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書を楽しむ 最終回「手鑑「月台」の桜」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第34回です。

今年は、桜が咲くのが、早いですね。

今年も、「博物館でお花見を」(3月19日(火)~4月14日(日))を開催しています。
そのため、本館3室(宮廷の美術)で、
手鑑(てかがみ)「月台」から、花の場面を展示します。

手鏡「月台」の桜
重要文化財 手鑑「月台」より、法輪寺切(全体) 奈良~鎌倉時代・8~14世紀
(2013年3月26日(火)~5月6日(月・休)まで本館3室・宮廷の美術にて展示)

手鑑とは、手(筆跡)のアルバムのことです。
前回は短冊の手鑑をご紹介しましたが、
今回もやはり、右上に筆者を示す極札(きわめふだ)が
貼付されています。
しかも2枚!


(左)法輪寺切(拡大)、(右)恵美のエンピツ写し

「月」という字が2つありますが、
少し違う書き方をしています。
「月」と「人」という字がかっこいいと思って、
エンピツで写しましたが、バランスが難しいです!

この2行は、「法輪寺切」(ほうりんじぎれ)と
いいます。
「法輪寺切」は『和漢朗詠集』なのですが、
この画像の「法輪寺切」は、漢詩の部分だけです。

横に添えられた絵は、
月と桜、だと思います。
漢詩の内容に合わせて描かれています。

桜部分拡大
桜部分拡大

この絵を添えたのは、
絵の左の紙に書いてある、
藤原為恭(冷泉為恭、れいぜいためたか、1823~64)です。

冷泉為恭は、幕末の絵師ですが、
絵画や書跡の模写をたくさんしていました。
さまざまな寺社や個人のお宅などに行って、
模写をさせてもらっています。
そして、それが政治的な活動と間違えられて、
殺されてしまいました。


当館所蔵の「安宅切・詩書切」も、
冷泉為恭の絵が添えられています。

安宅切(和漢朗詠集)・詩書切(巻末部分) 伝藤原行成・藤原定信筆 平安時代・12世紀
安宅切(和漢朗詠集)・詩書切(巻末部分) 伝藤原行成・藤原定信筆 平安時代・12世紀 (特別展「和様の書」で展示予定)

冷泉為恭が、
古筆(こひつ)をとても大切にしていたのが
わかって、心があたたまります。


さて、このブログ「書を楽しむ」ですが、
次回からは、特別展「和様の書」(2013年7月13日(土)~9月8日(日))をご紹介するブログに変わります。

さいごに、桜。
なんだか卒業式のようですね。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2013年03月25日 (月)