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【平安の秘仏】トーハクくん×研究員の仏像トーク(その2)

ほほーい! ぼく、トーハクくん!
前回に引き続き、特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」の仏像について、担当研究員の西木さんとお話しするんだほ。


「大観音の顔」
櫟野寺(らくやじ)のご本尊は、穏やかなお顔だほ。

衣や体だけではなく、この表情も10世紀の仏像らしい表現だよ。
お客様も「いいお顔の仏様ねぇ」って言っていたほ。
美術的にも良い仏像だと思うよ。とても洗練された作風で、都にあってもおかしくない出来映えだね。
さすが、仏像ワンダーランドの滋賀だほ!
前回、「ご本尊は延暦寺に関係のある工房でつくられたのかもしれない」と言ったけど、出来の良さも考えると、やっぱりこういったきちんとした技術のあるところでつくられたんじゃないかな。
なるほー。そうすると、櫟野寺にある他の仏像もみんな同じところでつくられたんだほ? なんとなくご本尊に似ている仏像もあるんだほ。
みんな同じ工房というわけではないんだ。でも、いい目のつけどころだね。
ふふん♪
じゃあ、じっくり仏像を見比べてみましょう。

「本尊に似てる? 似てない?」
 
左:重要文化財 十一面観音菩薩坐像(本尊、No.1) 平安時代・10世紀
右:重要文化財 観音菩薩立像(No.10) 平安時代・10世紀


ほーほー、似てるほ。目がキュッとつりあがっているほ。
特にNo.10の観音像は、ご本尊と似ているよね。ぷっくりとした下膨れの顔に太い鼻、厚い唇。
お、親子?!
そうだね。No.10はご本尊をお手本に作られた像だし、親子と言えるかもしれないね。


左:重要文化財 十一面観音菩薩立像(No.8) 平安時代・10~11世紀
右:重要文化財 
観音菩薩立像(No.7) 平安時代・10~11世紀

この2体は立ち姿がソックリだほ!
そうそう。そしてどことなく顔もご本尊に似ているでしょ?
 
つりあがった目が似ているほ!!
No.10より後の時代につくられた像だけど、この2体もやっぱり本尊をお手本にしているってわかるよね。
でも、No.10ほどはご本尊に似ていないんだほ。
ご本尊をお手本としつつも、時代を経てだいぶ独自性というかローカル色が強く出ているんだ。こういったご本尊の特徴を引き継いだつくりを「甲賀様式」と研究者は呼んでいるよ。
ウェブ投票でご本尊は一番人気! No.7の観音さまも5位だし、トーハクのお客様は「甲賀様式」が好きなんだほ。
でも、No.10はイマイチ票が伸びなかったんだよね。一番本尊に似ているんだけど・・・玄人好みなのかなぁ。
甲賀様式ならなんでも好きってわけじゃないのか・・・。ぼくは、はにわクッキーならなんでも好きなんだけど・・・ふしぎだほ。


重要文化財 薬師如来坐像(No.9)
平安時代・12世紀

さて、ご本尊についで大きいのが、こちらの薬師さんです。髪の毛の生え際までの高さが約1.9m、これは古代中国で用いられた尺度で一丈六尺にあたるから、これも丈六仏だよ。
仏像の理想のサイズだほ!
さすがトーハクくん、そのとおり!

この薬師さんは、なんだか眠そうなお顔だほ。
笑。今まで見てきたような厳しくつりあがった目とは、だいぶ表現が異なるね。
ご本尊とは似ていないほ。
じゃあ、次はこの薬師さんをテーマに話しましょう。
ほー!

~【平安の秘仏】トーハクくん×研究員の仏像トーク(その3)に続く~

※作品はすべて滋賀・櫟野寺蔵
※No.は会場内での番号。展覧会カタログの番号とは異なります

カテゴリ:研究員のイチオシ2016年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2016年11月01日 (火)