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御即位記念特別展「正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー」

10月14日(月・祝)、特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」が開幕しました。
皆様きっと開幕を楽しみに待ち望んでいたと思います。私も待ち望んでいました!



毎年秋に奈良国立博物館で開催している「正倉院展」をご存知の方は多いと思います。
ですが、当館で開催しているのは展覧会タイトルの通り「正倉院展」ではございません。
本展は、天皇陛下の御即位を記念し、正倉院宝物を中心とした飛鳥・奈良時代の国際色豊かな造形文化に焦点を当てた特別展です。
正倉院宝物と双璧をなす、東京国立博物館の法隆寺献納宝物をともに展示することで、正倉院宝物をとりまく造形文化の世界をより広い視野からご紹介します。
また、貴重な文化財を更なる未来に伝えるため、今なお行われる保存・修理・模造の取り組みも本展で紹介することも特徴のひとつです。

それでは展示室をご案内します。


まずは第1章「聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物」です。
なんといっても目を引くのはこちら。


正倉院宝物 東大寺献物帳(国家珍宝帳) 奈良時代・天平勝宝8歳(756) 展示期間:~11/4(月・休)

本品は聖武天皇の御遺愛品を中心とする宝物が東大寺大仏に献納されたときの目録です。
皆様は覚えていますでしょうか、今年1月に開催された特別展「顔真卿」で展示されていた祭姪文稿を
唐時代の肉筆としてとても貴重なものでしたが、それよりもこちらは古いものです。
非常に整った文字からは聖武天皇が深く偲ばれていたことが想像できませんか。
全長15m弱を一挙公開することは稀とのことです。

そのほか、第1章では聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物として、夜光貝や琥珀が散りばめられた鏡、象牙製の碁石などを展示しています。


続いて、第2章「華麗なる染織美術」。
正倉院宝物を代表するものとして、膨大な数の染織品があります。
本章では正倉院伝来品を中心として、天平文化を彩った華麗な染織美術の世界をご紹介します。


正倉院宝物 墨画仏像 奈良時代・8世紀 展示期間:~11/4(月・休)

うわっ大きい!と思わず声が出てしまいそうな存在感です。
幅は約70センチメートルあります。「租庸調」、教科書で一度は目にしたことがあるかつての日本の税金制度ですが、奈良時代に納められていた調庸布の標準的な幅が約70センチメートルだったそうです。
なじみのある言葉を聞くと、作品にも親しみがわいてきませんか?


正倉院宝物 花氈 唐時代・8世紀 展示期間:~11/4(月・休)

こちらは羊毛を染めて圧縮し毛氈(フェルト)にした敷物です。
近代に至るまで遊牧などの文化をもたなかった日本に毛氈があることは、異国の文物が運ばれてきたことを意味するそうです。


そして、第1会場の最後は第3章「名香の世界」。
天下人が切望した香木や、そのほか香を炊く道具を紹介します。


正倉院宝物 黄熟香 東南アジア

こちらは別称「蘭奢待」(らんじゃたい)として有名な香木です。
足利義政や織田信長らがこの香木を切り取った記録が残り、切り取らせたとされる箇所には目印があります。
一度でいいから香りをかいでみたいものです。


黄熟香元禄期収納箱 江戸時代・元禄6年(1693) 正倉院蔵 

隣には、黄熟香を納めるための木製の唐櫃も展示しています、あわせてご覧ください。


そして第2会場へ移動すると、第4章「正倉院の琵琶」がお出迎えしてくれます。
チラシやポスターにも掲載されている螺鈿紫檀五絃琵琶を楽しみにしていた方は多いのではないでしょうか。


正倉院宝物 螺鈿紫檀五絃琵琶 唐時代・8世紀 展示期間:~11/4(月・休)

写真では伝わりにくいかもしれませんが、とても、とても美しい琵琶なんです。
こちらは正倉院宝物を代表する優品として知られています。
背面の装飾もぜひ会場でご覧ください。細やかな装飾が琵琶の美しさを一層引き立てています。
また、同じ部屋に完成までに8年費やし今年完成した復元模造品もあります。

終わりも近づいてきました、第5章「工芸美の共演」です。
こちらの章では主に同じ用途のために製作された、正倉院宝物と法隆寺献納宝物を展示しています。
飛鳥時代から奈良時代にかけての美意識の変遷をぜひご覧ください。


第5章展示風景


そして最後の章、第6章「宝物をまもる」です。
本章では江戸時代から現代にわたる正倉院宝物の調査と修復作業に焦点をあて、あわせて博物館時代以来の当館との繋がりをご紹介いたします。


(左) 模造 螺鈿紫檀五絃琵琶 明治32年(1899) 東京国立博物館蔵 
(右) 模造 螺鈿紫檀阮咸 明治32年(1899) 東京国立博物館蔵 


模造を製作するためには、構造、材質、文様、技法を把握する必要があります。
模造を製作することはある種壮大な論文を書き上げるようなもので、その工程が今後の保存や修理に資することが期待されます。
このほか本章では一部原寸大で再現した宝庫、VR画像などで正倉院の雄大なスケールを体感いただけるスペースがございます。

いかがでしたでしょうか。
正倉院宝物が今もなおまもり伝えられているのは、偶然でも奇跡でもありません。
天皇陛下による勅封という管理制度を中心に、人々の努力によって宝庫と宝物がまもられてきました。
本展をご覧いただき、これからも未来の人たちに貴重な文化財をまもり伝えていくことの重要性を少しでも感じていただければ幸いです。
会期は11/24(日)までです。

※会期中展示替えがあります。

カテゴリ:2019年度の特別展

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posted by 柳澤想(広報室) at 2019年10月18日 (金)