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「始皇帝と大兵馬俑」の展示

「作品をどう見せるのか?」という視点から特別展「始皇帝と大兵馬俑」を見てみましょう。
会場入口に一歩足を踏み入れると「始皇帝」「兵馬俑」の大きな文字と兵馬俑の映像で迎えてくれます。



1室は「第Ⅰ章 秦王朝の軌跡」 「第Ⅱ章 秦王朝の実像」のテーマで器物や考古遺物を1点1点丁寧にご覧いただけます。
中でも「4.玉胸飾り」「6.龍文透彫玉佩(りゅうもんすかしぼりぎょくはい)」「40.玉剣・金剣鞘」「28.金銀象嵌提梁壺(きんぎんぞうがんていりょうこ)」「57-61.封泥(ふうでい)」の展示は作品の細かな部分もよく鑑賞できるようさまざまな工夫が施されています。
  
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(1)傾斜した台に固定され首にぶら下げた状態が想像できます
(2)マウントを用いて玉を浮かせて展示しているため玉の装飾とフォルムが際立っています
(3)マウントを用いて鞘と刀を垂直に展示し、透かし彫りの様子が360度鑑賞できます
(4)有機ELパネルを用いた再審の下部照明により壺のすぼまっている部分が暗くならずに鑑賞できています
(5)なめるように照らされた光により文字が浮かび上がっています



2室では、映像展示を用いた秦国、始皇帝の世界を分かりやすく解説しています。



つづいて、3室から始まる「第Ⅲ章 始皇帝が夢見た「永遠の世界」」は、現代アートを展示するかのような真っ白な展示室が作られています。「銅車馬(複製)」の緻密に作り上げられた造形が、圧倒的な存在感を放って展示されています。
展示室全体を「白色」で構成することで空間に浮遊感が生まれ「銅車馬」が宇宙船のようにも感じられます。



最後に 4室「兵馬俑」の展示室へは1度スロープをあがります。
上がると、まるで兵馬俑坑を再現したような展示空間が広がり、上から10体の兵馬俑を眺めることができます。
さらにスロープを下るとさまざまなポーズをとった兵馬俑を360度ぐるりと見て回れます。
特に順路が決められているわけではありませんので、自分の好きな作品を何度でも見られます。
また、兵馬俑は1つの展示室の中に曼荼羅のように展示する方法を用いたため、さまざまな位置から個々の作品を比べて見ることも出きるようになっています。
   

特別展「始皇帝と大兵馬俑」は、作品の持つ個性を最大限に引き出せるよう、それぞれに合った展示方法を用いてその世界観を提示しています。
展覧会の担当研究員や展示デザイナーをはじめ関係者の思いのこもった展覧会へ是非1度足を運んでみてはいかがでしょうか。
(展示設計・施工:東京スタデオ)

カテゴリ:研究員のイチオシ2015年度の特別展

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posted by 矢野賀一 at 2016年01月18日 (月)