにもあっちにも」と声をかけてくださっている気がします。
そしてゆっくりと耳を傾け、器に関わったであろう多くの人々の声を聞いてみる。
大事なことを教えてくださいました。


重要文化財 青磁輪花鉢 南宋官窯 中国 南宋時代・12~13世紀 横河民輔氏寄贈
(2013年1月2日(水)~5月6日(月) 東洋館 5室にて展示)

この官窯の器をようやく手に入れることができた時、「横河先生」は画竜点睛!と歓ばれたそうです。
東洋館の新しい展示ケースでは、まるで吸い込まれるような青の美しさと、細かいヒビによる光の反射を見ることができます。
この器を焼きあげた陶工の声、この器を手にした古人の声に耳を傾けてみてください。


生まれ変わった東洋館の展示作業は「横河先生」と一緒に・・・

 

カテゴリ:2012年12月

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posted by 三笠景子(保存修復室) at 2012年12月03日 (月)