保存修復課の沖本です。東洋絵画を中心とした館蔵品の修理の仕事をしております。
昨年、1年半の工期を費やした柳橋水車図屏風(りゅうきょうすいしゃずびょうぶ)の修理が完成しました。
この作品の修理は私にとって非常に思い出深いものとなりました。
画面の四方に取り付けられる縁裂(ふちぎれ)は、元の文紗(もんしゃ)と似寄(によ)りの橘文(たちばなもん)から紋起こしを行い、旧裂の色調を踏襲しつつ、作成いたしました。
修理作業の様子
屏風の四隅に取り付けられる金具もトーハク館内コレクションにあるほぼ同時代の屏風にとりつけられた金具を参考に、デザインを起こしその図面を元に掘って頂いたものを取り付けました。
金具のデザイン図面
東洋絵画は約100年~150年の周期で修理を繰り返し、次の世代に伝わってゆきます。
その時代によって修理方法や技術・材料・方針も刻々と変化してゆきますが、すべての作品が次世代、また更に次世代へとより良い状態で伝わっていくことを願ってやみません。
修理技術者がどの作品を修理するかは御縁以外の何物でもありません。次世代へのバトン渡しを手伝う黒子の様な存在だと考えています。
作業を通じて、さまざまな事を考えさせてくれた柳橋水車図屏風に「ありがとう」。
柳橋水車図屏風の修理室にて撮影
尚、柳橋水車図屏風は2012年2月21日(火)~4月1日(日)まで平成館1階企画展示室「東京国立博物館コレクションの保存と修理」展にて展示予定です。金具や裂など細かい個所も含めて是非ご高覧ください。
カテゴリ:2012年2月
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posted by 沖本明子(保存修復課) at 2012年02月13日 (月)
おはようございます。総務課 警備・お客様担当の柳澤です。
早起きは三文の得と言いますが、私は常々実感しております。
何故かと言いますと、現在、私の業務の1つとしてテレビや雑誌のロケ撮影の対応があり、開館時間外にロケ撮影を行うため早起きをすることがしばしばあり、そこで、どんな風景よりも奇麗な、日の出に照らされる「トーハク」を度々目にすることができるからです。
写真は、表慶館でのファッションスチール撮影。
見てください、日の出の光がちょうど表慶館の入り口に差し込み、表慶館の扉がまるで異空間へつながる扉のようです。これは早朝ではないと見ることができない風景です。
こういう風景を撮影の方と共有することができ、また、雑誌、テレビ等でさりげなく映っている姿をほくそ笑みながら見ることは何よりも楽しみです。
また、ロケ撮影を通じて、「トーハク」が普段見せることのないいつもと違った魅力を皆様に紹介できるのもやりがいの1つです。
そんな、いつもと違った魅力を与えてくれる「早起き」、そして「トーハク」、本当にありがとう!
追伸、最近ではTBSドラマ「最高の人生の終わり方~エンディングプランナー」を黒田記念館で撮影いたしました。トーハクロケ放映情報を今後もご注目下さい!
カテゴリ:2012年2月
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posted by 柳澤想(総務課) at 2012年02月10日 (金)
教科書や入試問題の中に実に多くの東京国立博物館の所蔵品の写真があります。
私は日本史に興味を持っており、教科書や入試過去問題集(2005年までのもの)を持っていますので、調べてみました。
所蔵品が掲載された教科書や入試問題集
一般によく知られている高校の教科書、山川出版社の詳説日本史では古代から明治時代までの18点、大学入試センター試験では2005年本試で1点、追試で3点、1997年~1995年の本試で1点ずつ、1993年の本試で2点が使用されていました。
教科書や入試問題の写真は歴史学習の資料として重要であり、学習者にとってはいわば日本史の基礎となるものです。そのような場所で当館所蔵品を掲載していただき誠に光栄であると常々思っておりました。この場でお礼申し上げます。
筆者
実物を見ることは写真を見るだけと違い強い印象を残すようです。歴史の学習という観点からも東京国立博物館で教科書や入試問題に掲載されるような有名な収蔵品を見ることは良いことと思っています。
カテゴリ:2012年2月
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posted by 林昌宏(本部事務局総務企画課) at 2012年02月07日 (火)
日本考古を担当している、特任研究員の望月幹夫と申します。
この3月で退任いたします。
展示室にてお気に入りの作品(重要文化財 埴輪 猿)の前で撮影
思い起こせば、1980年にトーハクに就職してから30年余、人生の半分近くを過ごしてきました。
就職した頃のトーハクの考古には、学界の名だたる先生方がいらっしゃって、とても畏れ多いところでした。
若輩者がちゃんと仕事をこなしていけるのか不安がありましたが、
周囲の皆さんに支えられて、何とか今日までやってくることができました。
考古といえば発掘調査ですが、平成館建設に先立つ発掘調査で、
寛永寺の遺構や旧いトーハクの遺構・遺物が検出されましたが、まさにトーハクの歴史の調査でした。
(左)平成館地点発掘調査時の航空写真(1994)
(右)平成館外観
また、5年にわたるパキスタンの仏教遺跡の発掘調査に参加できたのも、貴重な体験でした。
パキスタンの調査で出土した石造彫刻(1999)
展覧会では、パリでの「はにわ」展、モントリオールでの「日本」展と、
海外での日本考古展にかかわれたのも、トーハクだからこその貴重な経験でした。
また、トーハク創立以来の膨大な考古の収蔵品のすべてを見ることはできませんでしたが、手にとって調べていると、140年の歴史を感じました。
トーハクの長い歴史の中で、その一員として仕事ができたことは本当に幸せでした。
明治以来の諸先輩ならびにトーハクという場を通して様々に関わってきた皆さんに感謝です。
カテゴリ:2012年2月
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posted by 望月幹夫(特任研究員) at 2012年02月04日 (土)
「感謝、感謝」が「謝謝」となる中国語と較べると、
「あることが難い」が「ありがとう」となる日本語はちょっと不思議です。
博物館にいて、一番楽しいことは、作品に触れること。
展示替で作品に触れている時、しみじみ楽しいなって思います。
本館13室 触っている気分
(ガラス越しでも、気分は「触っている」)
私の専門は焼物です。
中でも茶の湯の焼物は、触れることでより深くその魅力が伝わってきます。
ケース越しにしかご覧いただけない皆様には申し訳なく思いながらも、触れているだけで楽しさがこみ上げてくるのです。
志野茶碗 銘 振袖 美濃 安土桃山~江戸時代・16~17世紀(展示予定は未定)
しっくりと手になじむまさに名碗。
そんな時に思うことが、「よくここまで伝わってくれたなぁ、ありがとう」という気持ちです。
作られる時に壊れてしまう。
使われながら壊れてしまう。
地震、火事、戦争、価値観の変化、そんなこんなをくぐり抜け、
数百年の時を越えた焼物達と、伝えてくれた人々に感謝です。
「伝わることは本当にあり難いことだよな」と思いながら、
その奇跡への感謝から出る言葉はまさに「ありがとう」。
カテゴリ:2012年2月
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posted by 伊藤嘉章(学芸研究部長) at 2012年02月01日 (水)