このページの本文へ移動

1089ブログ

海を越えてこんにちは——アイルランドのチェスター・ビーティーを訪ねて

特別企画「アイルランド チェスター・ビーティー・コレクション 絵巻と絵本のたからばこ」(会期:7月20日(月・祝)まで)に連日多くの方がお越しになり、展覧会に携わった者として嬉しい限りです。いよいよ閉幕まであと3週間を切りました。まだ見ていないよという方、どうぞお見逃しのありませんように!

さて、突然ですがみなさんはアイルランドを訪れたことはありますか?北西ヨーロッパのアイルランド島に位置する国、アイルランド。普段の生活ではあまり馴染みのない国かもしれません。かくいう私も本展準備の一環で初めて訪問しました。今回はその時のことを少しお話ししたいと思います。

今年の2月初旬、長い空の旅の果てにダブリン空港に降り立ちました(途中フランクフルト空港でのトランジットも含めて20時間ほどでした)。空港からはバスに乗って市内へ。チェスター・ビーティーは、街の中心に建つダブリン城内にあります。館内は1階にカフェとミュージアムショップ、2階と3階に展示室があります。チェスター・ビーティーでは館内の3Dマップも公開しているので、気になる人はこちら(3D Virtual Tours - Chester Beatty)から訪ねてみてください。

訪問の際に撮影したチェスター・ビーティーの外観。
 
心ときめきながらチェスター・ビーティー卿が収集したコレクションの数々を拝見する中で、私が気になったのが巻子(かんす)の展示具でした。巻子は巻いた状態で保管しているため、広げると巻き戻ろうという力が働きます。そこで展示の際、当館では卦算(けさん)という透明の平べったい重しを載せます。文鎮のようなものといえばいいでしょうか。翻って、チェスター・ビーティーでは、巻子の径を包むような丸い爪がついたアクリルの展示具(説明がなかなか難しい)を使用していました。

巻子を固定するための展示具です。上下にパーツが分かれていました。
 
保存のご担当の方からは、「これは展示具がちょっと目立ってしまうので、新しい展示方法を考えている」と伺いました。国が違えば展示方法も考え方も違いますね。現場の方のお話を聞きながら、大変勉強になりました。
 
余談ですが、チェスター・ビーティーを訪問した当日、ご案内いただいた学芸員の方より「よかったらティータイムに参加しませんか?」とお誘いがありました。内心(?)と思いながら「ぜひ」とお返事すると、1階カフェの一番端のテーブルに案内されました。そこにはすでに職員の方が3~4人ほど、ご自身のマグカップを片手におしゃべりに花を咲かせており、私たちが近づくと「ようこそ~」と笑顔で迎えてくださりました。皆さんざっくばらんに思い思いのことをしゃべってから席を立つ、という感じで、その日は入れ代わり立ち代わり10人ほど参加されたでしょうか。それがあまりにも自然で、これが本場のティータイムか!と感動しました。聞くところによると毎日開いているそうで、職場でのコミュニケーションに役立っているとのこと。
 
話を展覧会の準備に戻しましょう。今回の訪問では作品の状態確認と採寸もおこないました。例えば、「村松物語絵巻」は前後期で場面替えとなる作品です(現在は後半の場面が出ています!)。実際に採寸すると、前期の展示場面より後期が1メートルほど長くなることがわかりました。

チェスター・ビーティーの閲覧室で「村松物語絵巻」調査をさせていただきました。
 
「村松物語絵巻」を展示する台には別の作品も並ぶため、他の作品や壁打ちのパネルを動かすことなく、最小限の変更で展示替えができないか、と前後期の変化を見越して配置する必要がありました。展示替え当日はドキドキしながら迎えましたが、計算のとおり大きな変更なく展示ができてほっとしました。

前期の本館2階E室。
 
後期の本館2階E室。
 
まだまだ話したいことがあるのですが、尽きないのでこのあたりで終えたいと思います。訪問に際しまして、チェスター・ビーティーの皆様から始終あたたかい歓迎とご協力をいただいたこと、改めて深く感謝しております。本展を機にチェスター・ビーティーと当館は包括連携に関する協定(MOU)も締結しましたので、このご縁を大切に、今後両館の交流をますます深めてゆければと思います。
 

| 記事URL |

posted by 野中 愛理(日本絵画) at 2026年07月02日 (木)