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1089ブログ

特別展「運慶」来場者30万人達成!

11月30日に会期が終了した特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」は、最終日に30万人目のお客様をお迎えしました。

これを記念し、同日に行われた記念セレモニーでは、東京都からお越しの湯田様の皆さまに、当館館長藤原誠より記念品と図録を、興福寺の森谷英俊貫首より直筆の色紙を贈呈いたしました。


記念品贈呈の様子。左から森谷貫首、湯田様ご家族の皆さま、30万人達成パネルを持つ藤原館長

この度「社会や歴史に興味を持つきっかけになれば」というお母さまの想いのもと、ご家族で来館されました。
上野エリアにはよく遊びにいらっしゃるとのことですが、お母さま以外のお三方は、初めての東博。
本展の最終日に記念すべき30万人目のお客様に選ばれたことを、心から喜ばれている様子でした。

特別展「運慶」は、鎌倉再建時の北円堂内陣の再現を試みた奇跡的な企画です。
修理後初公開となった弥勒如来坐像の圧倒的な存在感、日本彫刻史上最高傑作ともいえる無著・世親菩薩立像、力強さと美しさをあわせもった四天王立像。 
7軀(く)の国宝仏が本館 特別5室の会場に集い、静かな祈りに満ちた運慶展は、11月30日(日)に無事、閉幕いたしました。


特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」会場風景
(左から)世親菩薩立像、弥勒如来坐像、無著菩薩立像 すべて国宝 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

この度は多くの方々に足をお運びいただき、心より感謝申し上げます。

カテゴリ:彫刻「運慶」

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posted by 田中 未来(広報室) at 2025年12月01日 (月)

 

この記憶を永遠に。

みなさま、こんにちは。これまでの1089ブログでは、当館の彫刻担当研究員が特別展「運慶」に関連する記事を掲載してまいりました。お楽しみいただけておりますでしょうか。運慶展の関連記事で本展の魅力と会場の熱気が伝わっていればよいのですが、早いもので会期も残すところあと10日となりました。ここでニュースをお届けいたします。

このたび、特別展「運慶」別冊図録「展示風景編」が、10月25日(土)に部数限定で刊行されました!
 
特別展「運慶」別冊図録「展示風景編」(表紙)
 
すでにご予約いただいていた皆様、お待たせいたしました。
はじめて聞いたという方々、少しご説明いたしますので、お付き合いください。
 
この展覧会は、興福寺北円堂に伝わる国宝 弥勒如来坐像、国宝 無著・世親菩薩立像と、現在は中金堂に安置される国宝 四天王立像の7軀の国宝仏像によって、運慶が構想した鎌倉期北円堂内陣の空間を復元的に再現することを目的としています。
 
いまは別々のお堂に安置されている仏像たちの歴史的な邂逅による本展会場の景観は、興福寺でもご覧いただけない特別なものです。そこで、運慶仏によって満たされた至高の空間を記録に残すため、このたび別冊図録「展示風景編」を刊行する運びとなりました。
 
公式図録「本編」にて運慶の魅力を渾身の写真で示してくれた気鋭の写真家・佐々木香輔(ささききょうすけ)氏による迫力ある写真を、この別冊図録でもふんだんに掲載。展示室の雰囲気をそのままにお届けいたします。弥勒像、無著・世親像と四天王像が一つの空間におさまっているカットは、まさに運慶の構想をまのあたりにすることができます。あわせて、各像の細部にもクローズアップ。お堂で拝観するだけでは気づけなかった各像の魅力に迫ります。
 
 
特別展「運慶」別冊図録「展示風景編」(内面)
 
また、本展では弥勒如来坐像の光背を展示していないため、弥勒像と無著・世親像の背中を一度に堪能することができます。これも現地北円堂の特別公開でもご覧いただくことのできない本展限りの特別な景観です。
 
特別展「運慶」別冊図録「展示風景編」(内面)
 
この奇跡の景観を皆様の記憶だけでなく、長く記録にとどめる。それが今回刊行されました別冊図録「展示風景編」の役割なのです。
 
現代美術の展覧会では、このように展示風景を記録した図録を会期途中、時には会期終了後に刊行されることが時折ありますが、文化財・古美術の分野の展覧会ではなかなかお目にかかりません。それだけ、この展覧会は歴史的な催しなのです。
 
本展をご覧いただいた方々には、よき思い出として。まだご覧いただいていない方々には、展覧会鑑賞の予習として。そして残念ながら会期中にお越しいただけない方々にも、会場の雰囲気に触れていただく機会を、この別冊図録は提供してくれるのです。
(注)特別展「運慶」別冊図録「展示風景編」は会場の特設ショップで販売するほか、「美術展ナビ オンラインストア」でもご購入いただけます。
(注)特別展「運慶」別冊図録「展示風景編」は、11月28日(金)に完売いたしました。
 
オンラインショップでご購入の場合は別途送料がかかりますので、本展をもう一度ご覧いただき、お土産にご購入いただくのはいかがでしょうか。別冊図録は展示を見るための様々な視点を提供してくれることでしょう。会場で見逃したポイントを再確認したり、本展広報大使でもある俳優の高橋一生さんの美声による音声ガイドを聞きなおしたり、興福寺でも体感できない奇跡の空間で至福のひと時をもう一度味わいませんか。別冊図録ご購入の際には、再度のご来館をおすすめいたします。
 
シルシ(SHIRUSHI DESIGN FACTORY)のデザインによるモノクロのスタイリッシュな装丁は公式図録「本編」同様ですので、ご購入の際はお間違いのないようお気をつけください。別冊図録「展示風景編」には付録として、本編と2冊セットで収めることのできるスタイリッシュな特製カバーがついてきます。
 
特製カバー
 
また、公式図録「本編」とのセット料金は少しだけお得ですので、まだ本編をお持ちでない方はセット購入もお勧めです。
 
そして、ここでもうひとつニュースです。
なんと公式図録「本編」と別冊図録「展示風景編」をあわせた本展図録が、このたび日本印刷産業連合会主催の第67回「全国カタログ展」にて図録部門金賞および文部科学大臣賞の受賞が決まりました!
 
展覧会全体の構想や個別の作品解説については本展公式図録「本編」を。会場における7軀の国宝・運慶仏による競演をお楽しみいただくには別冊図録「展示風景編」を。2冊合わせることで本展の鑑賞と理解を助けるだけでなく、格好の展覧会の思い出となること請け合いです。
 
この歴史的な展覧会の記憶を記録としてとどめる特別展「運慶」別冊図録「展示風景編」は部数限定です。この機会を是非お見逃しなく。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻「運慶」

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posted by 児島大輔(彫刻担当研究員) at 2025年11月21日 (金)

 

運慶だけじゃない 本館11室で慶派仏師たちが競演

現在開催中の特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」の会場である本館特別5室は、連日多くの方々にお越しいただき、にぎわいをみせています。本展には、鎌倉時代の興福寺北円堂の復興に際し、仏師運慶が一門を率いて造像した国宝仏7軀(く)がお出ましになっています。特別5室はまさに本展タイトルのごとく、「運慶一門による祈りの空間」に満ちています。

本館11室 展示風景
 
ところで、特別5室のすぐ近くにある本館11室は、東博コレクション展(平常展)の「彫刻」の展示室です。実は現在、本展にちなみ、運慶が属した慶派仏師の仏像や、慶派の作風がよく表れた仏像を展示しています。鎌倉時代前期から後期までの慶派の仏像を通じて、慶派仏師の広がりとそれぞれの作風の個性を紹介しています。特別5室が「運慶一門による祈りの空間」ならば、11室は「慶派仏師たちの競演の場」とも言える雰囲気を醸し出しています。
今回のブログでは、11室に展示している仏像のなかから、慶派仏師の作風がよく表れた仏像をいくつか紹介します。
 
阿弥陀如来立像 鎌倉時代・13世紀 
 
東大寺南大門の巨大な金剛力士立像(国宝)の造像にも参加し、運慶と並び称される仏師が快慶(かいけい)です。快慶は、力強さやリアリティを追求した運慶の作風とは異なり、優美で整った作風を創り出しました。その作風は、彼の法名の安阿弥陀仏(あんなみだぶつ)にちなみ、安阿弥様(あんなみよう)と呼ばれます。
 
阿弥陀如来立像 鎌倉時代・13世紀 部分(腹部周辺)
 
安阿弥様は後の時代にも影響を与え、この阿弥陀如来立像のように安阿弥様に基づく仏像が数多く作られました。たとえば、腹部の衣の線を一定の間隔で刻んだ形式美が特徴の一つです。
 
菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 
 
運慶の次世代の仏師のなかでも、ひときわ独自の作風を示すのが肥後定慶(ひごじょうけい)です。肥後定慶の仏像は、切れ長な眼や涼やかな顔立ち、着ている衣の彫りが深く複雑に翻っています。こういった要素を備えたこの菩薩立像は、肥後定慶周辺の仏師の作とみられます。
 
菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 部分(頭部側面)
 
高く結い上げた髻(もとどり)を横から見てみると、段差を付けていることが分かります。このように髪や衣を装飾的に仕上げているのが肥後定慶風の仏像の特徴です。
 
重要文化財 愛染明王坐像 鎌倉時代・13世紀 
 
鎌倉時代初期に運慶が確立した力強く写実的な表現は、鎌倉時代後期の慶派仏師たちにも引き継がれました。さらにこの時代の慶派の仏像には、工芸的な細やかさが加わっています。
 
重要文化財 愛染明王坐像 鎌倉時代・13世紀 左斜め側面
 
この愛染明王坐像にみられるように、衣の文様に絵の具を盛り上げて立体的にしたり、体には入念に作られた華やかな飾りを付けたりして、技巧を凝らしていることが分かります。
 
運慶は鎌倉時代当時から慶派仏師のなかでも大きな存在でした。ただ、上記で紹介したように、慶派のなかでも運慶とは異なる作風をもつ仏師や、運慶の作風を引き継ぎながらも新しい要素を加えた仏師がいたことも確かです。これら慶派仏師の仏像をぜひご覧いただき、それぞれの像の個性や特徴を感じていただけましたら幸いです(本記事で紹介した展示は、12月21日(日)まで)。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻「運慶」

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posted by 増田 政史(彫刻担当研究員) at 2025年11月12日 (水)

 

特別展「運慶」20万人達成!

 現在、本館 特別5室で開催中の特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」(11月30日(日)まで)は、この度来場者20万人を達成しました。

これを記念し、京都府からお越しの柳井有佳子さんと東京都からお越しの柳井さち子さん親子に、当館館長藤原誠より記念品と図録を、興福寺の森谷英俊貫首より直筆の色紙を贈呈いたしました。


記念品贈呈の様子。左から森谷貫首、柳井さち子さん、柳井有佳子さん、20万人達成パネルを持つ藤原館長

現在京都の大学に通ってらっしゃる有佳子さんは近隣の歴史ある社寺や、関西の美術館などにもよく足を運ばれるそうです。今回は東京のご実家へのご帰省のタイミングに、お母さま・さち子さんのお声がけで本展へご一緒にお越しくださったとのこと。
有佳子さんは弥勒如来坐像のまなざしや表情を、さち子さんはドラマ等で知る「運慶」の実際の作品をご覧になることを楽しみにご来場いただいたそうです。

会場では、弥勒如来坐像、無著・世親菩薩立像に加えて、かつて北円堂に安置されていた可能性の高い四天王立像(中金堂安置)を合わせた7軀(く)の国宝仏を一堂に展示しています。運慶らによって形成された、鎌倉期北円堂内陣の空間再現を試みた本展。その至高の空間をたっぷりとご堪能ください。

なお、毎週金・土曜日および11月23日(日・祝)は午後8時まで開館しています(入館は閉館の30分前まで)。
会期終了前は混雑が予想されます。ぜひ、夜間開館時にも足をお運びくださいませ。

カテゴリ:news彫刻「運慶」

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posted by 田中 未来(広報室) at 2025年11月05日 (水)

 

弥勒如来坐像の内に満ちる祈りの空間

本館特別5室で開催中の特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」も閉幕まで残り1か月をきりました(11月30日(日)まで)。
会場では、鎌倉時代に運慶一門によって復興された祈りの空間をご体感いただけます。 

 
(左から)世親菩薩立像、弥勒如来坐像、無著菩薩立像 すべて国宝 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置
 
ところで、北円堂にはもう一つ、小さな祈りの空間がひろがっていることをご存知でしょうか。それは、ご本尊である弥勒如来坐像の内部。直接拝することはかないませんが、本展の開催にともない当館で実施したX線CT撮影により、具体的な様相が明らかになりました。ここでは、その一部をご紹介いたします。
 
国宝 弥勒如来坐像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置
同X線断層(CT)(作成:宮田将寛)
 
右側が今回当館で撮影したX線CTの画像です。像の内側が空洞になるように彫りこまれ、首、そして背中側の胸の高さに納入品が固定されていることが分かります。そもそも、仏像の像内は聖なる空間と考えられており、日本では平安時代以降、木彫像の内部を彫って空間をつくり、像に霊性を与える物や造像を取り巻く人々の願いにかかわる物が納められてきました。当然のことながら人目に触れることはなく、X線CT撮影が導入される以前は、修理の際にその存在がはじめて確認される場合がほとんどでした。北円堂弥勒如来坐像の納入品も、昭和9年(1934)に実施された解体修理の際に発見されています。修理後、納入品は元のとおり像内に戻されたため、これまでは当時撮影された貴重な写真と調書から、その存在を想像する他ありませんでした。今回のX線CT撮影により、およそ90年ぶりにその存在が確かめられたことになります。
 
それぞれの納入品をみてみましょう。
 
体部納入品(画像提供:文化庁)
 
背中側、胸の高さに込められた納入品です。蓮台の上に固定された水晶珠で、仏の魂である心月輪(しんがちりん)を表します。
 
頭部納入品全体像(画像提供:奈良国立博物館)
 
こちらは、首の辺りに込められた納入品。黒漆塗りの厨子、厨子を前後から挟む板彫五輪塔、五輪塔の後方に括りつけられた宝篋印陀羅尼経(ほうきょういんだらにきょう)が、板の上に固定されています。
 
厨子内部
 
板彫五輪塔に挟まれた黒漆塗り厨子の内部には、像高わずか7.1センチメートルの弥勒菩薩立像と奉籠願文(ほうろうがんもん)が納められています。この弥勒菩薩立像は、小像ながら大変見事な出来栄えで、運慶の作と推測する魅力的な見解があります。今回のX線CT撮影により、この弥勒菩薩立像の像容や厨子に描かれた絵画の様相などが明らかになったことも、とても大きな成果です。
 
ここにご紹介してきた納入品は、運慶一門とともに北円堂復興に尽力した勧進上人専心(かんじんしょうにん せんしん)によって準備されたものです。北円堂諸像に託された、鎌倉時代の人々の願いそのものに他なりません。ぜひ会場で「祈りの空間」に身を置きながら、その内に込められた時空を超えた真摯な祈りにも思いを馳せていただければ幸いです。
何より、現代を生きる我々が、約800年前の人々の祈りにこうして触れることができるのは、ご所蔵者のご尽力とご理解があってこそ叶うものです。この場をお借りして、興福寺の皆様に改めて深く御礼申し上げます。
なお、納入品の詳細や背景については本展の公式図録【本編】に、当館で撮影したX線CT撮影の調査速報は10月25日(土)より発売の別冊図録【展示風景編】に採録しております。あわせてご参照いただけますと幸いです。
 

(左)特別展『運慶 祈りの空間─興福寺北円堂』公式図録「本編」 (右)特別展『運慶 祈りの空間─興福寺北円堂』別冊図録「展示風景編」
本展の図録は特別展会場特設ショップ、展覧会公式サイト等からご購入いただけます。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻「運慶」

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posted by 冨岡采花(絵画・彫刻室) at 2025年10月31日 (金)

 

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