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平成28年 新指定 国宝・重要文化財を展示します!

毎年恒例「新指定展」の季節がやってまいりました。
ゴールデンウィークのお楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。


平成28年は、新たに絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍からそれぞれ1件ずつ4件が国宝に、また、絵画8件、彫刻10件、工芸品5件、書跡・典籍3件、古文書5件、考古資料8件、歴史資料7件の計50件、さらに追加で5件が重要文化財に指定されることとなりました。

特集「平成28年 新指定 国宝・重要文化財」(2016年4月19日(火)~5月8日(日) 本館8室・11室)では、このうち52件を展示します(写真パネルのみの展示含む)。
※絵画、彫刻(4件)、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料、歴史資料は本館8室、その他彫刻9件は11室で展示します。
詳しくは、展示作品リストをご覧ください。
 

ここでは、国宝指定を受けた2件を中心に紹介いたします。

まずは当館所蔵、岩佐又兵衛筆「洛中洛外図屏風 舟木本」としておなじみの作品がこのたび国宝に指定されることになりました。
2013年に開催された特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」での展示やプロジェクションマッピングも記憶に新しいところでしょう。
当館では、それ以来の公開となります。

国宝 紙本金地著色洛中洛外図(舟木本)
国宝 紙本金地著色洛中洛外図(舟木本) 岩佐勝以(又兵衛)筆 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵
※画像は右隻。上記作品の指定名称は当館での通常の展示名称と異なります


六曲一双の画面に京都市中の景観が描かれ、とくに人物の描写が生き生きと表現されているのが特徴です。当館での展覧会をはじめ、近年、洛中洛外図や岩佐勝以(又兵衛)に関する研究が進展し、文化史的、美術史的重要性が再認識され、国宝に指定の運びとなりました。


なお、トーハクWEBサイトでは、国宝指定決定記念として、人物や京の風俗をクローズアップしてご覧いただける「洛中洛外図 舟木本 あなたがいちばん見たいシーンは?」のアンコール投票を実施していますので、合わせてお楽しみください。



もう1件は、彫刻より、善春作「木造叡尊坐像」(奈良・西大寺蔵)です。


国宝 木造叡尊坐像
国宝  木造叡尊坐像(部分) 善春作 鎌倉時代・弘安3年(1280)奈良・西大寺蔵

叡尊は、興福寺学侶慶玄の子として誕生し、主に密教を学びました。34歳の頃、戒律復興の志を立て、荒廃していた西大寺を真言律宗の根本道場として復興させた人物です。
本像は弘安3年(1280)、叡尊が80歳の時に弟子達が造らせた肖像彫刻で、鎌倉肖像彫刻の傑作と評価されています。
作者である善春は興福寺所属の工房の仏師で、父善慶を継いで叡尊関係の造像を手掛けています。
また、納入品についても叡尊伝の基本史料『自誓受戒記』など種類の豊富さ、情報量の多さから、日本の像内納入品の遺例中、代表的な品ということで合わせて国宝指定となりました。

このほか国宝指定をうけた文化財は、「黒韋威胴丸 兜、大袖付」(奈良・春日大社蔵)、「称名寺聖教 金沢文庫文書」(神奈川・称名寺蔵)です。


トーハク所蔵品からは「臨時全国宝物調査関係資料」も重要文化財指定を受けました。本館15室「歴史の記録」で展示される機会もあるので、目にしたこともあるかもしれません。

こちらは明治21年(1888)に宮内省内に設置された臨時全国宝物取調局等が実施した全国に所在する宝物類の調査事業に関係する、5359点にものぼる資料群です。日本美術史の形成過程や、今日の文化財保護行政の揺籃期の歴史を知る上での学術価値が評価されました。

臨時全国宝物取調写真
重要文化財「臨時全国宝物調査関係資料」より
無著立像 興福寺 臨時全国宝物取調写真 小川一真撮影 明治21年(1888) 東京国立博物館蔵




歴史の生き証人として、受け継がれてきた貴重な文化財。
それぞれが持つ物語に思いを馳せながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

カテゴリ:news特集・特別公開

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2016年04月19日 (火)