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140周年ありがとうブログ

ミステリーにありがとう!

子供のころからミステリー好きで、小学校の図書室にあった江戸川乱歩、コナン・ドイル、モーリス・ルブランのたぐいは全部読みました。ポプラ社の子供向け乱歩シリーズの表紙の絵が不気味で、最初は大嫌いだったけれど、思い切って『怪人二十面相』を読んでから、すっかりミステリーにはまりました。
そして、まさにこの『怪人二十面相』のクライマックスの舞台として東京国立博物館(トーハク)を知ったのでした。

なので、大学生になってはじめてトーハクを訪れたときは、上野公園をぬけて正門をくぐり、館内にはいって展示室をめぐるにつれて、「ああ、ここで明智探偵が二十面相の変装を見やぶって、あそこで小林団長ひきいる少年探偵団が・・・」
などと少年時代の読書の記憶がよみがえりました。
そのときは二十面相が変装した人物には会えませんでしたが、やがてトーハクに勤めることとなり、はじめてお目にかかったときも、つい、そのエピソードを思い出しました。
ミステリーの世界のおきてとして、どのような人物かは秘密にしておきましょう。

ミステリー作家にもなりたかったですが、いろいろ別な興味もあり、けっきょく美術や工芸の歴史を研究する道にすすみ、
幸いにも博物館の研究員となることができました。
現在では文化財を守り伝え、歴史を解き明かす仕事をしています。
その興味のきっかけも、明智小五郎が『黄金仮面』において日本の国宝を守りぬき、アルセーヌ・ルパンが『奇岩城』や『カリオストロ伯爵夫人』において歴史の暗号に挑戦した物語のなかにあったように思われます。
とすれば、
ミステリーに「ありがとう!」と言わざるをえません。


ロンドンのベーカー街221Bにあるシャーロック・ホームズ博物館にて(右 筆者)。

カテゴリ:2013年3月

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posted by 猪熊兼樹(列品管理課) at 2013年03月04日 (月)