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篆刻体験 自分だけの印をつくろう!

教育普及室の川岸です。
みなさんは書や絵画に、普段使うハンコとは違うデザインの印が押されているのをみたことはありますか?
実はこれは、作者のサインのひとつ。この印をつくることを篆刻といいます。

11月26日(土)、東洋館8室で開催中の特集「生誕百年記念 小林斗盦(とあん) 篆刻の軌跡 ―印の世界と中国書画コレクション―」(~2016年12月23日(金・祝))に関連したワークショップ「篆刻体験 自分だけの印をつくろう!」を行いました。

午前は小学生とその保護者、午後はおとなの方を対象にした全2回。その様子をご紹介します。

参加者のほとんどが篆刻初体験!
今回は自分の名前のなかの一文字を印にしました。

自分の名前のなかの一文字がすでに付された印材を手に、篆刻の道具がならべられた席に着くと、始まる前からもう期待が高まっているよう。

印材
反転した文字が書き入れられた印材

まずは謙慎書道会の岩村節廬先生、河西樸堂先生による説明から。

岩村節廬先生 河西樸堂先生
こどももおとなも、みんな真剣!

説明のあとはいよいよ体験です。
岩村先生、河西先生のほか、
國定青陽先生、尾崎早織先生、中田聰山先生、谷崎桃薫先生、山本青郁先生も指導に加わってくださいました。
手を切らないように、素敵な印ができるように。真剣に。丁寧に。

ファミリー篆刻 ファミリー篆刻

先生が印刀を持つと、参加者の皆さんのときとは全く違う石の削れる音が響き、石の粉が舞います。
やっぱり違う!とみんなで驚きながら、教えてもらいそれぞれコツをつかんでいきます。

やっぱり印は捺してみないと!
ということで、展示作品の趙之謙筆「楷書斉民要術八屛」(11月27日(日)で展示終了)から一文字を選んで筆で書き、自分の印を捺してみました。

ファミリー書道 ファミリー捺印
できあがった作品です。
ファミリー作品  おとな捺印


改めて・・・・完成した印の陰影を見てみましょう。

陰影  陰影

私たちの名前には、こんな子に育ってほしいという願いや、たくさんの愛情をこめられていたはず。
きっとそれはきちんと伝わり、名は体をあらわす、のかもしれません。
自分の名前を自分で篆刻した印には、人柄が表れるような気がします。
字体の選定や、印材への文字の書き入れまでは事前に先生がしてくれましたが、印刀を握り彫ったのは参加者自身。
緊張して、変に力が入ってしまった部分もあるのかもしれません。
慎重に少しずつ少しずつ彫ったかもしれません。
楽しくてテンポよく豪快に彫りすすめたかもしれません。
本人の気分や力の入れ具合により、線の強弱、印の雰囲気が作られるのではないでしょうか。
だとすればこの印は、来年の自分には作れない。
いまの自分にしかできない印。
まさに、いまの自分の「しるし」になる特別な印。
ある小学生は、印が大事すぎて、お母さんに預けたり、かばんに入れたりしたくないと握り締めて帰りました。
どうぞ大切に使ってください。

ワークショップの最後には、富田研究員から展示についての説明がありました。

展示会場  展示会場

小林斗盦は、ただデザイン性の高い印をつくるのではなく、書はもちろん、中国の古い時代の文字や絵画などについても深く学び、その知識や経験をいかして、生涯を篆刻に捧げたのだそうです。
たしかに展示室には、甲骨文字や青銅器が展示されています。
「こんな古いものに書かれている文字まで研究して印を作っていたの?」
「彫った跡の雰囲気が自分の印の彫った跡とぜんぜん違う!」
参加者同士話しながら、展示をお楽しみいただきました。

どんな言葉や文字を、どんな線で、どんな材に彫り、どんな作品に捺すのか。
小さな印の奥に、それをつくった人の姿や、それを捺した作品の世界が見えるのかも。
そういうところが、印や篆刻の楽しみだと気づかされたワークショップでした。
 

カテゴリ:催し物特集・特別公開

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2016年12月01日 (木)