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ぜひ「東博ボランティアデー2025」にお越しください!

11月29日(土)、30日(日)に「東博ボランティアデー2025」を開催します。
現在東京国立博物館には約110名のボランティアが在籍しており、お客様のご案内や、体験コーナーの運営、様々なガイドやワークショップに取り組んでいます。
ボランティアの活動を2日間にギュッとまとめて実施する「東博ボランティアデー2025」は、当館をより楽しんでいただける日になっています!当日のスケジュールは、当館ウェブサイトをご覧ください。

本ブログでは注目ポイントと補足情報をお届けいたします。

ハンズオンツールまるごと体験会

今年スタートした活動の1つに、本館19室でのハンズオンツール体験コーナーがあります。
ケース越しに鑑賞するだけではわからない展示作品のかたちや作りを、実際に手で触れて体感していただけるコーナーです。
甲冑(当世具足)の構造(画像1)、漆器の塗りと装飾方法(画像2)、遮光器土偶の内側(画像3)、能面をまとった時の視野(画像4)などを体験いただけるツールを、通常は数か月ごとに入れ替えて展示していますが、「東博ボランティアデー2025」では、これら4種類すべてを一度にご体験いただけます。
10月に惜しまれながら終わってしまった遮光器土偶のレプリカにも触れていただけるチャンスです。ご興味のある方はお見逃しなく!

 

(画像1)当世具足の籠手のレプリカ

(画像2)漆の触察ボード

 

(画像3)遮光器土偶のレプリカ

(画像4)能面のレプリカ

 

ボランティア発!トーハクの魅力発信イベント~あなたの知らないトーハクに出会えるかも?!~

ボランティア有志が企画したトークショーを11月29日(土)に開催します。ボランティアだからこそ気づいた当館の魅力や活動の様子をご紹介するほか、参加者からお寄せいただくエピソードや質問なども交えて、当館をもっと面白いと感じていただけるような情報発信を目指します。
後半には、展覧会や文化財調査の経験豊富な某研究員、館内の施設整備や環境づくりに日々奔走している某職員もトークに加わり、東京国立博物館の魅力と面白さを掘り下げます。申し込みは11月21日(金)までです(申込期間を延長しました)。こちらも、ご興味のある方はお見逃しなく!

ボランティア発!トーハクの魅力発信イベント~あなたの知らないトーハクに出会えるかも?!~ 詳細を見る

 

自主企画活動グループによる催し

当館には、ボランティアが自分たちで企画・運営する自主企画活動グループが15あります。それぞれがガイドツアー、ワークショップなどを実施しています。こうした催しは通常はバラバラの日に実施されますが、「東博ボランティアデー2025」では、2日間にギュッと凝縮して実施されます。スケジュール表を見ながらお好みのガイドツアーやスライドトークにご参加ください。

 

(画像5)樹木ツアーの様子

(画像6)浮世絵ガイドスライドトークの様子


(画像7)子ども向けプログラム「ユリノキからたんけん!」の作品の振り付けの様子。
今年は子ども向けプログラムの一部を「東博ボランティアデー2025」で実施します。

 

東京国立博物館でボランティアをやってみたい方へ

次のボランティアの募集は、令和8年度中を予定しています。「東博ボランティアデー2025」は、当館のボランティア活動を実際に体験して、知っていただく機会でもあります。
博物館でのボランティア活動に興味をお持ちの方、特に東京国立博物館でボランティアをやってみたい方は、ぜひ「東博ボランティアデー2025」にお越しください!お待ちしております。

カテゴリ:催し物

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posted by ボランティア室 at 2025年11月17日 (月)

 

運慶だけじゃない 本館11室で慶派仏師たちが競演

現在開催中の特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」の会場である本館特別5室は、連日多くの方々にお越しいただき、にぎわいをみせています。本展には、鎌倉時代の興福寺北円堂の復興に際し、仏師運慶が一門を率いて造像した国宝仏7軀(く)がお出ましになっています。特別5室はまさに本展タイトルのごとく、「運慶一門による祈りの空間」に満ちています。

本館11室 展示風景
 
ところで、特別5室のすぐ近くにある本館11室は、東博コレクション展(平常展)の「彫刻」の展示室です。実は現在、本展にちなみ、運慶が属した慶派仏師の仏像や、慶派の作風がよく表れた仏像を展示しています。鎌倉時代前期から後期までの慶派の仏像を通じて、慶派仏師の広がりとそれぞれの作風の個性を紹介しています。特別5室が「運慶一門による祈りの空間」ならば、11室は「慶派仏師たちの競演の場」とも言える雰囲気を醸し出しています。
今回のブログでは、11室に展示している仏像のなかから、慶派仏師の作風がよく表れた仏像をいくつか紹介します。
 
阿弥陀如来立像 鎌倉時代・13世紀 
 
東大寺南大門の巨大な金剛力士立像(国宝)の造像にも参加し、運慶と並び称される仏師が快慶(かいけい)です。快慶は、力強さやリアリティを追求した運慶の作風とは異なり、優美で整った作風を創り出しました。その作風は、彼の法名の安阿弥陀仏(あんなみだぶつ)にちなみ、安阿弥様(あんなみよう)と呼ばれます。
 
阿弥陀如来立像 鎌倉時代・13世紀 部分(腹部周辺)
 
安阿弥様は後の時代にも影響を与え、この阿弥陀如来立像のように安阿弥様に基づく仏像が数多く作られました。たとえば、腹部の衣の線を一定の間隔で刻んだ形式美が特徴の一つです。
 
菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 
 
運慶の次世代の仏師のなかでも、ひときわ独自の作風を示すのが肥後定慶(ひごじょうけい)です。肥後定慶の仏像は、切れ長な眼や涼やかな顔立ち、着ている衣の彫りが深く複雑に翻っています。こういった要素を備えたこの菩薩立像は、肥後定慶周辺の仏師の作とみられます。
 
菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 部分(頭部側面)
 
高く結い上げた髻(もとどり)を横から見てみると、段差を付けていることが分かります。このように髪や衣を装飾的に仕上げているのが肥後定慶風の仏像の特徴です。
 
重要文化財 愛染明王坐像 鎌倉時代・13世紀 
 
鎌倉時代初期に運慶が確立した力強く写実的な表現は、鎌倉時代後期の慶派仏師たちにも引き継がれました。さらにこの時代の慶派の仏像には、工芸的な細やかさが加わっています。
 
重要文化財 愛染明王坐像 鎌倉時代・13世紀 左斜め側面
 
この愛染明王坐像にみられるように、衣の文様に絵の具を盛り上げて立体的にしたり、体には入念に作られた華やかな飾りを付けたりして、技巧を凝らしていることが分かります。
 
運慶は鎌倉時代当時から慶派仏師のなかでも大きな存在でした。ただ、上記で紹介したように、慶派のなかでも運慶とは異なる作風をもつ仏師や、運慶の作風を引き継ぎながらも新しい要素を加えた仏師がいたことも確かです。これら慶派仏師の仏像をぜひご覧いただき、それぞれの像の個性や特徴を感じていただけましたら幸いです(本記事で紹介した展示は、12月21日(日)まで)。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻「運慶」

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posted by 増田 政史(彫刻担当研究員) at 2025年11月12日 (水)

 

特別展「運慶」20万人達成!

 現在、本館 特別5室で開催中の特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」(11月30日(日)まで)は、この度来場者20万人を達成しました。

これを記念し、京都府からお越しの柳井有佳子さんと東京都からお越しの柳井さち子さん親子に、当館館長藤原誠より記念品と図録を、興福寺の森谷英俊貫首より直筆の色紙を贈呈いたしました。


記念品贈呈の様子。左から森谷貫首、柳井さち子さん、柳井有佳子さん、20万人達成パネルを持つ藤原館長

現在京都の大学に通ってらっしゃる有佳子さんは近隣の歴史ある社寺や、関西の美術館などにもよく足を運ばれるそうです。今回は東京のご実家へのご帰省のタイミングに、お母さま・さち子さんのお声がけで本展へご一緒にお越しくださったとのこと。
有佳子さんは弥勒如来坐像のまなざしや表情を、さち子さんはドラマ等で知る「運慶」の実際の作品をご覧になることを楽しみにご来場いただいたそうです。

会場では、弥勒如来坐像、無著・世親菩薩立像に加えて、かつて北円堂に安置されていた可能性の高い四天王立像(中金堂安置)を合わせた7軀(く)の国宝仏を一堂に展示しています。運慶らによって形成された、鎌倉期北円堂内陣の空間再現を試みた本展。その至高の空間をたっぷりとご堪能ください。

なお、毎週金・土曜日および11月23日(日・祝)は午後8時まで開館しています(入館は閉館の30分前まで)。
会期終了前は混雑が予想されます。ぜひ、夜間開館時にも足をお運びくださいませ。

カテゴリ:news彫刻「運慶」

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posted by 田中 未来(広報室) at 2025年11月05日 (水)

 

みんな大好き!酒呑童子のものがたり

ただいま本館特別1・特別2室では特集「平安武士の鬼退治―酒呑童子のものがたり―」を開催しています。

“酒呑童子のものがたり”とは、平安時代の武士・源頼光とその四天王が酒呑童子という鬼を退治する物語です。
室町時代後期から多くの美術作品に取り上げられ、時代を超えて人びとに愛されてきました。

さまざまな酒呑童子絵を紹介する本展では、この物語の広がりを紹介するために、江戸時代中期から明治時代につくられた浮世絵も展示しています。
その中から1点を紹介します。


見立大江山 喜多川歌麿筆 江戸時代・18世紀

こちらは、喜多川歌麿が描いた美人画。
手前に7人の女性たちがいて、遠くには富士山が見えます。
酒呑童子となにか関係があるの?と思われるかもしれません。

女性たちの不思議な装いは山伏を模したもので、背中に笈(おい)を背負う姿は、まさに鬼退治に向かう武士たちにそっくりです。  

見立大江山(部分)
酒呑童子絵巻(孝信本)巻上(部分) 伝狩野孝信筆


山伏姿となって酒呑童子退治の準備をする頼光たち

さらに着物の模様や紋を細かく見てみると…
 

見立大江山(部分)
 
三つ星に一文字紋の入った着物の女性は、渡辺綱。
 

見立大江山(部分)
 
鉞(まさかり)と笹模様の着物を着た女性は、坂田金時。
 

見立大江山(部分)
 
笹竜胆の模様の着物の女性は、源頼光を表していると考えられます。
つまりこの作品は、酒呑童子物語の登場人物を江戸の女性たちに置き換えた作品なのです。
 
画面奥では、柴刈りをする男性がいます。
 

見立大江山(部分)
 
元のお話では、頼光一行が酒呑童子退治へ向かう途中、険しい崖に丸太を架けて武士たちを導く八幡、住吉、熊野の神々の化身が登場します。
これは、その場面の見立でしょう。
 
 
もう一つ気になるのが、画面中央で洗濯をする女性の姿です。
 

見立大江山(部分)
 
歌麿の作品ではどこかほのぼのとした雰囲気ですが、
この場面は、酒呑童子にさらわれた女性が血の付いた衣を洗う場面になぞらえています。
 
 
そして、右上では室内に銚子と器が置かれ、扇を手に踊っているような男性たちの姿も。
ここが、酒呑童子の館なのでしょうか。
 

見立大江山(部分)
 
中ではこのような宴席が催されているのかもしれません。
 
酒呑童子絵巻(孝信本)巻中(部分) 伝狩野孝信筆
 
このような見立絵(やつし絵)は、元のお話を知っているからこそ楽しめる作品です。
酒呑童子の物語が江戸の人びとに広く愛されていたことがうかがえるでしょう。
 
本展では、絵巻や扇に描かれたさまざまな作品をとおして、酒呑童子のストーリーたっぷりとご紹介しています。
 
さらに、会場でお配りしているリーフレットでは、出品作品の魅力を8ページにわたって解説しています。
ぜひ展示室でお手に取って、酒呑童子の世界をお楽しみいただければ幸いです!
 
(注)リーフレットは枚数に限りがあります(なくなり次第配布終了)
(注)本特集ページよりPDFをダウンロードしていただけます。
 
平安武士の鬼退治―酒呑童子のものがたり―
会場:本館 特別1室・特別2室
会期:2025年9月30日(火) ~ 2025年11月9日(日)

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 村瀬可奈(調査研究課絵画・彫刻室) at 2025年11月04日 (火)

 

弥勒如来坐像の内に満ちる祈りの空間

本館特別5室で開催中の特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」も閉幕まで残り1か月をきりました(11月30日(日)まで)。
会場では、鎌倉時代に運慶一門によって復興された祈りの空間をご体感いただけます。 

 
(左から)世親菩薩立像、弥勒如来坐像、無著菩薩立像 すべて国宝 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置
 
ところで、北円堂にはもう一つ、小さな祈りの空間がひろがっていることをご存知でしょうか。それは、ご本尊である弥勒如来坐像の内部。直接拝することはかないませんが、本展の開催にともない当館で実施したX線CT撮影により、具体的な様相が明らかになりました。ここでは、その一部をご紹介いたします。
 
国宝 弥勒如来坐像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置
同X線断層(CT)(作成:宮田将寛)
 
右側が今回当館で撮影したX線CTの画像です。像の内側が空洞になるように彫りこまれ、首、そして背中側の胸の高さに納入品が固定されていることが分かります。そもそも、仏像の像内は聖なる空間と考えられており、日本では平安時代以降、木彫像の内部を彫って空間をつくり、像に霊性を与える物や造像を取り巻く人々の願いにかかわる物が納められてきました。当然のことながら人目に触れることはなく、X線CT撮影が導入される以前は、修理の際にその存在がはじめて確認される場合がほとんどでした。北円堂弥勒如来坐像の納入品も、昭和9年(1934)に実施された解体修理の際に発見されています。修理後、納入品は元のとおり像内に戻されたため、これまでは当時撮影された貴重な写真と調書から、その存在を想像する他ありませんでした。今回のX線CT撮影により、およそ90年ぶりにその存在が確かめられたことになります。
 
それぞれの納入品をみてみましょう。
 
体部納入品(画像提供:文化庁)
 
背中側、胸の高さに込められた納入品です。蓮台の上に固定された水晶珠で、仏の魂である心月輪(しんがちりん)を表します。
 
頭部納入品全体像(画像提供:奈良国立博物館)
 
こちらは、首の辺りに込められた納入品。黒漆塗りの厨子、厨子を前後から挟む板彫五輪塔、五輪塔の後方に括りつけられた宝篋印陀羅尼経(ほうきょういんだらにきょう)が、板の上に固定されています。
 
厨子内部
 
板彫五輪塔に挟まれた黒漆塗り厨子の内部には、像高わずか7.1センチメートルの弥勒菩薩立像と奉籠願文(ほうろうがんもん)が納められています。この弥勒菩薩立像は、小像ながら大変見事な出来栄えで、運慶の作と推測する魅力的な見解があります。今回のX線CT撮影により、この弥勒菩薩立像の像容や厨子に描かれた絵画の様相などが明らかになったことも、とても大きな成果です。
 
ここにご紹介してきた納入品は、運慶一門とともに北円堂復興に尽力した勧進上人専心(かんじんしょうにん せんしん)によって準備されたものです。北円堂諸像に託された、鎌倉時代の人々の願いそのものに他なりません。ぜひ会場で「祈りの空間」に身を置きながら、その内に込められた時空を超えた真摯な祈りにも思いを馳せていただければ幸いです。
何より、現代を生きる我々が、約800年前の人々の祈りにこうして触れることができるのは、ご所蔵者のご尽力とご理解があってこそ叶うものです。この場をお借りして、興福寺の皆様に改めて深く御礼申し上げます。
なお、納入品の詳細や背景については本展の公式図録【本編】に、当館で撮影したX線CT撮影の調査速報は10月25日(土)より発売の別冊図録【展示風景編】に採録しております。あわせてご参照いただけますと幸いです。
 

(左)特別展『運慶 祈りの空間─興福寺北円堂』公式図録「本編」 (右)特別展『運慶 祈りの空間─興福寺北円堂』別冊図録「展示風景編」
本展の図録は特別展会場特設ショップ、展覧会公式サイト等からご購入いただけます。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻「運慶」

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posted by 冨岡采花(絵画・彫刻室) at 2025年10月31日 (金)

 

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