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今秋開催!特別展「最澄と天台宗のすべて」

当館は6月1日(火)より開館しております。詳細は「再開館のお知らせ」のページをご覧ください。
今回のブログでは、緊急事態宣言の発令前に開催した、特別展「最澄と天台宗のすべて」の報道発表会の様子をご案内します。
なお、展示作品、会期、展示期間等については、今後の諸事情により変更する場合があります。
最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。
 
 
東京国立博物館では、2021年10月12日(火)~11月21日(日)に、平成館で伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」を開催します。
本展は当館での開催後、2022年に九州国立博物館、京都国立博物館へと巡回する予定です。
去る4月15日(木)、3館合同で本展の報道発表会を行いました。
今回は、その模様とともに、展覧会のみどころをご紹介します。
 
東京会場の先行チラシは両A面仕様。館内各所で配布開始しました!

 
 
報道発表会では、はじめに、主催代表者5名がご挨拶いたしました。
 
左から:
天台宗 宗務総長 阿部昌宏
比叡山延暦寺 執行 水尾寂芳
 
左から:
東京国立博物館 副館長 富田淳
九州国立博物館 副館長 小泉惠英
京都国立博物館 副館長 栗原祐司
 
 
2021年は伝教大師最澄(でんぎょうだいし さいちょう/767~822)が亡くなってから1200年目の節目にあたります。
その1200年大遠忌(だいおんき)を記念して開催するのが本展です。
最澄は『法華経』が説く「悟りに至る道はすべての人に開かれている」という教えに心惹かれ、その実現に奔走しました。
本展では、最澄の生涯をゆかりの品々から辿るとともに、日本天台宗の開宗から江戸時代に至るまでの歴史を、日本各地で守り伝えられてきた数々の貴重な宝物から紐解きます。
 
 
3館に共通する展覧会の概要と、東京会場のみどころについて、本展を担当する当館研究員の皿井より解説いたしました。
 
 
本展のタイトルを見て、2006年に当館で開催した特別展「最澄と天台の国宝」を思い出した方がいらっしゃるかもしれません。
天台宗開宗1200年を記念したこの展覧会は、東京、京都の2会場での開催でした。
本展はそれを上回る3会場を巡回予定。
東京、九州、京都という3つの国立博物館を巡回する大規模展として企画したのには、最澄の生涯や天台宗の歴史が深く関係しています。
 
最澄は天台の教えを広めるべく日本各地に足を運び、全国の要所に教えの拠点をつくろうと計画しました。
さらに、最澄が比叡山に創建した延暦寺は、多くの高僧を輩出。彼らが説いたさまざまな教えは、日本文化に大きな影響を及ぼしてきたのです。
最澄や後進の尽力により、天台宗は全国に広く根を下ろし、それぞれの地域で多彩な花を開かせました。
こうした天台宗の特色を存分にご紹介するため、本展は章立てこそ3会場共通ではあるものの、会場ごとに大幅な作品の入れ替えを行い、各会場の地域的な様相を掘り下げます。
 
 
では、3館巡回のスタートを切る東京国立博物館での展示のみどころとは。
 
東京会場みどころ その1:貴重な秘仏が勢揃い
重要文化財 薬師如来立像 平安時代・11世紀 京都・法界寺蔵
展示会場:東京国立博物館、京都国立博物館
 

重要文化財 薬師如来坐像 平安時代・12世紀 岐阜・願興寺(蟹薬師)
展示会場:東京国立博物館

最澄にゆかりの深い薬師如来像や、天台宗の祖師にちなんだ尊像など、全国7つものお寺から貴重な秘仏が東京国立博物館へお出ましになります。
そのなかには、重要文化財「薬師如来立像」(京都・法界寺蔵)や
重要文化財「薬師如来坐像」(岐阜・願興寺〔蟹薬師〕蔵)といった寺外初公開となる秘仏本尊も含まれます。
秘仏本尊が寺外にお目見えするだけでも非常に稀なこと。

東京に居ながらにして、これだけの秘仏とご対面できる機会は滅多にありません。

 
東京会場みどころ その2:国宝「聖徳太子及び天台高僧像」が一堂に
国宝 聖徳太子及び天台高僧像 平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
※展示期間、展示会場は各図ごとに異なります。
 
国宝「聖徳太子及び天台高僧像」は、インド・中国・日本の天台ゆかりの人物たちを描いた十幅からなる作品です。
平安時代の仏画は大変稀少であり、とりわけ最澄像(画像下段 右から2枚目)は現存する最澄の肖像画のなかで最も古いもの。
会期中に展示替えはあるものの、東京国立博物館では十幅すべてをご覧いただくことができます。
さらに、期間限定で全十幅の同時公開を予定しているのも、3館のうち東京国立博物館だけです。
 
 
東京会場みどころ その3:江戸天台の精華がずらり
慈眼大師縁起絵巻(中巻部分)
詞書:胤海筆・絵:住吉具慶筆 江戸時代・延宝8年(1680) 東京・寛永寺蔵
展示会場:東京国立博物館 ※中巻展示期間:10月26日(火)~11月7日(日)
寛永寺を創建した慈眼大師天海(じげんだいし てんかい/1536?~1643)の生涯を描いた絵巻物。江戸時代の寛永寺の様子が描かれています。
 
前述のとおり、本展では、江戸時代に徳川幕府の庇護のもとで生み出された、華麗な江戸天台の名宝にも焦点を当てます。
東京国立博物館のある上野は、なんといっても「東の比叡山」東叡山寛永寺のお膝元。
現在の本館がある場所は、寛永寺の本坊跡地というご縁もあります。
東京国立博物館では、最澄による東国への布教活動の足跡をご紹介するとともに、当館でのみ公開予定の秘仏、重要文化財「薬師如来立像」(東京・寛永寺蔵)をはじめ、江戸城の鬼門として繁栄した寛永寺にまつわる宝物などをまとめて展示し、江戸時代における天台宗の隆盛に迫ります。
 
 
東京会場みどころ その4:総合文化展での関連展示も
本館14室では、特別展「最澄と天台のすべて」にあわせ、特集「浅草寺のみほとけ」(2021年9月28日(火)~12月19日(日))を開催。
「浅草寺に仏像?」とお思いの方が少なくないかもしれませんが、1950年に聖観音宗となるまで天台宗の古刹として知られた浅草寺には、数々の仏像が伝えられています。
本特集では、浅草寺所蔵の仏像17体を展示予定です。
また、本館11室でも、2021年8月31日(火)~11月14日(日)には京都・妙法院をはじめ天台宗の寺院に伝わる仏像をご紹介します。
特別展とあわせて総合文化展もご覧いただけば、より理解が深まり、楽しみが増すこと間違いなしです!
 
 
報道発表会では、皿井研究員に続き、九州会場、京都会場のみどころも各館の研究員よりご案内しました。
 
 
 
 
さらに、本展の音声ガイドナビゲーターには、市川猿之助さんが就任されました!
こちらもどうぞお楽しみに。
 
 
本展でご覧いただける宝物には、最澄の信奉した「すべての者が救われる」という『法華経』の精神が表されたものが多数含まれます。
昨今の世情を踏まえると、そういった宝物も、よりいっそうの切実さをもって目に映るかもしれません。
伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」(2021年10月12日(火)~11月21日(日))に、どうぞご期待ください。

 

カテゴリ:2021年度の特別展

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posted by 新井千尋(広報室) at 2021年06月08日 (火)

 

鳥獣戯画の断簡と模本

6月1日(火)より特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」が再開しました!
再開後は、鳥獣戯画の断簡がそろって展示され、甲・乙・丙・丁の各巻とあわせ、文字通り、「鳥獣戯画のすべて」をご覧いただけます。


断簡展示風景

断簡と模本は、会場第二章でご紹介しています。

さて、「断簡(だんかん)」、耳慣れない言葉だと思いますが、これは、もともと巻物の一部分であったものが、伝来の過程で別れてしまったものです。
巻物は一定の幅の紙や絹を継いで、一巻の長い巻物にしていくので、経年の劣化によって継ぎ目がはがれやすくなります。
本来の巻物から離れてしまった断簡は、多くの場合、保存と鑑賞に適するよう掛軸の形に改められました。
鳥獣戯画には現在、5点の断簡が確認されています(甲巻の断簡が4点、丁巻の断簡が1点)。
いずれの断簡も、「高山寺印」が捺されていないことから、江戸時代以前に分かれてしまったと考えられます。個々の断簡は、甲・乙・丙・丁の各巻とは異なる、それぞれの歴史を歩んできました。

例えば、現在MIHOミュージアムに所蔵される甲巻の断簡は、内箱の蓋裏に金字で「抱一暉眞記」の文字と、重郭楕円印「等覚院印」が朱で記されます。


鳥獣戯画断簡(MIHO MUSEUM本) 平安時代・12世紀 滋賀・MIHO MUSEUM蔵


鳥獣戯画断簡(MIHO MUSEUM本)内箱の蓋裏

江戸琳派の祖として名高い酒井抱一(1761~1828)の手元にあった可能性が高い作品です。同じ場面ではありませんが、抱一は甲巻をアレンジした作品も残しており、鳥獣戯画に関心があったことがうかがえます。
この他、「益田家旧蔵本」と呼ばれる断簡は、近代を代表する実業家、茶人、そして美術コレクターとして著名な益田鈍翁(1848~1938)の旧蔵品です。
個々の断簡の伝来は、所蔵していた人々の愛玩の歴史といえます。

このような断簡の歴史をたどる手掛かりとなるのが「模本」と呼ばれる、鳥獣戯画を写した作品です。
模本を見ると、模本が制作された時点での、鳥獣戯画の様子を知ることができます。
例えば、肥前(現在の佐賀県)平戸藩主であった松浦静山(1760~1841)の賛がある「松浦家本」には、「益田家旧蔵本」と「高松家旧蔵本」の二点の断簡が写されており、当時は福山藩主であった阿部正精(1774~1826)が所蔵していたことがわかります。


鳥獣戯画模本(松浦家本) 狩野洞益筆、松浦静山賛 江戸時代・文政2年(1819) 長崎・松浦史科博物館蔵

この他、現存する最古の模本である「長尾家旧蔵本」、江戸時代を代表するやまと絵師の家系である「住吉家」に伝来した「住吉家旧蔵本」も展示されていて、断簡の当初の位置や、今は失われてしまった場面があること、そして、甲巻はもともと二巻で成り立っていたことがわかるのです。
個人的に模本の中で興味深かったのが、江戸時代前半に活躍した御用絵師・狩野探幽(1602~1674)による、「探幽縮図」と呼ばれる絵画鑑定手控えに写された鳥獣戯画です。
冒頭部分に「かいる」「さる」「うさき」とあって、カエルは「カイル」だったことがわかります。


鳥獣戯画模本(探幽縮図) 狩野探幽筆 江戸時代・17世紀 京都国立博物館蔵

当時の読み方(発音)まで記されていて、模本、興味深いですね。

謎の多い「鳥獣戯画のすべて」を考えるためには、断簡と模本は大変重要な存在です。
今後、「猿と蛙の首引き」や「舟をこぐ蛙」「蛇の登場に慌てる蛙」といった、模本でしか伝わらない場面の断簡が、ひょっとしたら再発見され、往時の姿がよみガエルかもしれません。

※会期は6月20日(日)まで延長となりました。入場には日時指定券が必要です。日時指定券の購入等、詳細は展覧会公式ウェブサイトでご確認ください。

 

カテゴリ:2021年度の特別展

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posted by 古川攝一(平常展調整室) at 2021年06月03日 (木)

 

「鳥獣戯画展」ができるまで~アメリカからの作品借用リポート

特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」は、現在わかっている鳥獣戯画巻の全ての場面をご覧いただけるよう、高山寺蔵の国宝4点に加え、かつてその一部だった断簡と、今は失われている場面を過去に写した模本、さらに、鎌倉時代に高山寺を再興した明恵上人にかかわる文化財も加えて鳥獣戯画の世界をあますところなくご堪能いただく企画です。
展示作品のうち3点は、海外からお借りした掛軸です。コロナ禍で昨年夏開催の予定が延期となり、いったんは白紙となったものの、新しい会期での貸与を改めてご検討いただき、幸いにもお借りすることができました。


釈教三十六歌仙絵巻断簡 貞慶上人・明恵上人 南北朝時代・貞和3年(1347)
The Cleveland Museum of Art, Mr. and Mrs. William H. Marlatt Fund 1985.88


通常、作品貸与にあたっては、作品を所蔵する美術館から職員(コレクション管理担当者や保存修復担当者など)が作品に随伴してくるのですが、日米双方の感染症対策のため、国内外での人の移動に制限があり、来日できません。そのため、クリーブランドからお借りした作品については、輸送から点検、展示の一連の作業をリモートで確認していただくことになりました。
作品が日本に到着し、無事展示されるまでの一端をリポートします。

まず、作品が空港に到着すると、飛行機から作品の入ったクレートを下ろし、トラックに積み込みます。トラックに積み込むところから、日本とアメリカの輸送会社が写真のやり取りをして、各作業工程を現地の係員に確認してもらいました。
空港の制限エリア内での通話はできないので、コミュニケーションアプリを通じて写真のやり取りをしました。


飛行機から降ろされたクレートの入った貨物コンテナ


作業の様子を写真に撮って送ります

博物館に到着後、収蔵庫で環境にならし、数日後に展示です。
展示の際は、特別展用の収蔵庫からクレートを運ぶ様子をTeamsで中継、クレートの移動の様子から、クレートから作品を取り出し、点検、展示するまでを所蔵美術館の職員に確認してもらいます。

クリーブランド美術館でこの作業を担当されたのは、3人。学芸員のシネ―ドさん、レジストラーのグレッチェンさんは、昨年の当館の専門家交流事業に参加されました。また、保存修復担当のサラさんは、2014年に当館で行ったクリーブランド美術館展の際、保存担当として来日されました。いずれも当館館内の様子はよくご存じです。


先方とやり取りをしながら進めます

点検は、今回は館外の保存修復の専門家のご協力を得ました。

作品点検中、気になるところはズームアップし、確認しながら作業を進めていきます。


見づらいところはPCを近づけて確認いただきました

作品には特に問題もなく、ほっとしたところで、展示にかかります。


展示作業もご覧いただき、必要な時はご指示をいただきます


無事に作業終了することができました

現地は夜にもかかわらず、ご自宅からこちらの作業を見守っていただいたのは感謝の一言に尽きます。

アメリカ各地で感染爆発の中、クリーブランド美術館も一時期感染症対策のため閉館となっていましたが、今は活動を再開、地域の方々が多く来館されています。
こうした非常時にもかかわらず、この展覧会にご出品をご快諾いただいたことに、改めて心よりお礼を申し上げたいと思います。これは、クリーブランド美術館と当館との長い交流ではぐくんだ友情の賜物でもあるかと思います。
初めてのリモートでの作業は大変でしたが、よい経験になりました。
新しい日常の中、このような新しい展覧会作業も増えていくのかもしれません。
簡単に海外に渡航できない日々がまだまだ続きますが、文化財を通して、世界との交流を感じていただければ幸いです。


 

カテゴリ:2021年度の特別展

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posted by 鬼頭智美(広報室長) at 2021年04月20日 (火)

 

お待たせしました。特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」開幕だほ!



ほほーい!ぼくトーハクくん。特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」がついに開幕したほ!

2020年の夏に開幕するはずだったけど、延期になって、やっと開幕となりました。皆様大変お待たせしました。

ユリノキちゃん、早く会場に行くほ! ぼくがユリノキちゃんの分まで事前予約しておいたほ。

さすがだね、トーハクくん。さっそくギガがお出迎えしてくれているわ。

鳥獣戯画 エントランスバナー 写真
バナーだほ!

ポップな雰囲気で、わくわくするほ!

まずは今から400年程前に鳥獣戯画を写した模本と国宝「鳥獣戯画 甲巻」をスクロールしている映像がある部屋から始まるわ!

鳥獣戯画 スクロール動画 写真
本物を見る前に映像で予習ができるほ

次の部屋は、皆様お待ちかね、国宝「鳥獣戯画」の部屋ね。ここで国宝の4巻をすべてみることができるわ。

国宝「鳥獣戯画」は4巻もあるほ? カエルさんとウサギさんが出てくるものだけかと思っていたほ。

国宝「鳥獣戯画」は全4巻あるのよ。トーハクくんが言っているのは、みんな大好きな「甲巻」のことだね。
ほかには、日本にいる動物と、外国の動物や空想の動物が描かれた動物図鑑のような「乙巻」。
前半は人物戯画、後半は動物戯画が描かれた「丙巻」。
二重のパロディとヘタウマに注目、最後まで飽きさせない「丁巻」があるのよ。

ほーすごいほ。でも2015年の特別展「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」では前半部分と後半部分を途中で巻き替えていて、半分ずつしか見れなかったほ。今回はどうなんだほ。

いい質問だわ。今回は、全4巻、全場面を展覧会中一挙公開しているの。前半部分と後半部分を見比べたり、違う巻を見比べたりしながら、すべてを見ることができるのよ。

すごいほ。わくわくするほ! おや、なんだか博物館では見慣れない装置があるほ。空港とかでは見たことがあるほ。

鳥獣戯画 動く歩道 写真

トーハクくん、これも今回の大きなポイント、国宝「鳥獣戯画 甲巻」は動く歩道にのって鑑賞するのよ。

なんでだほ?

絵巻を、博物館の展示のように広げた状態で見ることは、昔の見方とは異なっているの。もともと、手元で少しづつ広げては巻いてを繰り返して見ていたのよ。

先の場面に何がくるかわからなかったほ?

そうよ。場面を動かしながら見ていたから、次はどんな場面がくるのかな、とわくわくしながら見ていたのよ。だから、絵巻のもともとの鑑賞方法を皆様に体験してもらいたいと思って、動く歩道を設置したのよ。

ほー。そのために動く歩道を設置するなんてすごいほ。

動く歩道のおかげで、みんな作品の近くで同じ時間で見ることができるね。

鳥獣戯画 動く歩道 写真
国宝「鳥獣戯画 甲巻」の待機列には18:30分以降はお並びいただけませんのでご注意ください

ほー、思ったよりゆっくり見ることができたほ。甲巻の次は、乙巻、丙巻、丁巻のコーナーだほ。鑑賞のポイントはなんだほ?

甲巻との線の違いを見比べたり、巻物前半と後半を見比べたり、自分が好きな動物を探したり、描かれた人々が何をしているのか想像したり、自由に楽しんでもらいたいわ。

鳥獣戯画 乙丙丁展示室 写真
乙巻、丙巻、丁巻の展示風景だほ!

鳥獣戯画 乙作品 写真
国宝 鳥獣戯画 乙巻 平安時代・12世紀 京都・高山寺蔵
空想上の霊獣、麒麟の場面

鳥獣戯画 丙作品 写真
国宝 鳥獣戯画 丙巻 平安時代~鎌倉時代・12~13世紀 京都・高山寺蔵
目比べ(にらめっこ)と腰引き場面

鳥獣戯画 丁作品 写真
国宝 鳥獣戯画 丁巻 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵
大木を運ぶ、木遣りの騒動に振り返る人々の場面


国宝「鳥獣戯画」満喫したほ~。第2会場にきたほ。断簡(だんかん)と模本のコーナーがあるほ。どんなコーナーか簡単に解説してほ。

断簡は、国宝「鳥獣戯画」の一部が本体から切り離され、掛け軸などに仕立て直されたものよ。模本には、国宝「鳥獣戯画」の本物では今は失われている場面も写されているの。
国宝「鳥獣戯画」の4巻と、これらの断簡と模本もあわせて、もともと存在していた「鳥獣戯画のすべて」を紹介するコーナーなのよ。

鳥獣戯画 断簡展示 写真
断簡の展示風景(第2会場)

鳥獣戯画 模本写真 写真
鳥獣戯画模本(住吉家旧蔵本) 巻第5 安土桃山時代・慶長3年(1588) 東京・梅澤記念館蔵

鳥獣戯画 全貌パネル 写真
国宝「鳥獣戯画」復原パネル

最後は、明恵上人と高山寺を紹介するコーナーよ。

国宝「鳥獣戯画」を持っている高山寺のことは知っているほ。明恵上人って誰だほ?

明恵上人はたくさん勉強して、修行を頑張った鎌倉時代を代表するお坊さんよ。その明恵上人が高山寺を鎌倉時代にたてなおしたのよ。

なんだかすごそうな人だほ。

修行のために右耳を切ったり、自分が見た夢の日記をかき続けたり、海で拾った石をお釈迦様から自分にたどり着いたものだと大切にしたりと、色々なエピソードがあるわ。

鳥獣戯画 夢記 写真
重要文化財 夢記 明恵筆 鎌倉時代・承久2年 京都・高山寺蔵 展示期間:4月13日(火)~5月9日(日)

あっ、すごいリアルなお像があるほ。

鳥獣戯画 明恵上人像 写真
重要文化財 明恵上人坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵

28年ぶりにお寺の外で公開したのよ。まるでそこにいるような存在感だね。

みてみて、これなんだほ?

鳥獣戯画 たつのこ 写真
龍子 京都・高山寺蔵

これは乾燥した状態のタツノオトシゴだわ。明恵上人はお釈迦様にあこがれていて、天竺(てんじく:インドの旧名)への旅を計画していたの。この「龍子」(たつのこ)も異国を象徴するものとして、明恵上人が大切にしていたのかもしれないのよ。

鳥獣戯画 子犬 写真
重要文化財 子犬 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵

「子犬」も明恵上人が手元に置いて、かわいがっていたものだったそうよ。

見ごたえ十分だったほ。もう1回見たいほ。

トーハクくん、90分以内を目安に観覧するようお願いが出ているから、守りましょうね。

そうだったほ!それなら図録で展覧会を振り返るほ。

図録もすごいのよ。国宝「鳥獣戯画」の全4巻の全場面がほぼ原寸大で載っていて、鳥獣戯画の謎に迫る最新研究だけでなく、冒頭には入門編、応用編の2つのステップの解説があって、鳥獣戯画をより楽しめるようになると思うわ。

鳥獣戯画 図録 写真
図録 3,000円(税込) A4判、474ページ

この図録の厚さ!!すごいほ。最後までギガアツイ!展覧会だったほ。

トーハクくん、会場の外、平成館1階には高山寺紹介コーナーと8K映像コーナーがあるのよ。あと、本館特別1室・特別2室・14室では特集「鳥獣戯画展スピンオフ」が開催されているから、それも見ましょうね。


タイトルディスプレイ


館14室展示風景


藍釉兎 中国 唐時代・8世紀 横河民輔氏寄贈 東京国立博物館蔵 本館14室にて6月6日(日)まで展示

ユリノキちゃん!平成館企画展示室では4月27日(火)から5月30日(日)まで、親と子のギャラリー「動物のうごき」が開催されるから、それも要チェックだほ!

ほかにも、「博物館で動物めぐり」というタイトルで、本館、東洋館、平成館考古展示室の各展示室でも動物をモチーフにした作品を展示しているのよ。

動物にたくさんあえるほ!トーハク、ギガアツすぎるほ!ユリノキちゃん、二人で最後のあいさつするほ!

特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」は5月30日(日)まで、入場には事前予約が必要です!

カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん2021年度の特別展

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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2021年04月16日 (金)

 

今年の夏は戯画【ギガ】アツイ!(後編)

2月13日(木)に報道発表会を実施した特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」。その見どころ前編を先日紹介しました。
早速ですがこの後編ブログで続きを紹介していきます


アツイ見どころその2
断簡、模本の数々が集結。<鳥獣戯画のすべて>をご紹介

「鳥獣戯画」の一部が本体と切り離され、掛け軸などに仕立て直されて伝わってきた「断簡」や、原本では失われた場面を留める「模本」が存在します。


重要文化財 鳥獣戯画断簡(東博本) 平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵
甲巻から抜けた場面がこちらの断簡です
どこから抜けたのかは画面左手の墨の黒点がヒントです



Honolulu Museum of Art, Gifts of the Robert Allerton Fund, 1954(1951.1) and Jiro Yamanaka, 1956 (2212.1)
鳥獣戯画模本(長尾家旧蔵本)室町時代・15~16世紀 アメリカ・ホノルル美術館蔵 ※会期中場面替えあり
こちらは甲巻から失われている高飛びの場面です


このほかにも模本に描かれている場面と一致する断簡などを展示します。
原本では見ることのできない断簡や模本の数々が集結する様は、まさに<鳥獣戯画のすべて>です。
国宝「鳥獣戯画」をご覧いただいたからといって気を抜かないでください。
断簡、模本もぜひしっかりご覧いただき、<鳥獣戯画のすべて>を骨の髄までご堪能ください。


アツイ見どころその3
寺外公開は27年ぶりの重要文化財「明恵上人坐像」をはじめとする明恵上人ゆかりの品々を紹介



重要文化財 明恵上人坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵
なんといってもこちらの明恵上人坐像をぜひお見逃しなく!

「鳥獣戯画」をたっぷりとご紹介してきましたが、明恵上人ゆかりの品々も本展の大きな見どころの一つです。

「鳥獣戯画」が伝わってきただけでなく、日本ではじめてお茶がつくられた場所でもあり、世界文化遺産でもある高山寺ですが、
その高山寺を鎌倉時代に再興したのが明恵上人です。
明恵上人には数多くのエピソードがあります。本展ではそのエピソードとともにぜひゆかりの品々をご覧ください。
それでは、エピソードを一部紹介します。

エピソードⅠ
長年夢を記録し続けた


重要文化財 夢記 明恵筆 鎌倉時代・承久2年 京都・高山寺蔵 展示予定期間:7月14日(火)~8月10日(月・祝)

明恵上人は19歳頃から晩年に至るまで夢を記録しました。
今でも日記を書く人は少なくはないと思いますが、長年夢を記録し続ける人は今も昔もめったにいないのではないでしょうか。
日記風に夢の出来事を記したり、再構成した記事もあったりと興味深い記事は多いらしいのですが、明恵上人は弟子にこの記録をみだりに他人に見せてはいけないと語ったそうです。
何が書かれていたのか気になってしょうがないですね。
会場では明恵上人が作品に宿したオーラをぜひ感じてください。

エピソードⅡ
多くの斬新な和歌


左:国宝 明恵上人歌集 高信筆 鎌倉時代・宝治2年(1248) 京都国立博物館蔵 会期中場面替えあり
右:詠草 明恵筆 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵


明恵上人は見たまま、思ったままを口ずさむような和歌を多く残しています。
ぜひ紹介したい和歌はこちらです。

あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや月

空に浮かぶ赤い月をストレートに言葉にのせた和歌です。
自分を飾ることなく思ったことを言葉にするのは意外と難しいと思いますが、
ありのままでいいことを教えてくれるようですね、明恵上人は。

エピソードⅢ
右耳を切った!

明恵上人は24歳のころ求道のために右耳を切りました。
ただ切ったのではなく、母と慕う「仏眼仏母像」(京都・高山寺蔵)の前で切ったそうで、明恵上人のアツイ思いや決意が感じられます。


会場でぜひ右耳と左耳を見比べてください

エピソードⅣ
タツノオトシゴから子犬まで


龍子【タツノコ】 京都・高山寺蔵


明恵上人は釈迦が生まれた天竺(インド)へのあこがれを生涯持ち続け、渡航を2度試みましたが、断念しています。
このタツノオトシゴはインドへの憧れを思わせる、明恵上人の所持品と言われています。
タツノオトシゴのほかにも紀州湯浅の海に浮かぶ鷹島で修業中に拾った石を「蘇婆石・鷹島石」(京都・高山寺蔵)と名付け、生涯所持しました。
その理由は、天竺蘇婆河に多くの釈迦の遺跡があり、その河の水が流れ流れてこの近くの海を洗うのだから、この石も釈迦の遺跡の形見であると考えたからだそうです。
これらは明恵上人にとって憧れの地、天竺とつながる方法だったのかもしれません。

次に紹介したいのはこちらの子犬です。


重要文化財 子犬 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵

つぶらな瞳、少し傾げた首、高さ30センチにも満たない小さなサイズ、どれをとっても可愛らしい子犬です。
宗教的な意味合いをもつ彫刻が多い中で、このような彫像はとても珍しいものです。
また、明恵上人はたびたび子犬の夢を見ていたそうで、その意向も反映されていたのかもしれません。
子犬を可愛がる明恵上人を想像するとなんだか心が温かくなりませんか。

明恵上人ゆかりの品々から、ぜひ明恵上人の人柄や思いを展覧会場で感じ取ってください。


前編、後編にわたり本展の見どころをご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
今年の夏はトーハクが戯画【ギガ】アツイこと間違いない!と思いませんか。


戯画【ギガ】アツイ宣言!

最後になりましたが、重要なお知らせです。
特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」の最終入場は閉館の60分前まで
となります。
皆様、最終入場時刻をご確認の上、ご来館ください!

カテゴリ:2021年度の特別展

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posted by 柳澤想(広報室) at 2020年02月20日 (木)