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世界の国からこんにちは―北米・欧州ミュージアム日本美術専門家連携・交流事業レポート

調査研究課の今井です。去る1月15日から19日まで開催された「北米・欧州ミュージアム日本美術専門家連携・交流事業」をレポートします。
当事業はアメリカ、カナダおよびヨーロッパのミュージアムの日本美術専門家を日本にお招きし、各館が抱える課題の共有と情報交換、そして人的ネットワークの構築を目的とするもので、今年で5回目になります。




初日は東京国立博物館にてまず、反物に見立てた細長い和紙をきものの形に仕立て、きものの構造を学ぶワークショップ、そしてきものの畳み方、桐箱の扱い方の実習をしたのち、東京文化財研究所にて同研究所の歴史と役割について学びました。




2日目と3日目は、金沢へエクスカーションです。
石川県立美術館の文化財修理所の見学、金沢能楽美術館での能楽体験、加賀友禅の工房の見学など盛りだくさんです。
もちろん兼六園も訪れました。




4日目は再び東京に戻り、国際シンポジウム「世界の中の日本美術―オリエンタリズム・オクシデンタリズムを超えた日本理解―」です。
ずいぶん難解なテーマですね(私が考えたのですが)。
平たく言えば、誤解や偏見、あるいは単なる自己賛美に陥らずに、どのように日本美術を伝えるかということです。
海外から4名、そして私が発表し、パネルディスカッションが行われました。



内容は大変刺激的なものでした。
たとえば、「トランスカルチャー研究」という概念が提示されました。
これは、従来形の異文化研究「インターカルチャー」では、異文化間の勢力の構図を克服できないという反省にたち、異文化との遭遇を通して対話と解釈を継続的に行うことにより、複数の文化の間で共有される経験と価値観に着目する視点です。


最終日は専門家会議とフィードバックセッションです。
午前中の専門家会議では、外国人来館者の増加に対応するための多言語での解説パネルのあり方などについて討議されました。
午後のフィードバックセッションでは、「もっと多くの人に発言の機会を与えるべきだ」「アジアのミュージアムの代表も加えるべきだ」といった、前向きの発言が多く聞かれました。
本事業の参加者の間で、所蔵する日本美術作品の共同調査の計画もさっそく持ち上がっていると聞いています。


国外の日本美術研究者との交流が深まり、また日本人自身が日本美術について深く考える機会となった有意義な5日間でした。
 

カテゴリ:news

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posted by 今井敦(調査研究課長) at 2019年02月15日 (金)